一枚上手の役者揃いであったNBLオールスターズ

好き嫌いが分かれるのがオールスターゲームである。
筆者も若い頃は(NBAを見るときの話ではあるが)スター選手たちが集うオールスターゲーム派だったが、年を重ねる毎に、そしてスター選手が自分より年下になった頃から、真剣勝負だけを欲するようになっていった。
しかし、会場に行けば、お祭りとしての楽しみ方がある。何よりも楽しそうにプレイする選手たちの笑顔を見ているだけで満足した。プレスルームでビールが飲めればなお最高なのだが、日本にはまだそのようなホスピタリティに出会ったことはない。これまで世界を回って取材する機会があったが、その環境があったのは今のところチェコだけである。

坂本 健選手(豊通名古屋)のダンクから始まったNBDLオールスターゲーム

坂本 健選手(豊通名古屋)のダンクから始まったNBDLオールスターゲーム

1Qだけでダンク15本!積極的な姿勢で魅せたNBDL

「とりあえず僕の長所は飛ぶことなので、ダンクだけを狙っていました」
そう話す坂本 健選手(豊田通商ファイティングイーグルス名古屋)の豪快なダンクからNBDLオールスターゲームは始まった。
オールスターが苦手になった要因として、消極的かつ魅せるわけでもなく、ましてや真剣勝負でもない。その中途半端な感じが見ていて恥ずかしい気分にさせられる。
そんな思いをいきなり払拭させてくれたのが、坂本選手のダンクだった。まさか日本人が、1発目からダンクをかますとは──。

30点(3Pシュート8本)を決めた佐藤 正成選手(東京Z)

30点(3Pシュート8本)を決めた佐藤 正成選手(東京Z)

ディフェンスをしない立ち上がりは、オールスターゲームではお約束。お互いにノーガードで名刺代わりのオフェンスショーを繰り広げていく。最初の10分間だけで、両チーム合わせて15本ものダンクがネットを揺らした。日本でこれほどダンクが決まった試合は過去にもないのではないかと思うほど、派手な立ち上がりの中、37-35とEASTがリード。観客席からもダンクを煽る声が挙がる。
オフェンスだけの前半は、シュート成功率(EAST63%:WEST55.1%)で上回ったEASTが68-65と辛うじてリードを保つ。

ディフェンスのため、先にスタンスを落としたのはリードしているEASTの方だった。後半に入ると、負けたく無い気持ちがプレイに現れ始める。EASTが3Pシュートを決め、76-67と点差を開く。追うWESTはスピードで対抗。リバウンドからどんどん速攻を出し、走って得点を重ねて巻き返す。93-87とEASTが6点リードで最終ピリオドへ。

WEST#33ルーク・エヴァンス選手(レノヴァ鹿児島)のダンク、3Pシュートで追い上げる。しかしすぐさま、EAST#5坂上 慶選手(東京海上日動ビッグブルー)が3Pシュートを決め返し、開始1分半でEASTが先に100点目を挙げた。4点差まで詰めるWESTだったが、もう一本が決まらない。逆に残り5分を切ると、このゲームの主役が名乗りを挙げた。
フルコートプレスを敷きながら逆転を狙うWESTを嘲笑うかのように、ラスト5分間で4本の3Pシュートを沈めたのは大田区総合体育館を本拠地とするアースフレンズ東京ZのEAST#0佐藤 正成選手。地元選手の活躍で、EASTが118ー111で初勝利を挙げた。

2年連続勝利をつかんだ鮫島 宗一郎選手(バスラボ山形)

2年連続勝利をつかんだ鮫島 宗一郎選手(バスラボ山形)

「今日は前半からシュートタッチが良かったので、積極的に打っていったら決めることができ、ラッキーでした」(佐藤選手/東京Z)

昨シーズンはWESTから出場し、今シーズンはレノヴァ鹿児島からパスボラ山形ワイヴァンズへ移籍したことでEASTの一員となった#1 鮫島 宗一郎選手。昨年に続き、唯一オールスターゲーム2連勝を挙げたお祭り男である。
「オールスターなので魅せるプレイをやりつつ、勝負どころになったらしっかりガチンコでやろうとみんなで話していました」
選手たち自身が持てる力で魅せるという意識を持って臨んだおかげで、楽しい試合を見せてくれた。今年はガラリと選手が入れ替わったEASTにおいて、オールスターゲーム経験者は鮫島選手と#23 齋藤 豊選手(東京エクセレンス)の2人だけ。
「自分は年齢的にも上の方だったので、下の選手たちには声をかけてプレイしやすい雰囲気作りをしていました」と気を配りながらも、「(18点を挙げた)昨年の良い思い出があるので、良い形で試合に入れるように意識はしていました。(主役の座を狙っていたのでは?)密かには、ハイ。ちょっとはどこかで意識はしていました」

NBDL ALL-STAR GAME
EAST○118-111●WEST

高校界、そして次世代を担うスターである角野 亮伍(左)と津山 尚大(右)

高校界、そして次世代を担うスターである角野 亮伍(左)と津山 尚大(右)

