有望な若手選手を優先して迎え入れ、福島県のバスケ向上に貢献(福島ファイヤーボンズ)

昨シーズンに続き、水野幹太選手(福島南高校〜法政大学1年)が特別指定選手として、福島ファイヤーボンズに迎え入れられた。さらに今シーズンは高校の後輩である半澤凌太選手(福島南高校3年)も加わり、短い期間ではあるがプロの世界でできることを模索しながら、自身の成長につなげている。

『おもいっきりやってこい!』と背中を押した言葉のアシスト

昨シーズンは平均出場時間15.5分・5.3点と活躍した水野選手だが、2シーズン目は5.8分に減り、8試合を終えて合計8得点しか挙げられていない。「メンタル面での弱さがあり、プレーも悩みながらだったのでうまくいかないことばかりでした」と見えないプレッシャーを感じ、負の連鎖に陥っていた。

曇りきった水野選手の気持ちを察した最年長の友利健哉選手は、「おもいっきりやってこい!」と背中を押す。その一言で「重荷が下ろせた感覚がありました」。3月11日の仙台89ERS戦。前日に敗れていた仙台は、気持ちを強く持ってスタートダッシュに成功。8-18と10点を追いかける第2クォーターから水野選手は投入された。

コートに入る前、今度はチームメイトたちから「おもいっきり行けっ!」と送り出される。「そういう言葉で力が出せる」ことを実感した水野選手はおもいきり良いディフェンスから流れを呼び込み、勢いづけた。結果は59-68で敗れたが、「やっと彼の本来持っているものが発揮できた2クォーターだった」と森山知広ヘッドコーチは評価している。

「今日のようなハッスルしたプレーをすれば、良い結果がついてくることが分かりました。そこでさらに良い経験を積めるようにしたいです」
ようやく目覚めた水野選手だが、特別指定選手としてプレーできるのは残り2試合のみ。今週末、郡山総合体育館で岩手ビッグブルズと対戦するホームゲームがラストとなる。

大好きなバスケットボールができることが当たり前ではない

「将来の夢はプロになることです」
高校3年生の半澤選手は、夢を実現させるための第一歩を地元のプロクラブで経験できる機会を得た。2月2日の入団後、すぐさま行われた岩手戦でデビューし、10分間で6点を挙げる。しかしその後は、課題の方が浮き彫りになる日が続いた。
「シュート力やドリブルのハンドリングなどは他の選手よりも劣っています。またプロの舞台では、自分の長所をプレータイムが短い中でもしっかり出すことが求められると思いました」

水野選手よりひと足早く、3月11日にラストゲームを迎えた。
「この特別な日に試合ができ、また震災を経験した一人として、大好きなバスケットボールができることが当たり前ではないことを日々思い、支えてくれている皆様に感謝をしながらこれからもがんばっていきます」
自分の言葉で多くのファンに感謝の言葉を告げ、次なる舞台である筑波大学へ歩みを進める。

今回はフライングぎみになってしまったが、弊誌フリーペーパー次号は特別指定選手やルーキーにスポットライトをあてた特集を組み、鋭意作成中だ。筑波大学へ進む半澤選手は、そちらでも紹介するのでお楽しみに!

チームに刺激を与える存在となり、良い循環が生まれれば良い

プロ入りを決めて卒業を控える選手ではない限り、特別指定選手は突然来て、シーズン途中で去って行く。クラブとして、地元の有望な若手選手を迎え入れる試みは素晴らしい。だが、ようやくチーム力が向上してくるこの時期に、新たな選手を迎え入れるのは難しい面もある。この制度をどう生かし、チームの力になるように仕向けているのか、森山ヘッドコーチに率直に伺った。

「彼らを戦力としてしっかり考えているからこそ、ロスター登録させています。県内に将来の日本を代表するであろう各世代の代表選手がいるならば、優先的に迎え入れるのは当然のことです。ビッグクラブではないので、他とは違った育成をしていきながら、福島県のバスケ向上に貢献していくこともできると思っています。
ヘッドコーチとしては他の選手同様、使えれば使うしダメならば使わない。そこはハッキリしています。しかし彼らが来たことでチームに刺激を与え、競争が生まれて、既存選手たちがさらにがんばるという良い循環が生まれれば良いだけであり、今シーズンはそこができています。
たった3秒でもホームゲームで、福島市出身の彼らがコートに立つことをお客さんも期待しているでしょうし、それも大事なことです。今回は出場機会が少なかったですが、チームが成長することで彼らをもっと長い時間使えるようになります。勝ち負けがある中であり、僕らはB1を目指して戦っていますが、その中でもチャンスがあれば常に使いたいと思っています」

福島で生まれ育った水野選手と半澤選手だが、彼らが将来プロとしてプレーしたいのはB1クラブである。森山ヘッドコーチも現状を踏まえ、「彼らが大学を卒業するタイミングで僕らがどの位置にいるか。どこまで魅力あるクラブになっているか。それは今いるコーチやフロント陣に課せられた使命だとも思っています」。学生の特別指定選手を迎え入れたことは、コート上だけではなくクラブ全体に良い刺激を与えていた。

「プロであればどこでも良い」と漠然とした夢を描いていた半澤選手だが、3月11日の復興支援ゲームを通じて、「ボンズでやりたいという気持ちは強くなりました」と地元愛を見せた。昨シーズン、将来は福島でプレーするかと聞けば、「B1が良い」と言っていた水野選手だが心境の変化が見られる。
「法政大学の1年次は3部からスタートし、今年から2部に上がります。その経験をもとにB2から引き上げる力になるのも良いと思えるようになりました。そうなれば、福島を盛り上げることにもつながると思います」

水野選手にとって2年生となる今シーズンは、1部昇格への挑戦が待っている。大学の現状とシンクロさせながら昇格させるための原動力になれば、その経験はきっと福島の未来を変える大きな力になる。しかし、自ら切り拓くことに前向きになってきたかと思いきや、ちゃっかり先輩へのおねだりも忘れてなかった。
「できれば今シーズンにB1へ上がってもらって、なるべく早くB1でプレーできるようにしてもらいたいです」

B2東地区2位の福島だが、秋田ノーザンハピネッツの独走状態であり、13ゲーム差をつけられている。厳しい状況ではあるが、各地区2位の中から勝率の高い1チームに与えられるワイルドカード争いには残っている。30勝を挙げた熊本ヴォルターズまでは5ゲーム差。残り18試合もあり、十分射程圏内にいる。何よりも中地区と西地区と比べ、東地区はさほど混戦しておらず、すでに秋田との試合も終わっている。同地区対戦を落とさなければ、プレーオフ進出も夢ではない。

福島ファイヤーボンズ
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文・写真 泉 誠一