Match Up(A東京#24田中大貴選手 x 千葉#31原修太選手)

約5千人の赤いファンで埋まった船橋アリーナはため息に包まれた。「準備してきたことが全然出せなかった。まずはそれを遂行しなければ、この試合に向けて準備してきたプランが正しかったのかどうかという反省もできないし、収穫もなかった」と大野ヘッドコーチは淡々と質問に答えていく。その表情は怒りとも、呆れとも取れる。

49点しか獲れずに敗れた元日の悪夢を彷彿させるアルバルク東京の完勝劇であった。千葉ジェッツが得意とするトランジションは完全に封印され、逆に速攻から13点(千葉は8点だが第3クォーターまではたった2点)を挙げたA東京が走って突き放し、79-65で東地区首位決戦の初戦を制した。

コミュニケーション不足で止められなかったA東京のピック&ロール

ケガや体調不良により欠場してきたA東京のエース・田中大貴選手にとっては今シーズン初めての千葉戦である。「これまでの4試合は出られず、チームにも迷惑をかけてきたので、その分を取り返すというわけではないですが、しっかりやらなければいけないという思いはありました」とモチベーション高く試合に臨む。すぐさま結果で示し、第1クォーターから9点・3アシストを挙げる活躍を見せ、チームを勢いづけていった。

田中選手にマッチアップするのは、アーリーエントリーを含めて3年目の原修太選手。昨年11月11日のA東京戦から先発を任されている。自身も「持ち味」と言う屈強な身体を張ったディフェンスでA東京のエースを止めることが期待された。しかし、ピック&ロールを起点とするオフェンスに対し、「自分から声を発して、ビッグマンとのコミュニケーションをもっと取っていれば守れたのではないか……」と反省するとおり、いくらフィジカルが強くても1on1だけでは止められない。

大野ヘッドコーチは練習してきたことを遂行できなかった点に加え、「チームとしてひとつになって戦えていない。チームメイトを助ける意識が薄かった」とコミュニケーション不足も敗因に挙げている。原選手も自分から声を発することができていないことは自覚しており、「無駄な声でも良いから次こそ出していきたい」と修正を誓った。

先発の原選手だけではなく、マイケル・パーカー選手や石井講祐選手、アキ・チェンバース選手が次々と田中選手を止めるべく、マッチアップが代わっていく。その状況が変わる中でも強気のペイントアタックで崩していき、マークが空けば3Pシュートを決めた。終わってみれば、19点・9アシストとダブルダブルに迫る活躍だった。日本代表としても活躍する田中選手は、国際試合を終えるたびに「リーグ戦からフィジカル強くプレーしなければいけない」と自分を戒め、全体に対して警鐘を鳴らしてきた。千葉もけっしてソフトに守っていたわけではない。
「相手が潰しにくるというのはどのチームも一緒。毎試合アジャストするように心がけています。練習中から(菊地)祥平さんやザック(バランスキー)、(馬場)雄大であったり、大きくて動ける選手がマッチアップしてくる分、良い準備ができているので、相手のディフェンスに対しての不安はないです」

マッチアップした田中選手の印象について、「状況判断が良く、無理せずにマークが寄ればパスをさばくし、周りの4人も良いスペースを取っていたのでとても守りづらかったです」と言う原選手。オフェンスでは2Pシュートを1本打っただけ、0点に終わっている。「スペースが空いたら打つ、マークが寄ってきたらドライブすることだけを考えています」というオフェンスにも期待したい。

練習は嘘をつかない──ハードワークから生まれる自信と東地区首位のプライド

小島元基選手は復帰したが、馬場雄大選手に続き、竹内譲次選手もこの試合はケガのため不在。これまでの千葉戦にはエースの田中選手もいなかった。相次ぐ主力メンバーが欠ける中、それでも同じパフォーマンスを発揮できる要因として、「練習が全て」と田中選手は胸を張る。
「みんな必死に激しい練習をしていますし、誰が出てもチームの力が落ちるとも思っていません。今日も譲次さんがいませんでしたが、それに対して誰もネガティブな発想になっていないです。今のチーム状況もあまり良いとは言えず、他にもケガを抱えながらプレーしているメンバーもいますし、自分も代表活動があるのでチーム練習に参加できないまま試合に臨んでいます。でも、それについて誰も言い訳はしませんし、今は東地区1位にいることに対するプライドがあります」

代わるがわるケガ人が出ており、日本代表合宿に参加する選手も多いA東京は、けっして盤石な体制でシーズンを送れているわけではない。その状況下でも、「今のポジション(東地区1位)をよくキープしてくれている」というのがルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチの本音である。その裏側に目を移せば、休むことなくチームを成長させるために徹底し続けている準備が揺るぎない基礎を作り、急なアクシデントにも動じないチーム力を誇っている。完勝とも言える試合だったが、千葉に5本許してしまった3Pシュートやビッグマンに走られた点など、パヴィチェヴィッチヘッドコーチは細かい課題点も許さない。より完璧な試合を目指すために、全員が妥協することがなく取り組んでいることがA東京の一番の強みである。

昨日の試合結果により、A東京が千葉に対して4勝1敗と勝ち越しを決めた。残るレギュラーシーズンの対戦は本日行われる1試合のみ。だが、1位A東京(29勝8敗)と2位千葉(26勝11敗)との差はたった3ゲームしかない。勝率で上回ってチャンピオンシップのホーム開催を勝ち獲ることを合言葉に、千葉は突き進むだけだ。A東京への苦手意識を払拭しておくためにも、今日の試合は非常に大事になる。

「試合のビデオを見直して、自分ができることからまずは修正していきたいです。もっとディフェンスの間合いを詰めたりしながら、田中選手は外のシュートもあるので難しいですが、少しでも相手を嫌がらせるディフェンスをしていきたいです」と、原選手は気持ちを新たに今日の試合に向かう。本日2月18日(日)も船橋アリーナにて、15:05よりティップオフ!

千葉ジェッツ

文・写真 泉 誠一