「石崎はコートの中のコーチ。それぐらい信頼しています」(琉球ゴールデンキングス佐々宜央ヘッドコーチ)

2月16日、17日のサンロッカーズ渋谷戦で2連勝した琉球ゴールデンキングスは、勝ち星を30に伸ばした。開幕当初から『強豪揃い』と言われた東地区のチームに「西からワンパンチ、ワンジャブを入れたいという気持ちで臨んだ」(佐々ヘッドコーチ)という第1戦では『渋谷の個々の特徴を見て、その良いところ1つひとつを潰す』というチームディフェンスが見事に機能し、70-57で快勝。翌2戦目は1Qに5点のリードを奪うも、2Qに入るとベンドラメ礼生、ジョシュ・ハレルソンの連続シュートで追いかける渋谷の勢いが上回り逆に7点のビハインドを背負う展開となった。琉球のこれまでの勝ちパターンとして目立つのはスタートダッシュで流れを呼び込み、前半の”貯金”にものを言わせて勝ち切る『先行逃げ切り型』。が、逆にリードを許すと、そこから立て直せないまま失速する脆さもあった。しかし、この日の琉球は後半の立ち上がりから激しいディフェンスで渋谷の得点を許さず、5分半にアイラ・ブラウンのダンクシュートで48-48の同点に追いつくと、古川孝敏の連続3ポイントシュートなどで再逆転に成功し65-59で3Qを終了。4Qには粘る渋谷に4点差まで詰め寄られる場面もあったが、最後はファウルゲームで得たフリースローを着実に沈め84-77で競り勝った。

この1戦でゲームハイ(29得点)をマークしたアイラ・ブラウンについて佐々HCは「彼は勝ちたい気持ちが強い選手で、その気持ちが時として違う熱さになってしまうこともあるが、今日はよく我慢してチームを引っ張ってくれた。すばらしいメンタルだったと思う」と、高く評価。さらにもう1人の功労者として挙げたのは3ポイントシュート2本を含めフィールドゴール成功率100%で16点を稼いだ石崎巧の名前だった。
「石崎は足のコンディションのこともあって、プレータイムも限られる。今はスタートで使っていますが、僕は彼のことをセットアッパーと呼んでいるんですよ」

セットアッパーとは、野球でいう『中継ぎ投手』のこと。先発でもクローザーでもなく文字通り試合を”中継”する存在だ。佐々HCが石崎をこう呼ぶ理由は「彼が試合を整えてくれる選手だから」だという。流れが悪くなった場面でコートに出てチームを軌道修正してくれる存在と言えばわかりやすいだろう。「コートの上のコーチと言っていい。僕はそれぐらい彼を信頼しています」

佐々HCと石崎は東海大学の同級生。かたや学生コーチとして、かたや絶対的司令塔として、関東大学リーグ2部に所属していたチームを1部に昇格させ、3年次には初のインカレ優勝も果たした。当時のチームメイトによると「2人ともバスケットのことになると譲らず、今よりかなり尖っていた」らしい。佐々HCは大学卒業後、日立サンロッカーズ(現サンロッカーズ渋谷)のアシスタントコーチに就任し、そこから栃木ブレックスのアシスタントコーチ、日本代表チームのアシスタントコーチと、着実にキャリアを積んできた。一方、東芝(現川崎ブレイブサンダース)に入社した石崎はルーキーシーズンから先発メンバーとして起用されるが、3年後に退社して単独ドイツに渡る道を選んだ。その後、bjリーグ島根スサノオマジックでプレーした1年をはさんで再び渡独。ブンデスリーガ2部のBVケムニッツ99の主力ガードを2年間務めた後、1部リーグMHPリーゼン・ルードヴィヒスブルクに移籍し、ドイツのトップリーグでプレーする初の日本人選手となった。同時に日本代表にも名を連ね、2014年から所属した三菱ダイヤモンドドルフィンズ(現名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)ではキャプテンも任されている。コーチと選手、立ち位置は異なるが、常に高い意識でバスケットと向き合い、自分の道を切り拓いてきたのは同じだろう。昨シーズンまで移籍を考えていなかったという石崎の心を動かしたのは「もう1度俺と一緒にバスケットをしてみないか」という新ヘッドコーチからの誘いだった。

“尖っていた”学生時代から時を経て、「お互い少しは丸くなった」と言い合う2人だが、その”丸み”の部分には積み重ねた経験がある。「昔はチームメイトにも結構厳しいことを言っていた石崎が、ベテランとなった今、後輩たちのいじられ役になっている。コートの上だけではなく、普段からチームの雰囲気を整えてくれてるんですね。コーチとしては本当に助かっています」(佐々HC)。コーチングについて相談することはあるのか?と問うと「たまにありますよ。でも、あいつからは決して口出しはしない。きっと気ぃつかってるんでしょう」と、笑った。

20節を終えた2月18日現在、2位の京都ハンナリーズに8ゲーム差を付けているが、後半戦終盤には川崎ブレイブサンダース、シーホース三河、アルバルク東京、千葉ジェッツといった強豪との戦いが続く。
「まだまだこれからですね。うちはいろんな意味で若いチームなので、相手にバーッと流れが行ったとき、自分たちのバスケットを見失ってしまうことがある。ただ今日は流れで言えば10点、12点差がついてもおかしくなかったところを7点差でこらえて、後半で力強くはね返してくれました。今、1番取り組みたいと思っているメンタルの部分で少しは成長できたかなと。そこはこれからの戦いを通してさらに鍛えていきたいところです」(佐々HC)。

チャンピオンシップを見据えて目指すのはプレッシャーに負けない個々のメンタリティ。「苦境のときこそ勝負師の血が沸き立つみたいな、踏ん張りどころできっちり仕事ができるような」そう語る佐々HCは誰をイメージしていたのか。その傍らには背中で若手を牽引する石崎の姿がある。

琉球ゴールデンキングス

文・松原貴実 写真・安井麻実