指先にまで魂を込めて(レバンガ北海道 #9 折茂武彦)

バスケットボールは単純明快なスポーツである。相手よりも多くシュートを決めれば勝つし、少なければ負ける。誤解を恐れずに書けば、チームのオフェンス戦術はシュートを決めるためのプロセスでしかないし、ディフェンスもそれを決めさせないための動きにすぎない。
そのために選手は日々シュート練習をおこなっている。来る日も来る日も打ち続け、プロともなれば、もはや一桁の”万”では表せられないほどのシュートを打ってきたはずだ。

しかしバスケットのおもしろいところは、それが簡単に決まらないところにある。もちろんディフェンスがそれをさせないように守っていることもあるが、完全なオープンショット、つまりノーマークで打ったシュートさえ決まらないことがある。シュートのなかでは最も簡単と言われるノーマークのレイアップシュートやのゴール下のシュート、ダンクシュートさえ外れるのだから、「シュートは水物」と言われるのもわからなくもない。

現役である限り、こだわり続けたい

さて、2月9日に墨田区総合体育館でおこなわれたサンロッカーズ渋谷とレバンガ北海道のゲームである。結果は【90-64】でレバンガ北海道が勝利したが、この試合でレバンガ北海道は2ポイントシュートを69.4%の高確率で決めている。その一翼を担ったのがベテランの折茂武彦である。20分の出場で12得点。2ポイントシュートは7本打って5本を沈めている。47歳9か月のシューターの腕は鈍っていない。

試合後、折茂に話を聞くと「確率よく決められたので、よかったのかなと思います」と、自身の出来については言葉が少ない。むしろチームとしてのディフェンスが機能したことで、それがチーム全体のオフェンスにもつながったことを強調する。
「第1Qからしっかりディフェンスを頑張ったことで、SR渋谷もすごくフラストレーションが溜まっていたと思います。そのなかでアシスト24個にも現れているように、しっかりボールを回して、個々ではなく、チームとしてボールを共有できていたことは自分たちのバスケットができていた証拠です。非常に成長が見えるゲームだったと思います」

ディフェンスを起点にしても、それをひとつのリズムとして生み出すためには次のオフェンスでシュートを決めきる必要がある。筆者は音楽に不案内だが、作曲家がひとつの小節を書き上げるときも、最初の音と最後の音につながりがなければ、いい音楽にはならないのではないだろうか。
「今日は全体的にすごくよかったと思うし、当然すべてが今日のようなゲームだったらいいけど、そうならないこともあります。シュートについては、僕自身もそうだけど、入るか入らないかはフィフティフィフティ。入らなかったときにどうしていくかを常にチームで考えていかなければいけません」
折茂のその言葉は翌日にシュートの確率が落ち、結果としても【63-78】で敗れたことを占うものだったのかもしれない。

それでも折茂自身に目を向ければ、2ポイントシュートこそ6本中2本と確率を落としているが、前日に決めていなかった3ポイントシュートを2本沈め、フリースローと併せて前日と同じ12得点をあげている。チームが負けた以上、自身の出来を評価することはないだろうが、少なくともシューターとしての面目は保ったと言っていいだろう。

「基本的に僕はこれ(シュート)しかないので、入るか入らないかわからないけど、ノーマークのときにしっかり打ち切ることを心がけています。その日によって調子の良し悪しはあるけど、チームの戦力であることが僕の現役である源。戦力でなくなったら現役である必要はないと思っているので、そういう意味でもシュートに関してはこれからもこだわって、またプライドを持ってやっていきたいなと思っています」

顔に深く刻まれる皺は単に年齢だけでなく、社長業との両立の難しさも物語っている。しかし現役プレイヤーとしてコートに立てば、年齢や肩書に関係なく、自分の存在意義を自分の腕で示していくだけだ。折茂武彦の”シュート”は、今さら言うまでもなく、彼自身の生きざまでもある。

レバンガ北海道

文・写真 三上太