物理的にできない状況でも突き詰めなければならないアルバルクスタイル(アルバルク東京 #7 正中岳城選手)

競合ひしめく東地区の首位に立つアルバルク東京だが、レギュラーシーズンの終盤に差しかかる今、苦しい試合を強いられている。レバンガ北海道との前節がはじまるまでに敗れた11回の試合を見比べていくと、同じパターンが見えてきた。

11敗中9試合はいずれも前半にリードを奪われ、対戦相手に20点以上を挙げる選手が必ずいる。逆に勝った試合で同じようなシチュエーションだったことは1度しかない。今シーズン、A東京からすでに2勝を挙げていたレバンガ北海道との第5戦目(3月24日)は、84-81で辛勝。上記のパターンから言えば、前半は20点をリードしており勝つべくして勝った試合でもある。しかし、後半に追い上げた北海道は勢いそのままに、翌日は87-81でリベンジを果たし、このカードは3勝3敗の五分に終わった。

この試合を当てはめてみれば、A東京は34-46と北海道にリードされて折り返し、マーク・トラソリーニ選手に22点を許している。やはり負けパターンであった。

囲われた中で突き抜けられるかどうかのタイミング

ディフェンスがハマれば強いA東京だが、一旦劣勢に立たされるとそれを跳ね返すだけの自力の足りなさを感じている。その点について、アルバルクひと筋11年の正中岳城選手に質問を投げた。
「現状は自分たちがプレーをしているというよりも、戦術をうまく使うことにしかフォーカスできていないところがあります。相手が対応し、ディフェンスされたときに少し消極的になってしまいます。コート上の選手たちが慌ててしまったり、ベンチの指示を待ってしまって積極的なプレーができないような傾向は常にあります」

ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは完璧主義者だ。細部まで徹底しながら倒すことを求めており、「ガード陣への負担がすごくかかっている」のが現状でもある。安藤誓哉選手と小島元基選手が背負う責任は計り知れない。その中において、東地区首位に立っている現状を考えれば、上出来と言うこともできる。

「相手がどう対応してきても、自分たちのフォーメーションを遂行しなければならないのが今のアルバルクです。物理的にできない状況もありますが、それでも乗り越えなければいけない。それを求められているのは、本当に大変なことです。(北海道との初戦は)前半で20点リードしながら、最後は80点台まで獲られてしまったのはディフェンスが機能せず、トランジションの中でコントロールもできていなかったからです。前半はすごく良い試合ができていました。でも、40分間の中のほんの5分程度でもうまくいかなければ、こういう試合になってしまいます」

期待される若き司令塔たちが劣勢となった場面でもしっかりとゲームをコントロールし、A東京が目指す『いつものスタイル』を貫き通さなければならない。
「責任を背負うタイミングに来ているからこそ、簡単に思い切ってプレーさせて成長する段階に彼らはもういません。他のチームで自由に思いっきりできればある程度は活躍し、そりゃ楽しいとは思いますよ。でも、バスケットで勝つためにはそういうことばかりではないことを、この早い段階で知ることはすごく大事です。もっとやりたいプレーはあるだろうし、それができる選手たちです。ある程度の囲われた中で、もがきながら表現するのは本当に難しいことです。自分の経験を振り返ってもやっぱり難しかった。我慢しながらやることが近道だとは言ってますが、なかなか口で言っても難しいですよね」

同じ道を通ってきた正中選手はメンタルの部分をケアしつつも、言い過ぎることなく見守っていた。

もがき苦しむ状況も『良いプロセスの過程にいる』

どのクラブも同じようにBリーグ制覇が第一の目標となる。その中において、A東京が目指すものは何か。パヴィチェヴィッチヘッドコーチが示す方向に対し、正中選手をはじめとした全員が信頼し、同じベクトルで邁進している。

「自分たちの核となる部分が不可欠であり、そこに対しての自信はあります。長いシーズンを乗り越え、その先の時代を築いていくためにも核が必要であり、それに対する信頼を全員が持っています。核となるスタイルがあるからこそ、負けたあとの反省点は戦術や個々のプレーではなく、やっぱりディフェンスに対してボールを失わないようにどうするかという話になります。苦しい中でもどう勝利をつかんでいくかを突き詰め、その答えを見つけていかなければなりません」

新潟アルビレックスBBに連敗し、昨日の北海道戦に敗れた苦しい現状だが、正中選手は「ある意味では良いことです」とポジティブに受け止めている。これまでの経験を振り返っても、「今頃から少しずつ重たくなってくるものです。1勝を挙げることの大変さをチームとして学んでいる段階であり、乗り切っていかなければならない時期でもある。教訓として、今は良いプロセスの過程にいます」。これを乗り越えれば、さらに強くなることも分かっている。

ひとつの点だけを見ていても、うまくいかないのが長いレギュラーシーズンの戦い方だ。先々を見据えながら、芸術の域にまでバスケットを高めようと徹底させているパヴィチェヴィッチヘッドコーチ。さらに求めているのは、自らも態度で示す闘志である。
「最後の場面こそ、強い気持ちで勝ち切ることが大事だ。オフェンスリバンドを獲ること、シュートを決めきるためにも、一個のポゼッションをもぎとることに集中しろ。最後の最後に優しさを見せず、相手の全てを搾り取るようなメンタリティーで戦えるかどうかだ」

東地区首位をキープし、その強さを証明しているA東京だが、それもまだまだ道半ば。さなぎのようなチームがどう羽を広げてはばたいていくか楽しみである。しかし、今シーズンは孵化できずに終わってしまう可能性も背中合わせにある。残りは14試合。激しい東地区同士の対戦でいかに勝ち星を挙げられるか?ふたたびホームのアリーナ立川立飛で行われる3月28日(水)の次戦、昨シーズンのチャンピオン栃木ブレックスを迎える。

アルバルク東京

文・写真 泉 誠一