注目の高校生、八村塁が欲しているもの

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Text & Photo by F. Mikami

国体の敗北を経て、厚みを増した明成

 10月25日、新潟アルビレックスBBのエキシビションゲームとして、地元・新潟の開志国際高校とインターハイ覇者の明成高校の対戦が組まれた。結果から言えば、明成の圧勝――ファイナルスコア【83-59】――となった。
 開志国際がここまで完膚無きほどにやられると思っていなかったのか、場内アナウンスの担当者は試合中に何度も「明成はインターハイ優勝チームです」と繰り返していた。開志国際としても、9月におこなわれた長野カップでは勝っており――それがたとえ2点差の勝利で、また明成のエース、八村塁がいなかったとはいえ、今回も十分に渡り合えるのではないかと思っていたはずだ。
 試合後、開志国際の富樫英樹監督は「2週間後に向けて、また鍛え直しだね」とだけ言って、会場を後にした。2週間後とは、11月11日におこなわれる、ウインターカップ新潟県予選の準決勝・決勝の日である。ウインターカップ出場に向けて、明成とのエキシビションゲームで弾みをつけたかった富樫監督の目論見は大きく外れたことになるが、一方で、今年度の日本のトップクラスの実力を、しかも今度はエース込みのチームで体感できたことは、開志国際にとって貴重な経験になったといえよう。

20151025_kaishi_x_meisei_02 一方の明成にとっても、貴重な経験の場となったに違いない。インターハイを制したことで、すでにウインターカップへの出場権は手に入れている。それはけっして悪いことではないが、一方で県予選のような真剣さを帯びたゲームから遠ざかることにもなる。
 9月下旬に和歌山県でおこなわれた国体では、主力メンバーを宮城県選抜として送り出し、優勝候補の筆頭に挙げられながらも、決勝で茨城県に敗れている。むろん八村もいたし、佐藤久夫監督がチームを率いてもいた。それでもなお敗れたことは、明成として何かを修正しなければいけないことを意味している。開志国際とのゲームのあとに佐藤監督が言う。
「これまでは八村のファウルトラブルや、彼のオフェンスへの影響力を考えて、ディフェンスをある部分でセーブさせていたところがありました。しかし八村もそろそろ成長してきて、周りの選手たちも力をつけてきて、40分間スタミナで負けないチームもなってきたように思います。国体後は最後の10分でもオールコートのプレスがかけられるくらいの練習を、メンタル的な粘りも含めて、練習をしてきました」
 その言葉どおり、序盤からフルコートで開志国際にプレッシャーを与えてペースを握ると、オフェンスでは八村がオールラウンドに得点をあげ、開志国際の留学生になす術がないという表情を浮かべさせた。明成は国体の負けを経て、また一回り強くなっている。

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チームのレベルを落とさないために

 八村に目を向けると、彼自身は「けっしてそんなことはない」と言うが、傍から見ていると何か物足りなさを感じているように見える。それはそうだろう。今年だけを見ても、年齢制限のない日本代表候補に選出され、ジョーンズカップに出場し、前後して全米の高校選抜チームと世界選抜チームが対戦する「ジョーダン・ブランド・クラシック2015」にも参戦している。高校卒業後はアメリカの大学へ進学を希望し、その準備を始めているほどの逸材は、懸命に頑張っている日本の高校生には大変失礼な表現だが、現時点では次元の異なる選手なのだ。

20151025_kaishi_x_meisei_04 そんな彼が今、モチベーションとしているのが、チーム全体のレベルアップだ。
「試合に出られるメンバーをもっと増やしていきたいです。自分より下の代のセンターも、もっと育てていかなければいけないと思っています」
 自分が活躍して勝つことは、自らの未来を切り開くために必要不可欠である。しかし彼は自分だけの力でゲームに勝てないことを十分に理解している。国体の敗北も、フレッシュなメンバーを投入して自分を厳しく守ってくる茨城の選手層に苦しんだ。「何試合もしていて、その疲れがあったのかもしれない」と言うが、それはウインターカップでも同じこと。インターハイとも、国体とも異なる、各チームが1年かがりで作り上げてくる最高峰の大会では、連戦のなかで戦い抜くコンディショニングが重要となる。つまりはベンチに下がって休む時間帯を増やすことだが、そのときにチームのレベルが下がらないようにするには、バックアップの選手がチームのレベルを下げないことが重要となる。それはまた佐藤監督だけでなく、この3年間で多くの経験をしてきた八村だからこそ、伝えられることもある。彼はそう考えているわけだ。
 高校3冠――インターハイ、国体、ウインターカップのすべてを制すること――がなくなった今、八村の目はウインターカップ3連覇だけに向いている。それに向かう明成を見るとき、八村を筆頭とした主力だけではなく、インサイド陣のバックアップにも注目したい。それこそが八村が今欲している存在なのだから。

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