メディアより愛を込めて -スタア誕生!- part2

※本記事は2018年12月発行、バスケットボールスピリッツvol.28からの転載

“変化”を感じる選手は誰ですか?

丸山 これはちょっと違う話になるんですけど、たとえば野球の新庄(剛志)とかサッカーの本田にはインパクトのある“語録”みたいのがあるじゃないですか。バスケットにはああいう本音を語る選手はなかなかいないですよね。
 いい意味でルールを破ってくる人間ですね。本来はそういう人も許容できる組織じゃなきゃいけないんでしょうが、今の段階ではしょうがないかなって気もします。
入江 ただもう少しキャラ立ちしたコメントが欲しいと思うときはありますね。昔の佐古さん(賢一・男子日本代表アシスタントコーチ)なんかかなりおもしろい話をしてくれましたよ。
 あの時代の選手の方がキャラ立ちしてましたよね。折茂さん(武彦・レバンガ北海道)なんかも。
入江 そうそう、折茂さんはもっとやんちゃでした(笑)。北さん(卓也・川崎ブレイブサンダースヘッドコーチ)だって記事になることは言ってくれましたし。アマチュアの方がプロっぽいというか、今振り返ると、みんなサムライっぽかったです。
 今の若い子たちはどうなんでしょうね?
入江 みんな、あまり突出したがらないって言いますよね。以前、桜花学園高校の井上(眞一)先生に聞いた話では、昔は入ってくる子たちがみんなお山の大将でやんちゃでケンカもあって大変だったけど、最近はそういう子がいないそうです。みんな中学のエースで運動能力も高くて目立つ子ばかりだから、逆に普段は目立たないように普通に普通にと考えるみたいで、昔と比べたらみんなすごくおとなしいって。
 僕は今36歳なんですけど、若い子たちと関わる機会が結構あって、そのとき感じたのは僕より一回り下の世代になると「欲がないなあ」ということです。でも、その一方でめちゃくちゃ突き抜けてる人もいてその格差がすごい。格差っていうか、人種が違うみたいな(笑)。で、バスケでスターを張れる人というのはメンタルでもプレーでもやっぱりどこか突き抜けてる人だと思うんですね。そういう人を見つけてどう輝かせるか、それをマネージメントしていくことも大事かなと。ただそれを自分で身に付けて変われる人もいます。渡邊とか八村とかは多分アメリカに行くことで自分を開放した部分もあるんじゃないでしょうか。
入江 そうしないとアメリカではやっていけないですから。
 そうですね。主義主張をはっきりしないとアメリカではやっていけない。
入江 環境ですね。
 ただ彼らを見て思うのは、そういう環境をお膳立てしてあげる誰かがいれば突き抜けるポテンシャルを持つ子はもっといるんじゃないかなあということです。
入江 日本ではリーグもクラブも平均点ですよね。どこも優等生的なコメントを強いているわけじゃないでしょうけど、空気が言わせてますね。下手なことを言うとSNSですぐ炎上しますから。たいていはこの程度で炎上するの?っていう話ですけど。
山上 取材をしていて、この選手は変わったなあと感じるときはありますか?
入江 ありますよ。富樫選手なんかその代表ですね。中学のころは何をしゃべっているのかわからないぐらい声が小さくて、えっなに?と聞き返すくらいボソボソ話す感じだったのに、高校からアメリカに行って変わりました。たまに日本に帰ってきたとき取材したことがあるんですが、自分の考えをかなり話せるようになっていて、やり取りしている間にも「あっこういう感じじゃないんだよな」「もうちょっとちゃんと言わなきゃいけないんだよな」と、自分で自分に突っ込んで、しっかりことばを選んで話しているなあという印象でした。多分、向こうの高校でメディアトレーニングを受けたんでしょうね。自分がうまくできてないなと感じたら自分で修正する…というのを積み重ねて今の富樫勇樹になったんだと思います。もちろん、今の方が断然魅力的ですね。
丸山 それは経験の成せる技でもありますね。僕は皆さんと違って取材歴はそう長くないんですけど、その中でも田中選手(大貴・アルバルク東京)なんかは変わったなあと思いますよ。あれだけ注目されて取材される回数も多いですから、もちろん慣れみたいなものもあるでしょうが、それにしてもどんどん喋りがうまくなってますね。毒とまでは言いませんが、「プリンスとか言われれるのは嫌だ」みたいなことも言いますし(笑)、自分の考えをはっきり言える選手になってきたなあと感じてます。
山上 田中選手と並んでシャイと言われた比江島選手(慎・ブリスベン・ブレッツ(現・栃木ブレックス))も最近はよく話すようになったと聞きますが。
入江 彼は今、日本語に飢えてますからね、日本語で話すことが楽しいんじゃないですか(笑)。でも、昔と比べたら本当に進歩しましたよね。
 そう考えると、求められることに応えるのもスターの条件の1つかもしれませんね。

part3へ続く

構成・文 松原貴実
写真 吉田宗彦

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