誇り高きキャプテンシー ~アルバルク東京、B LEAGUE初制覇!~

B LEAGUE2017-18シーズンを制したのはアルバルク東京だった。千葉ジェッツを85-60で破り、B LEAGUE初制覇、前身のJBLなどを含めると6年ぶり5度目のリーグ制覇を果たす。
その勝因を探ったとき、チャンピオンシップMVPの田中大貴が語ったように「ディフェンスの勝利」であることは間違いないだろう。指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチも試合後、「今日のゲームプランは2つ。ひとつは千葉になるべく走られず、イージーバスケットを与えないこと。もうひとつはオフェンスリバウンドを取られずに、セカンドチャンスポイントを与えないこと」と明かし、そこからA東京にいい流れが生まれ、第2Qに千葉を突き離すことができたと認めている。
しかしスポーツはひとつの方向からでなく、さまざまな角度から見ると、深みはより増してくる。それを改めて示してくれたのは、A東京のキャプテン、正中岳城だった。
むろん正中もディフェンスの勝利だったと認め、自分たちが積み上げてきたバスケットを最後まで信じ続けたことが勝利につながったと言う。その一方で今年のチームの強さを聞いたとき、彼はこう返している。

「大きく変わったこととして戦術面とかあるかもしれないけど、まずはそういう時期(優勝する時期)が来たということが1つ。もう1つは、この瞬間を迎えるまでそれぞれの選手が……僕は長いこと、このチームにいますけど、(前回リーグ優勝を果たした)2011-2012シーズン以降、どのシーズンの選手もこの瞬間のためにプレーしてきたので、彼らの思いが報われたのかなと思っています。今シーズンの僕らだけ勝ち取った瞬間ではなく、すべてが続いているストーリーがあってこそ、今日の瞬間になっていると思います」
アルバルク東京は、前身であるトヨタ自動車アルバルク時代も含めて、少なくとも東日本大震災のためにプレーオフが実施されなかった2010-2011シーズンごろから毎年のように優勝候補に挙げられている。正中もそれを認め、「それなりに強い戦いができていたし、今年以上に高い勝率をあげたこともある」とも胸を張りながら、一方でその間一度しか優勝をできていないことにどこかで歯がゆさを感じ、忸怩たる思いを募らせていた。
「これだけの選手がいて、『タレント集団』とまで言われることは、ある意味でタイトルを取れないチームへの揶揄みたいに聞こえる時期もありました。でもそれをナニクソと思って、そう言われることで終わらないようにタイトルを取りに行くぞということに、それぞれが集中できた結果だと思います」
パヴィチェヴィッチHCがもたらした激しいディフェンスと、スクリーンプレーを駆使した多彩なオフェンスの下には、トヨタ自動車時代から積み上げられた悔しさと、今年こそはそれを打破するんだという既存の選手たちの気概、そしてそれらを真正面から受け止め、自分のステップアップにつなげようとした若者たちの向上心が絶妙にマッチされていたことを忘れてはいけない。

正中自身にフォーカスすれば、秋田ノーザンハピネッツから期限付きで移籍してきた安藤誓哉と、京都ハンナリーズから移籍してきた小島元基の出現で出場機会は大幅に制限された。レギュラーシーズンの約3分の1はゲームに1秒たりとも出られない試合があり、チャンピオンシップに入ってからも4試合続けて、コートに立てなかった。
選手にとってこれほどつらいことはないだろう。入団したてで、右も左もわからない新人ならいざ知らず、ベテランの域に達し、前年のチャンピオンシップでは5試合にスタメン出場した選手が、チームの勝利にプレーで貢献できないことは、自分の存在価値さえ考えてしまってもおかしくはない。
それでも、と正中は言う。
「それでも僕はプレータイムに比例するような仕事はしたくないとずっと思っているので、試合に出ているからどうこうということはないんです。もちろん出ることにこだわって練習をし続けてきたし、今シーズンもそこは変わりませんでした。出られないなら出られないなりにやるべきこと、コートに立つ選手たちがいいプレーを続けられるような後ろ盾にならなければいけないと思ってやってきました」
そうしてひとたびコートに立てば――それがケガのために試合に出られない選手のフォローだとしても、そこで役割を果たすための準備と実行をけっして怠らなかった。それこそが11年間チームに居続けた、いわゆる生え抜きであるがゆえの誇りだった。
「そうした姿勢を示すことは自分がこのチームでいろんな人から学んだことだし、このチームのあるべき姿を先輩たちに見せてもらった自分だからこそ、そういう姿勢を見せなければいけないと考えてきました。今回のファイナルを迎えるにあたっても、こういう機会は限られている、どんなに強いチームにいても毎年優勝できるわけじゃないということを若い選手たちには伝えられたと思います。だからこそ、こうした恵まれた機会は掴まなければ意味がないと思うので、だから一人ひとり強くなろう、役割を果たそうということを徹底して伝えてきたつもりです」

チャンピオンシップに入ってから4試合連続でコートに立てなかった正中だったが、ファイナルの残り41秒、田中との交代でその舞台に送り込まれた。
何ができたというわけではない。
ボールにも触っていない。
しかし正中はその時間を存分に楽しんだ。
「記録上立ったということは、ジジィになったときに孫にでも自慢したいと思います(笑)。
ただこういったシーズンでも、ファイナルのコートに立つ機会を作ってもらえることはありがたいことだし、こういうコートがあるってことが僕たち選手の励みにもなるので、わずか41秒でしたけど、すごく味わえることのできた時間でしたね」

同じタイミングでコートに送り込まれた千葉の伊藤俊亮は今シーズン限りでの現役引退を表明している。
正中は……囲んでいた記者が少なくなったのを見計らって、来シーズンはどうするのかを聞いてみた。
すると、それまで“名演説”を打っていた正中が一転、ニヤリと笑って、静かに答えた。
「まぁ……ゆっくりと、ね……」
進退の明言は避けたが、横浜アリーナでの取材が“正中節”を聞く最後ではないことを祈るばかりだ。

文・三上太 写真・吉田宗彦