広島ドラゴンフライズ 岡本飛竜 #3

これまでも、これからも僕は挑み続ける part3

part2より続く

常に自分に矢印を向けながら、チームを勝利に導きたい

アメリカで実感した“本気”を広島ドラゴンフライズの岡本飛竜は今も日々の練習で実践している。取材がおこなわれたのはホームに山形ワイヴァンズを迎える数日前だったが、岡本の表情からは常に鬼気迫るものが感じられた。

その週のチーム練習は岡本自身も認めるほどハードなもので、長いシーズンの蓄積も重なって、選手たちの多くには疲労が見え隠れしていた。それに気づいているベテラン選手はあえて笑顔を作り、リラックスするような雰囲気を生み出そうとしていた。しかし岡本はそれに乗ることなく、本気の姿勢を崩さなかったのだ。

もちろんそれは意識しています。体育館にいる時間なんて、そんなに長くないじゃないですか? そこにどれだけ集中力を持っていけるか。自分を見つめ続けることができるか。その差をほかの人とつけることは必要かなって思っています

もちろん周りに目を向けないという意味ではない。ポイントガードである以上、周りに目を向けながら、しかし必要以上に周りに気を取られすぎず、自分自身にもしっかりと向き合う。これはけっして簡単な作業ではない。

学生の頃はどこか「自分、自分だった」と岡本も認める。すべてはプレータイムを得るためだ。そうしなければプロへ進む道さえも絶たれてしまうと考えていたからである。

ただプロになってからは違う。チームを勝たせるために自分をどうアピールし、周りをどう生かしていくか。それは島根スサノオマジックの1年目と2年目でスタッフを含めたメンバー構成が大きく変わり、3年目に移籍をするという、いわば3年間、ほぼ同じメンバーで戦ったことのない経験から来るものでもある。

選手として自分の持ち味や魅力をしっかり伸ばしつつ、周りをしっかり理解して、チームになじんで、チームをいい方向に導く。その大切さをこの3年間でかなり学びました

そして岡本はこう続ける。

環境が変わっていくなかでも自分に……いいときも悪いときも他人のせいにせず、常に自分に矢印を向けて、自分がどう頑張ったらチームに貢献できるか。そのためには練習しなければいけないですし、そういうことを考えるようにしています

苦しい日々の始まりは挑戦への始まりでもある

プロ3年目にして初めて開幕からスタメンポイントガードの座を勝ち取った岡本。チームもシーズン序盤は連勝を重ねるなど、目標のB1昇格に向けて最高の滑り出しを見せていた。しかし中盤以降、ケガ人が続出したこともあり、徐々にコンビネーションでのずれが生じ、思うように勝利数を伸ばしていけなくなっていった。

ケガ人が出たり、外国籍選手が代わったりして、チームとしてやってきたことが選手の特徴によって変わるなど、そうした些細なずれが結果的に負けにつながったケースがここ何試合か多いんです。そのなかで必要なのは練習からのコミュニケーションだと思いますし、チームとしての理解度が足りていないところがあったので、そのへんの難しさは今感じているところです

B.LEAGUE以前のリーグでもシーズン途中に外国籍選手が入れ替わることはあったが、B.LEAGUEになってからそれがより顕著になってきたように思える。むろんフロントとしてはケガをした選手や、力を発揮できない選手をカバーする意味で新たな選手を獲得しているのだろう。それは十分に理解できる。しかしいくらNBA経験のある選手を獲得しても――これは広島に途中加入したカール・ランドリーを意味するのではなく、一般論として――、それだけでは大きな戦力アップとはならない。彼らと、以前からチームにいる選手たちの融合があってこその戦力アップ、チーム力アップとなりうる。岡本自身も「(外国籍選手が新たに加わると)こんなにも変わるんだなぁって、やりながら感じましたね」と言っている。それだけバスケットボールというダイナミックなスポーツには繊細さも含まれているのだ。

そうした難しさを感じながら、岡本は取材の翌週、山形戦の第2戦で開幕戦から守り抜いてきたスタメンポイントガードの座を明け渡した。「いつまでもバックアップに甘んじている場合ではない、チームを勝たせる選手になりたい」と言っていた岡本にとっては苦しい日々の始まりかもしれない。

それでも岡本が向けるベクトルは常に自分自身にある。それまでの自分に何が足りなくて、何をすればスタメンポイントガードとしての信頼を勝ち取り、チームを勝利に導けるのか。そのための努力であれば惜しむことはしない。これまでのように、これからも岡本の挑戦に終わりはないのだ。

岡本は最後に盟友、ベンドラメ礼生の名を出し「礼生はB1にずっとい続ける選手だと思うので、早くあいつに追いついて、カモってやりたい」と自分自身の目標を語った。そして、ふと思い出したように言い換える。

いや、あいつだけじゃないですね。早くB1に上がってクセの強い93年組をカモってやりたいですね

岡本飛竜が生まれた1993年生まれにはベンドラメをはじめ、富樫勇樹(千葉ジェッツ)、小島元基(アルバルク東京)、田渡凌(横浜ビー・コルセアーズ)といったクセのある、しかし今後のB.LEAGUEを引っ張っていくライバルガードがいる。

part1【B.LEAGUEで活躍する誰よりも応援席での時間は長かった】
part2【ベンドラメ礼生のひたむきさに触れて】

文・写真 三上太

広島ドラゴンフライズ

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