NBL開幕 完成度の高さでアイシンシーホース三河が一歩リードか?

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文・松原 貴実 写真・吉田 宗彦

今季レベルアップの第1の要因は『ガードの成長』

アイシン三河、鈴木HC

アイシン三河、鈴木HC

 千葉ジェッツとの開幕2連戦戦を86-75、82-74で制し好スタートを切ったアイシンシーホース三河。鈴木貴美一HCは「連覇を狙ううちにとって、これから長いシーズンを戦う上での大事な2戦だった」と語る。
「去年の東芝さんもそうでしたが、過去を見ると、前年優勝したチームは次のシーズンに入ると‟受けてしまう„傾向がある。それをさせないのが僕の仕事でもあるわけですが、とにかくこの開幕戦は‟攻めていく„という姿勢を徹底させて臨みました」
 対戦した千葉ジェッツについては「NBAを経験した外国人選手が2人いるし、岡田(優介)君、富樫(勇樹)君という力のある選手も加入した、荒尾(岳)君、小野(龍猛)君も日本代表選手としてアジア大会を経験して帰ってきた、ざっと見ただけでもタレントが揃った侮れないチームと言えます」と評価しながらも、「しかし、うちも今年は確実にレベルアップしています」と、自信をのぞかせる。そのレベルアップの要因として、第1に挙げたのは『ガード陣の成長』
「去年のプレーオフからメインのPGで起用している橋本(竜馬)君が大きく成長しました。彼は図抜けた運動能力や得点能力があるわけではないのですが、ファイティングスピリットや周りを鼓舞する姿勢にはすばらしいものがあります。派手なアシストパスはありませんが、確実なパスを配給する安定感のあるガードです」

アイシン三河#0橋本

アイシン三河#0橋本

 ベテランガード・柏木真介の後継者として育てるべく「彼に対してはこれまでかなりキツイことを言ってきました」と言う鈴木HCだが、橋本はその厳しさにめげることなく向かってきた。「自分のプレーを改善しようといろんな質問もぶつけてくるんですね。その努力の結果を見せてくれたのが去年のプレーオフ、あの活躍が(日本)代表メンバーに選出されることにつながったのだと思います」
 また、鈴木HCが同じく成長の跡を認めているのは3年目を迎える比江島慎だ。PGとして試行錯誤する時期もあったが、「去年の終わりごろからPGとして違和感がなくなってきました。そのことによって、どこからでも攻められるチーム、おもしろいチームになってきたなと感じています」

アイシン三河#6比江島

アイシン三河#6比江島

主力不在の間に力をつけたバックアップメンバー

 だが、橋本、比江島はアジア選手権大会の日本代表メンバーに選出されたことで、チームを離れる時間が長かった。新チームを形成する上で、中心選手の長期不在はマイナスにはならなかったのか?
「私は逆にそれがチームのプラスになったと考えています。彼らがいない時間は、バックアップメンバーが成長できるチャンスでもありました。特に新加入の選手にとってはチームに馴染み、自分の役割を知っていく貴重な時間になったと思います」
 そんな中で、鈴木HCが「期待のニューフェイス」と名指したのは、今季NBDL大塚商会アルファーズより移籍加入した長谷川智也だ。シューターとしての資質は法政大学時代から高く評価されてきたが、この2戦目では2Q終盤、千葉ジェッツが連続3Pを決めた場面で、負けじと2本の3Pを入れ返し、相手に傾きかけた流れを断ち切った。
「金丸(晃輔)君や比江島君をバックアップする意味でも彼の加入は大きいですね。これからうちの(バスケットの)やり方を覚えていくことで、さらに出番も増えてくるはずです」(鈴木HC)

アイシン三河#22長谷川

アイシン三河#22長谷川

エースの復調と経験を積んだ司令塔 

 また、チームにとって何より明るい材料と言えるのはエース金丸の復調だろう。右肘の痛みから日本代表メンバーも辞退した金丸だったが、「まだ完治したとは言えませんが、痛みも無くなってきて徐々に調子を取り戻している段階です」と言う。が、その控え目なことばに反し、第2戦は1Qだけで15得点をマーク、スタートから一気に流れを引き寄せた。
「開幕からシュートを打つことを前提としていたので、入る、入らないは別としてとにかくゴールを目指しました。今の段階ではそれでいいと思っています」
 開幕戦を終えた感想は「みんなが攻め気を持ってアイシンらしいバスケットができていたと思います。リバウンドや勝負所でのディフェンスなどやらなければならないこともしっかりできていて、悪くはない立ち上がりでした」
 もちろん、長いシーズンの途中には好不調の波もあるだろうし、相手にスカウティングされ、より厳しいマークに苦しむこともあるだろう。だが、金丸にとってそれも想定内。
「僕がやりたいことを阻止してくる相手に対して、自分がまたその上を行けるかどうか。自分自身楽しみにしています」と笑う。
 さらに今年のアイシン三河の強みとしては「リバウンドが強い(アイザック)バッツの加入で、躊躇せずシュートを打つことができること。アジア選手権を経験した橋本や比江島がたくましくなって帰ってきたこと」などを挙げた。
「特に(代表)チームの中心選手として戦ってきた比江島には昨年より積極性が増したような気がします。それだけでプレーの幅は大きく広がりますから、今シーズンはさらなる活躍が期待できるんじゃないでしょうか」

 アジア選手権大会では橋本もまた大きな手応えを感じながら帰国した。
「国を背負って戦うということがどういうことなのかということがわかったし、日本に帰り、シーズンが始まったら、またこうやって戦っていくんだということが見えたというか、そのお手本になることを学べた大会でもありました」
 大会を通してプレータイムは決して多くはなかったが、体を張ったディフェンス、リバウンド、ルーズボール、声を出してチームを盛り上げること…それらがいかに重要なことかを再認識できた。
「コーチの考えを1番理解していなければならないのはガード、それをコートの中でどう表現できるかが自分の仕事でもあります。自分が毎日強くなっていくイメージを持って戦っていくことでチームも必ず強くなっていくと思っています」

アイシン三河♯14金丸

アイシン三河♯14金丸

気が抜ける試合は1つとしてない 

 2連敗を喫した千葉ジェッツの岡田優介はアイシン三河の印象を聞かれ、「個々の能力が高く、どのポジションにも穴がないチーム、でも、その強さはまだ序の口、実際にはもっとハードにやってくるチームであり、この開幕戦はまだウォーミングアップのように感じた」と答えた。
 確かに主力メンバーに大きな変動がなく、長年采配を振る鈴木HCのバスケットが浸透したチームは、完成度の点で千葉ジェッツを上回る印象は否めなかった。だが、長いシーズンはまだ始まったばかり。「これからどのチームもプレーのクオリティを上げていくわけで、それはうちも同じこと。アイシンを倒すイメージを持って戦っていくつもりです」と、岡田が語るように、今後それぞれのチームがどのように力を蓄え、どのように仕上がっていくのか、それを見ることもリーグ観戦の大きな楽しみと言える。アイシン三河といえども、変化する長丁場の中で気が抜ける試合は1つとしてない。
 今週末、顔を合わせる日立サンロッカーズ東京との一戦もまた然り。開幕戦は東芝ブレイブサンダース神奈川に僅差で敗れ黒星スタートとなった日立東京だが、それだけに次戦に懸ける意気込みは大きいはずだ。トップレベルの白熱戦が期待できる好カード言えるだろう。

アイシンシーホース三河 ⇒  https://aisinseahorses.com/

 

 2015年10月19日 追記
各選手の写真を追加しました。