Photo of the Game -Final アルバルク東京 vs 千葉ジェッツ-

Bリーグに限らず、NBAでも、おそらく他国のリーグでも、バスケットボールのプレーオフはディフェンスの勝負になることが多い。
一つのプレーの精度がものをいう短期決戦であるだけに、ギャンブルができず、調子の波に左右されやすいオフェンスより確実性の高いプレーであるディフェンスに、より重点が置かれるからだ。

長いシーズンを闘い抜き、ポストシーズンを勝ち上がり、頂点を決めるチャンピオンシップファイナルの舞台に顔を揃えた両チーム、アルバルク東京と千葉ジェッツ。お互い固いディフェンスから流れを作るスタイルで、東京はピックアンドロールから展開する緻密なオフェンスを、千葉は早い展開のアップテンポなオフェンスを得意としている。
両チームの対戦もまた、激しいディフェンスの応酬になるかと思われた。

くしくも両チームのチームカラーである赤色に染められたアリーナの景観は、素晴らしいの一言。そんなファイナル特有の高揚感、緊張感を飲み込むような、ど派手な選手紹介の演出の後に、ゲームが開始された。
インサイドのアレックス・カークの活躍もあり、先に流れをつかんだのはA東京だった。だが千葉もすぐに普段通りのプレーを取り戻し、巻き返す。第1Qは一進一退の攻防が続き、19-18と意外にも点の取り合いの様相を呈していた。
しかし第2Qから、A東京の強力なディフェンスが機能し始め、千葉の得点が止まる。A東京は10-0のビッグランから、最後はウィリアムズのブザービータースリーでクォーターを締め、43-33と10点差でゲームを折り返した。

前半を終えて、千葉が33点しか取れていない。これは千葉ブースターにとっては物足りない数字に違いなかっただろうが、中立な立場でゲームを見ていたファンにとっても、そうだったかもしれない。
バスケットの醍醐味の一つは早い展開と点の取り合い、つまり得点シーンの多さなのは周知の事実だ。
だが、本当はそれだけではない。

インテンシティの高いディフェンス同士のぶつかり合いは、得点シーンを減らすのは確かだが、じりじりとした展開の中で高まった閉塞感を打開するような一つのショットが、見ている者に最高のエキサイトをもたらすこともある。
この日、横浜アリーナを埋めた1万2千人のブースターは、コート上のワンプレーごとに一喜一憂したはずだ。
一つのスリー、一つのスティール、一つのタイムアウト、一つのミスや一つのルーズボールによって、コート上を生き物のようにうごめくゲームの流れを感じたはずだし、そしてそれこそがバスケットボールの魅力に他ならない。
第2Q以降、A東京が、じわじわと流れを自分たちのものにしようとするのを固唾をのんで見ていただろうし、第3Qに千葉の小野がアーリーオフェンスからスリーを決めたときは、これで流れが傾くんじゃないかと、手に汗握りながら応援したことだろう。

そして、そういう流れを左右したのは、何もコート上で起こったことが全てではない。アリーナに集まったブースターの声援もまた、流れを左右する要因だったように思う。
期待していた選手の「これを待っていた」というショットや、普段は淡々とプレーする選手のここぞの雄叫び。そういったものがコート上で起こるたび、選手と一緒になって盛り上がるブースターの熱が、また選手に還元され、チームの力になる。
選手は強く、激しいプレーを見せ、ブースターは熱く、大きな声援を送る。その循環で作り上げられるアリーナという空間もまた、バスケットボールの大きな魅力だ。
ディフェンシブなゲームには、それはないのか?
答えは、ゲームを見た人なら分かるはずだろう。

この大一番を制し、優勝を決めたのはA東京。
「間違いなくディフェンスの勝利です」。
勝利インタビューで、A東京のエースにして、ファイナルMVPを獲得した田中大貴は高らかに宣言した。
A東京は練習量の多いチームで、シーズン中の二部練習も当たり前のようにあるという。そして特に、ディフェンスの練習は非常に厳しく、細かい。
本誌vol.19で既報の、ライター三上氏によるザック・バランスキーのインタビューをお読みの方はご存知の通りだ。
軒並み190cmを越える大男たちが、ディフェンスのポジショニングのたった数センチの差を指摘され、修正し、その精度を高めるべく日々の練習に明け暮れる。そして”流した汗は裏切らない”と自分たちに言い聞かせながら、チームを強化してきた。
それがリーグを制した、A東京というチームだ。
田中はインタビューでもよく「自分たちの練習を信じている」という意味のことを言うが、このファイナルの大舞台で、その自信をコートの上で体現してみせた。
優勝に相応しいチームの、優勝に相応しいゲームだった。

その強いチームを作り上げたルカ・パブチェビッチHC。
いつも表情が険しい、なんて言ってごめんなさい。
優勝が決まった瞬間、歓喜する選手やブースターと変わらない、彼の本当に嬉しそうな笑顔が見られた。
そのことも、A東京ファンには、こたえられないプレゼントとなったのではないだろうか。

この週末のファイナルと入替戦で、今シーズンのBリーグは閉幕となった。
また来シーズン、どのチームが勝利を重ねるのか、ディフェンスのチームを破るオフェンスのチームは現れるのか。
オフシーズンの選手の移籍も注目だし、どんな新人選手が出てくるかにも期待したい。
話は早いが、来るべき新シーズンの到来を、心待ちにしたいと思う。

文・写真 吉田宗彦