京都の司令塔は、自他ともに認める負けず嫌いルーキー(京都ハンナリーズ 伊藤達哉)

10月7日、8日に行われた千葉ジェッツふなばしー京都ハンナリーズの2連戦、一戦目を76-63で落とした京都の伊藤達哉は「今日の試合は自分にとって、ある意味‟衝撃的„でした」と振り返った。同じポイントガードとして千葉の富樫勇樹のプレーに圧倒されたという。
「まずはスピード、自分が大学までやってきた相手とは速さが格段に違うし、切り込んでフィニッシュまで持っていく力もすごいなと感じました」

富樫と対戦するのは全中(全国中学生大会)の決勝戦以来。伊藤は東京・京北中学2年、富樫は新潟・本丸中学3年だった。京北中3年には田渡凌(現横浜ビー・コルセアーズ)がおり、富樫との対決が注目を集めたが、勝利したのは本丸中。
「あのときもすごい選手だと思いましたが、今日対戦してみて、なんかずっと先をいってるなあという気がしました」

「自分の武器はディフェンスです」

千葉県出身。バスケットボール選手だった両親の影響であたりまえのようにバスケットを始め、中学は東京へ、高校は京都の洛南へ、大学は東海大へと強豪校でプレーを磨いた。群を抜く『負けん気の強さ』と、果敢に切れ込むドライブが持ち味だが、自分のストロングポイントは「ディフェンスです」と言い切る。強く印象に残っているのは大学3年のオールジャパン(全日本総合選手権)。3回戦でNBL日立サンロッカーズ(現サンロッカーズ渋谷)と対戦した東海大は前半をリードして折り返す善戦を見せた。当時の日立は竹内譲次(207cm)を中心にジョシュ・ハイトベルト(211cm)、アイラ・ブラウン(193cm)、ケビン・マーフィー(196cm)という3人の外国籍選手を擁する大型チーム。全てのポジションがミスマッチになる東海大にとって、「粘り強いディフェンスで挑む」(東海大・陸川章監督)という覚悟を持って臨んだ試合だった。その『覚悟』を見事に体現してみせたのが伊藤のディフェンスだ。子どもと大人ほど体格差があるマーフィーの足元に食らいつきテイクチャージを奪った場面では会場から惜しみない拍手が送られた。

「あの試合は今も忘れられないです。あれだけ高さに差があって、リバウンドでも差が出た(日立57、東海大29。内オフェンスリバウンドは29-5)けど、ディフェンスでは苦しめることができた。ディフェンスの重要性を証明することができたと思うし、これからさらにディフェンス力を磨いて、それを自分の武器にしていこうと思った試合でした」

大学4年のインカレ前に右手骨折という大ケガを負い手術を受けた。優勝を目指していた学生最後の大会に出場できなかったことは「しばらく気持ちの切り替えができないほど悔しかった」と言うが、今はそれもまた強いメンタルを育てるための1つの試練だったと思う。骨折した右手にはまだプレートが入っているためやや違和感はあるものの、「コートに立ったら忘れています。全力でやることしか考えていません」

「最初は舐められていました(笑)」

今シーズンの京都は日本人選手だけで6名が入れ替わった。中でも村上直(現シーホース三河)、川嶋勇人(現三遠ネオフェニックス)、小島元基(現アルバルク東京)、籔内幸樹、日下光といったガード陣がごっそり抜けたことで、おのずとチームを牽引する役割はルーキーの伊藤と移籍加入した綿貫瞬が担うことになった。ルーキーシーズンにメインガードとして先発を任せられたことにプレッシャーはないのだろうか。
「プレッシャーというより、最初は外国籍選手に相当舐められていて、それが悔しくもあり、情けなくもあり、やりにくかったです(笑)」

たとえばチームでやろうと決めていることがあっても「いざ試合になると、ポストアップしたいと言い出す。ドライブに行きたいのにそこにいたらカバーが来ちゃうだろうみたいな。コートを離れればみんなすごくいい人なのに、熱くなると俺が、俺がになっちゃうんです」。だが、それもポイントガードとしてまだ信頼されていない証拠だと受け止め、キャプテンの内海慎吾や岡田優介に相談しながら自分がやるべきことを模索する日々が続いた。

「最近はようやく存在を認めてくれるようになったかな(笑)。外国籍選手とコミュニケーションを取るためにはやっぱり英語力が必要だから、そこは勉強していかないいけないと思っています。プレーはもちろんですが、言葉でももっと発信してゲームをコントロールできるようにならないと。今日負けたことはすごく悔しいですが、自分としてはたくさんの気づきもあったので、その意味ではいい試合でした。修正して明日は勝ちたいと思っています」

「京都はこれからもっと強くなるチームです」

そして、迎えた翌日の第2戦、出だしから主導権を握った千葉が徐々に点差を開き、3クォーターを終了した時点で京都は51-62と二桁のビハインドを背負った。しかし、「今年のうちは最後まであきらめないチーム」(伊藤)という京都はそこから執拗なディフェンスで千葉のリズムを狂わせていく。激しいリバウンド争いで前に出た京都は、ジュリアン・マブンガ、内海、片岡大晴の外角シュートで猛追。残り4分半に内海の3ポイントシュートで逆転(66-63)に成功すると、そこからは1度も逆転を許さず77-68で大きな勝利をもぎ取った。終わってみれば4クォーターは26-6。外国籍選手を中心に奮起したリバウンドが41-25と上回ったことからも、京都の持ち味である『ディフェンスと体を張った泥臭いプレー』が呼び込んだ勝利だったと言えるだろう。

伊藤はこの日、24分32秒の出場で、6得点、3アシスト。切り込んでゴール下のマ―カス・ダブに絶妙なパスを繰り出したかと思えば、ドライブからフローターを決めるなどスタートから気持ちを前面に押し出したアグレッシブなプレーが光った。

京都はさらに強くなる要素がありますね?と水を向けると、目を輝かせて「あります、あります、あります」。思わず3回繰り返した自分を笑いながら「そのためにはポイントガードの自分が成長する必要があります。オフェンスで言えば外角シュートもそうですが、自分が無理なドライブをするのではなく、ピックを使ってもっと周りを生かすとか引きだしを増やしていきたいと思っています」

もちろん、自分の武器だと胸を張るディフェンスは当然これからもより激しく、磨きをかけていくつもりだ。めざすのは『チーム全員から信頼されるガード』――ルーキーの肩に背負った荷は重いが、やりがいも大きい。「一戦ごとにたくましくなっていきたいです」という一言に持ち前の負けん気の強さがのぞいた。

京都ハンナリーズ

文・松原貴実 写真・安井麻実


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