特別異色対談②島田慎二さん×すべすべさん「僕はフロントの考えを知りたくてたまらないんですよ」

「僕はフロントの考えを知りたくてたまらないんですよ」

――すべすべさんから見た千葉ジェッツの印象を聞かせてください。

すべ 最初のころは元NBA選手を呼んで強化しているわりには、失礼ですけどなかなか勝てないチームだなあという印象でした。

島田 そのとおりですね。

すべ でも、Bリーグになってきちっとまとまってきた印象があります。去年の天皇杯で富樫(勇樹)を見たときは、コートの上の動きも全然違うし、やっぱりこいつはNBAを目指せる選手なんだなあ、お金を払っても見る価値がある選手だなあと感じました。チームそのものも着実に成長しているのがわかりましたね。

島田 ありがとうございます。

すべ ジェッツのホームに行ったときは、プロレスラーの蝶野(正洋)さんが島田さんをバァーンと叩いたり…

島田 「島田、アウト〜!」ってやつですね。

すべ そうそう、そういう楽しさがありました。でも、それだけじゃなくて、なんていうか基本的なところですね。あんなにお客さんが入っているんですけどホスピタリティーがしっかりしていて、会場を出るときもスタッフさん、ボランティアさんがすごい笑顔で「ありがとうございました」って見送ってくれたんです。その笑顔に見送られながら、みんなは試合の感想をわいわい言い合いながら帰っていく…みたいな。僕はスタッフさんたちのあの笑顔が忘れられません。ジェッツと言えばおもしろい企画や大胆な演出が話題になりますが、1番基本的なこと、1番忘れてはいけないことを大事しているのがすばらしいと思いました。

島田 嬉しいですねぇ。

すべ 褒めたついでにもう1つ。駅から会場に向かう途中にジェッツのポスターがずっと貼ってあるのもよかったです。ああ、これからジェッツの試合を見に行くんだとわくわくしてきました。

島田 いやいや、本当に嬉しいです。ホームゲームの柱となるのはチームが魅力的であること、質の高いエンターテイメントで魅せる空間、そして優れたホスピタリティーの3つだと思っています。いつもその3つを突き詰めようという気持ちでやっているんですね。試合に勝つということはもちろん大事ですが、運営する者には勝敗をコントロールすることはできません。だから、私たちが考えているのは、勝っても負けても楽しい、またここに来て応援したいと思えるチーム、それはどんなチームだろうということです。1つにはアップテンポで、どこよりも走り、どこよりもディフェンスを頑張るチーム、そして、エンターテイメントではどこより楽しい異空間を提供できるチーム。それが我々が目指すものです。

――ジェッツの場合、ホームゲームのスタッフは何人ぐらいいるのですか?

島田 60人ぐらいですね。気をつけなくてはならないのは、その60人の内の1人でも感じが悪い印象があったら価値が半減してしまうということです。そこは教育しますし、開幕前にはみんなを集めて話もしますし、シーズンが終わったらお疲れ様の飲み会をして、あらためて話を聞いて、それを次のシーズンに繋げていくというのを繰り返しています。そこはとても大事にしているところですね。

――時には厳しいことも言われるのですか?

島田 言いますよ。言った方がいいと判断したことははっきり言います。だけど、チームの現場は別です。チーム自体には基本的にあまり口出しはしません。チーム状態を知り、いい補強を行い、選手が勝利を目指せるいい環境を作ることがフロントの仕事だと思っているので。で、チームが動き出したら、ちょいちょい大野(HC)や選手と飲みに行ったり、プレータイムが少ない選手がいたら食事に誘って励ましたり、そのへんは完全にお父さん役というか、見守る立場に徹しています。

すべ 僕のバスケットボールの入口はNBAだったんですが、強いチームというのはやっぱりいろんな面でフロントがしっかりしている、いい組織を作ってるという声が聞こえてくるんですよ。で、僕はNBAのフロントの情報を知りたくて知りたくて、毎年自分が好きなチームのGMやスタッフにはどんな人がいるんだろうとチェックしてました。日本のバスケを見るようになってもやっぱりフロントの情報を知りたくて…。

島田 でも、普通フロントは表立って出てきませんよね。

すべ そうなんですよ。僕はフロントの考えを知りたいのに(笑)。そんな中で自分から垣根を越えて声を聞かせてくれたのが山野さん(勝行アースフレンズ東京Z代表)であり、それが僕がアスフレを応援するきっかけにもなりました。島田さんも同じですね。垣根を越えて自分からいろんな発信をしてくれる。僕たちはそこから千葉ジェッツというチームを身近に感じることができるし、それはとても大きなことだと思っています。

島田 ありがとうございます。いつも思うんですが、野球やサッカーは大企業がバックに付いて、ものすごく資本をかけて、天下ってきた人たちが経営してるじゃないですか。それに比べてバスケット界は借金背負って、しのぎを削って、勝負を懸けて、もしダメなら自分が全部背負う覚悟でやっている社長が多いわけです。でも、それがバスケット界の魅力だと私は思ってるんですね。もちろん、いつか大企業がバンバン入って、すごいオーナーが現れて、世界に通用するとんでもないリーグになるかもしれない。それはそれで楽しみなことです。でも、今はそのレベルではないわけで、だからこそできることも多いはずなんですよ。

すべ 確かにそうですね。

島田 お金がない、知恵もない、努力のレベルも低いんじゃお話になりません。だから、今はとにかく知恵を出し合って、努力を重ねましょうよと言い続けています。厳しいなと思ってもあと一歩、あと一歩行ったら、またいろんなチャンスが出てくるかもしれない。だから、頑張ってもう一歩行こうよと、そういう思いでやってますね。

――島田さんはアイデアマンでも知られますが、そのアイデアはどんなときに浮かぶのですか?

島田 どんなとき?自分でもよくわからないですね(笑)。たとえば前にやった『フォロワー1万人企画』も西宮ストークスに行って、お昼を摂るために蕎麦屋に向かう途中で思いつきました。歩いてる途中ですね。で、蕎麦屋に着いたらすぐ「こういう企画はどうか」と広報に電話して、翌日には発表してって感じです。なんですかね、思いついてから実行するまではわりと速いんですよ。

すべ 速い!(笑)。それにしても島田さんはいろいろおもしろいことを考えますよね。スタッフもキャラ化してますし。

島田 「イケメン広報」とか「モッパーガールズ」とかね。あれはね、チームの中に親しみやすいキャラが多い方がいいという発想なんです。ほら、ディズニーランドに行っても、ミッキーだけじゃなくて、ミニーやドナルドダックがいた方が楽しいじゃないですか。どうせならファンが感情移入できる者がいっぱいいた方がいいと思って。

すべ そういうのが次々出てくるのは、ファンにとって嬉しいことです。

島田 いや、どう頑張っても『すべすべさん』のネーミングには負けますけどね(笑)

千葉ジェッツ
アースフレンズ東京Z
栃木ブレックス

文・松原貴実 写真・安井麻実