底辺であるB3から見たBリーグ(大塚商会アルファーズ #14 兒玉貴通選手)

Bリーグの底辺に位置するB3。プロクラブにとっては上位リーグへ這い上がることが大きなモチベーションとなる。5月10日のBリーグ理事会を経て、1位・ライジングゼファーフクオカと2位・金沢武士団がB2昇格を決めた。

上位チームから白星を挙げることをモチベーションに、地元福岡で一矢報いる

一方で企業クラブも混在するB3であり、彼らは昇格を目指していない。B3はファーストステージ(10試合)〜レギュラーシーズン(32試合)〜ファイナルステージ(10試合)の3部構成で行われ、企業クラブのほとんどはレギュラーシーズンだけで早々にシーズンを終えている。プロクラブの収益確保のために行われる残る20試合に参加する6クラブのうち唯一、大塚商会アルファーズだけが企業クラブとして全42試合を戦い抜いた。通算成績は25勝27敗。東京サンレーヴスの18勝34敗、埼玉ブロンコスの16勝36敗を上回っている。

全試合を全うした大塚商会だが、最初から昇格争いには関係がないため、選手たちのモチベーションは上げづらい。レギュラーシーズンまでを終えた時点で4位の大塚商会だったが、首位争いをしているライジングゼファーフクオカと金沢武士団の2チームからは白星を挙げられずにいた。4月になって迎えたファイナルステージへ向け、「どちらか強いチームに1つは勝とう」と目標を定めたことで奮い立つ。

倒すべき相手との対戦も残すは各2試合のみ。最初に対戦した金沢武士団には2連敗を喫してしまった。ライジングゼファーフクオカとの初戦は70-92と22点差で敗れ、後がない。ラストチャンスに懸けた4月23日。チーム一丸となって戦い抜いたことで、85-73と一矢報いることができ目標達成。28点を挙げたその日のヒーローは、福岡県出身の兒玉貴通選手だった。
「地元福岡で試合ができたことは、これまでお世話になったコーチやチームメイトたちが試合を観に来てくれたり、母校の後輩たちが応援に来てくれたり、すごくやり甲斐を感じながらバスケットができました」

練習さえできれば上位を狙えるポテンシャル高き企業クラブ

「私たちは仕事とバスケットボールを両立することをモットーに活動しています」というのが公式サイトに記されているチームの特徴だ。両立とはいえ当然仕事の方が比重は大きく、練習もままならない。「ぶっつけ本番で試合には入ることは本当によくあります」と兒玉選手は言う。練習時間が取れない中で、スタッフがまとめた次戦の相手の映像だけでイメージし、試合中にコミュニケーションを取りながらなんとか切り抜けてきた。

しかし、そのスタイルは今に始まったことではない。NBDL(日本リーグ〜JBL2)の頃から変わらず、文武両道のモットーを守っている。ゆえにB3に変わった今シーズンも、大塚商会自体に変化はない。だが、旧bjリーグのプロクラブが参戦したことで厳しい戦いを強いられるシーズンでもあった。
「対戦相手が新しくなり、簡単には勝てない試合が続いていました。シーズン終盤は特に、練習してきたチームとの差が如実に現れてしまっています。B3のファーストとファイナルシーズンは、僕ら以外は全てプロクラブだけです。でも、その対戦から多くのことを学ばせてもらいましたし、いろいろと足りない部分を気付かされました」

『練習はウソをつかない』というスポーツの世界の金言どおり、その差は歴然である。埼玉ブロンコスとの最終戦では、コンビネーションプレーや決定力に欠け、大敗を喫した。だが、金星を挙げたライジングゼファーフクオカ戦へ向けた時の準備は、それまでとは違っていたそうだ。
「あの時はスムーズに仕事が終わる日が重なってくれたので、練習にも毎日行けましたしケアもできて、個人的にもうまく調整ができました。しかも地元福岡での試合とあってテンションを上げてプレーすることもできました」

大塚商会のロスターを見れば、ほとんどの選手が学生時代に全国の舞台に立った名門校出身。大東文化大学出身の兒玉選手は、最終学年時にインカレで全国3位になっている。練習さえしっかりとできれば、もっと強くなれるポテンシャルは計り知れない。また、シーホース三河の長谷川智也選手らB1で活躍できる選手を輩出してきた実績もある。

仕事と両立しなければならない企業クラブの道を選んだのは選手自身だが、兒玉選手が大学4年生だった時はバスケに希望を持てない時期でもあった。NBLとbjリーグの2リーグ併存状態に端を発し、JBAのガバナンス欠如を指摘したFIBAから資格停止処分の制裁を受けてしまう。

企業クラブに進んだ兒玉選手だが、両立することで得られるメリットを感じている。
「バスケットを辞めた後の人生の方が長いのは当たり前のことです。大塚商会は厳しい会社であり、学べることも多いです。仕事でうまくいかなければ頭を下げなければならないことは、バスケットだけをしていてもなかなか得られない経験です。また、良くも悪くも自分の意思次第で来シーズンもプレーできることが保証されています。もちろんそれが甘えになってしまう部分もありますが、安心してプレーに集中できるメリットもあります。捉え方によってはプラスでしかないと思っています」

「Bリーグでプレーしています」で理解されるようになった知名度

大学時代に兒玉選手と鎬を削り合ったライバルたちが、Bリーグの舞台で輝き始めている。名古屋ダイヤモンドドルフィンズの笹山貴哉選手や藤永佳昭選手、秋田ノーザンハピネッツの安藤誓哉選手は同学年。一つ下にはサンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生選手やB1昇格を狙う島根スサノオマジックの岡本飛竜選手らがいる。「自分が選んだ道ですが、プロに行っていれば良かったと思うときもあります」と少なからず刺激を受けていた。

「やっぱりベンドラメが20点獲った試合のハイライト映像を見たりすると『ムカつくな(笑)』とか『やっぱり上手いな』と思わされます。藤永は昨シーズンまで同じNBDLだったのに、今では一気にB1に行っちゃいました。笹山も安藤誓哉も、僕たちにとっては夢の舞台であるB1で活躍できて良いなぁ、と思うところはあります」

Bリーグができたことでのポジティンブな変化は、最下層にいるB3にもしっかりと届いていた。「一番はメディアの露出が多くなりました。今まで簡単には見られなかったB1のアルバルク東京やシーホース三河などのゲームが、スポナビライブなどにより誰でも見られるようになったのは大きいです。僕らも試合を見て勉強する機会がすごく増えました」と話しており、トップレベルの戦術を学びながら底上げを図っている。

NBDL時代はなかなか分かってもらえなかったが、Bリーグに統一されたことで「B3という詳細は言わずに、『Bリーグでプレーしています』と言うと相手は『すごいね』と返してくれるので、その知名度の違いは大きいです」と、その話題で客先での会話が弾むことも増えたそうだ。

Bリーグがさらに発展し、ますます知名度が上がっていけば、大塚商会としてもプロ化に前向きに検討してくれる……かもしれない。
「チームとしてB2に上がることができるような体制を整えてもらえるのであれば、それが最高です。今すぐではなくても、そこに向かってモチベーションを上げられますし、チームとしてもさらに力をつけていけると思います」

クラブとしてプロを目指し、B2〜B1へと昇格して行ければ良いが、なかなか厳しいのが現状だ。だが、選手個人としては覚悟さえ決めれば、チャレンジはできる。これまでとは違い、統一されたBリーグができたことで、選手たちがプロになる夢を持てる環境ができたことをB3から垣間見ることができた。

大塚商会アルファーズ

文・写真 泉 誠一