【Talking NATIONS】日本人選手による海外挑戦の歩みから見る、成功に必要な要素とは?

気づけばあれから14年も経ってしまった。
日本人として初めてNBA選手としてコートに立った選手であり、現時点においては唯一の選手、田臥勇太(現・栃木ブレックス)。高校時代からスーパースターではあった彼の知名度が、一躍お茶の間に知れ渡った出来事が、2004年のNBA フェニックス・サンズへの入団だ。シーズンを通してNBAに残ることが出来なかったため、日本メディアの報道は一過性なもので終わってしまったが、日本人が無理だと言われていた世界最高峰のリーグに立ったこと自体が、夢のように思えたことを今でも覚えている。

そんな日本バスケ界の夢を叶える権利を新たに手に入れたのが、NCAA1部のジョージ・ワシントン大を卒業し、ドラフト外からNBA挑戦を続けていた渡邉雄太選手。NBA メンフィス・グリズリーズと2way契約* を締結し、日本人二人目のNBA選手になろうとしている。

世界中に5億人以上の競技人口がいながら、NBAのユニフォームに袖を通すことができる選手は、年間にわずか500人程。数字で見てしまうと、他のプロスポーツリーグと比べ、いかに狭き門なのかがよく分かる。実績の割合から言って、この人数の中に日本人やアジア人が入ること自体が稀であり、凄まじいことである。

振り返ると、これまで数多くの日本人選手が海外挑戦をしてきた。90年代には、女子のNBAであるWNBAに荻原美樹子さんが初めてドラフトされ、日本人バスケ選手の海外挑戦への道を作った。
男子の海外挑戦が盛んになったのは2000年代に入ってから。この頃に多かったのは、米国マイナーリーグへの挑戦だった。宮田諭選手(現・東京エクセレンス)、中川和之さん(現・IPU女子監督)などが独立リーグであるABAなどでプレイし、パイオニアとしてその後の道を作った。

以降、KJ松井選手(現・シーホース三河)や伊藤大司選手(現・滋賀レイクスターズ)がアメリカの高校で活躍し、直接NCAA1部へ進学するという道を切り開き、富樫勇樹選手(現・千葉ジェッツ)が、その道をNBAの下部組織であるDリーグ(現・Gリーグ)へと昇華させた。日本人でも、米国現地での実績を元にしてステップアップ可能であることが、彼らの挑戦によって示された。この道は、IMGアカデミーに入学する田中力選手によって更に高められるだろう。

一方で、あまり開拓されて来なかったのが米国以外のリーグへの挑戦だ。NBAに次ぐグローバルリーグとして知られる欧州のユーロリーグ。現在、欧州のレベルをもっとも近くで体感しているのは、今シーズンスペイン2部のチームと契約した木下勲選手(現・TAU Club Amics)だろう。過去には、ドイツリーグに齋藤豊選手(現・東京エクセレンス)、石崎巧選手(現・琉球ゴールデンキングス)が在籍し、その経験を糧にして日本に戻ってきたことはあった。しかし、未だユーロリーグのAライセンス級のトップチームでプレイした経験のある日本人はいない。
欧州以外のハイレベルなリーグとして、中国のCBAや豪州のNBLがある。嬉しいことに今夏、日本代表のエースである比江島慎選手がNBLブリスベン・バレッツへの移籍を発表した。この決断に至るには、我々には想像出来ない程の葛藤もあっただろうが、現役日本代表選手が、海外リーグに移籍することは、滅多になかったことであり、日本人選手にとっては新たな道を切り開いたことになる。

海外挑戦のゴールは選手それぞれだが、日本人選手がNBA挑戦などの大きな目標を実現するには、大きく4つの要素が必要になってくると考える。

「1.本人の想い(意志)」「2.国際大会等での活躍(実力)」「3.エージェントの力量(コネクション)」「4.スポンサーのバックアップ(金銭)」

つまるところ、強い「意志」ある者のみが、突出した「実力」を手にすることができ、あらゆる「コネクション」を駆使して活動継続や、契約締結に必要な「金銭」のバックアップを得る。自らの価値が、相対的な比較によって決定されてしまうのがスポーツビジネスにおける選手の存在意義である。日本人選手はその中で競争し、勝ち残らなければいけない。
そんな彼らの挑戦をしっかりとサポートし、今後に続く者たちに向けてのプログラムを早期に作り上げていくこと。自然発生的ではなく意図を持って、海外挑戦する選手たちを増やしていくことが、スポーツ産業として日本バスケ界を盛り上げていく過程で、非常に重要なことになっていくと思う。
引き続き、我々に出来ることで日本のバスケを盛り上げましょう。

* 2way契約とはNBAの本契約とは違い、育成を前提として各チーム2人まで契約することができる新しい契約スタイル。1シーズン45日間(試合、練習、帯同含め)までNBAでプレイすることが可能。

MAKE B-BALL MAJOR
文・平将貴

B.LEAGUE、NBA、日本代表、3×3、ストリート、学生バスケ。「すべてのバスケファンが集まるプラットフォームアプリ」 ”NATIONS” を運営する株式会社NATIONSの平将貴社長からスポーツビジネスの最前線にまつわる連載コラムの寄稿をいただきました。月1回更新予定。この記事はバスケットボールスピリッツフリーペーパーでの連載を転載しています。

株式会社NATIONS 代表取締役社長 平将貴
Twitter: @Masataka_Taira

グリーやメタップスなどITベンチャーでの幅広い経験を活かし、スポーツビジネスに参入。日本のバスケットボールビジネスを底上げすることをミッションとして奔走中

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写真・安井麻実