物怖じしない高校生たちが観客を魅了していく

NBDLが会場をホットにさせた後、赤と青に分かれた高校生選抜チームがコートに現れた。
前日から会場に入り、それまで全てのイベントを観戦していたが、その態度を目で追うだけでも堂々としており貫禄さえ感じる。物怖じしないその立ち振る舞いは、コートでいきなり観客を魅了した。
初シュートを決めたのはWEST#11角野 亮伍(藤枝明誠)。
「やるならば世界のトップを目指せと両親に言われていた」という環境で育ち、高校1年生時には最年少で日本代表候補に選出された角野。卒業後はアメリカ挑戦を表明しており、バスケットを始めた時から夢に描いたNBA入りを目指す。
そんな角野も、「試合が始まる前になったら手汗がすごくて、シュートが入るか心配でした」とかわいい一面も見せてくれた。

濱田 健太(福岡第一)

濱田 健太(福岡第一)

角野以上に落ち着き払うのはインターハイチャンピオン#5津山 尚大(福岡大学附属大濠)。その津山がゲームを作り、WESTを引っ張っていく。#8濱田 健太(福岡第一)らの得点を演出しながら、自らも得点を挙げ、第1ピリオド終わって28-13とWESTが15点差をつけた。アグレッシブに攻める高校生たちだけに、バスケットカウントも多くなる。WEST#9金 剛鉉(報徳学園)、#10富田 頼(洛南)、EASTも#10波多 智也(正智深谷)がファウルされながらも、ねじ込む熱き戦い。あっという間に前半は終わり、51-42で依然WESTがリード。

「個人技はみんなあるので、フォーメーションではなくフリーでやっていこう。とにかく空いたら思いきってシュートを打て」と指示を出したのは、EASTを率いる折茂武彦ヘッドコーチ(レバンガ北海道)。その言葉に後押しされるように、「前半は何もできなかったので、積極的に行こうと思って後半に入りました」と気持ちを新たに臨んだのは、EAST#11前田 悟(県立山形南)。高校選抜メンバーの中で唯一、世界を見てきた男だ。
早生まれの前田は、八村 塁(明成高校2年)や牧 隼利(福岡大学附属大濠高2年)ら下級生とともにU-16日本代表に選ばれる。最年長ということもあり、キャプテンとしてチームをまとめ、U-17世界選手権へ出場する原動力となった。しかし、普段の前田は角野や津山のような前に出て来るタイプではない。
「自分はもともとドライブをすることもなかったのですが、そういう意識が変わりました」と世界選手権を経験したことで臆することなき積極性が生まれ、そのプレイを随所に後半は見せつけた。ドライブ、そして3Pシュートを決めた前田の活躍もあり、第3ピリオド中盤には58-56と、2点差まで追い上げる。
しかし、WEST#6中村 功平(県立豊浦)が悪い流れを切り、残り時間を考えながら1on1を仕掛けた#5津山がしっかりブザービーターを決め、70-60とWESTが再び二桁点差に離す。

前田 悟(県立山形南)

前田 悟(県立山形南)

第4ピリオド開始早々に連続得点でWESTが抜け出し、80-65と15点差まで開いた。「ディフェンスから」と自然と声を掛け合い、諦めずに勝利を目指すEASTは、フルコートプレスディフェンスで対抗する。そのディフェンスが奏功し、#4長谷川 暢(県立能代工業)、#9本村 亮輔(土浦日本大学)が折茂HCの眼前で次々と3Pシュートを沈めていく。
残り52.3秒、90-87と3点差まで迫ったEAST。ラストシュートを決めたのはEAST#13荒木 直(県立能代工業)だったが、ファウルゲームで得点されており、92-89と3点差のままWESTが逃げ切り勝利を決めた。ドリームゲームは文字通り、夢心地のまま終わってしまった。

WESTを率いる佐古 賢一HCと次世代を担う怪物・角野。世代を越えたヤンチャ坊主たち(笑)が、どのような会話を交わしたのか気になるところ。
「試合前に進学先のこととかを話しました。前に日本代表に参加した時のことを覚えていてくださり、『久しぶり』と声をかけてくれました。試合中は的確な指示を出す、すごく頼もしいコーチでした。追い上げられているときに、『相手を生き返られせるのもターンオーバーだし、自分たちのリズムを壊すのもターンオーバーだ』と言われ、本当にその通りだと思いました。これから海外を目指すにあたって、上のポジションになるのでそこは意識してやりたいです」
ミスターバスケットボールからもらった言葉を胸に、大きく羽ばたこうとしている角野は今後も注目である。

誰よりもふてぶてしく感じたのは、やっぱり津山。鍛え抜かれた鎧のような肉体と強いドリブルながらもハンドリング抜群の司令塔。しかし試合後のインタビューでは、たどたどしいやりとりに、さわやかな笑いを誘った。
「みんなうまくて、楽しかったです。自分は全然ダメでした。(選抜チームなので)最初は合わないと思っていましたが、みんなと連携が取れて合うようになり、楽しかったです。ファンの皆さんが温かく見守ってくれたおかげでこのような場所でプレイすることができました。皆さんありがとうございます」

高校生たちの夢の続きは、それぞれが歩む次なる舞台でさらに楽しませてもらうとしよう。

高校選抜 DREAM GAME
WEST○92-89●EAST

MVPは40点を挙げたアマット・ウンバイ選手(三菱電機名古屋)

MVPは40点を挙げたアマット・ウンバイ選手(三菱電機名古屋)

選手の笑顔が会場を包み、盛り上がったメインイベント

金丸 晃輔選手(奥)vs辻 直人選手(手前)による3Pシュート対決

金丸 晃輔選手(奥)vs辻 直人選手(手前)による3Pシュート対決

NBDLオールスターゲーム、高校生ドリームゲームが白熱しただけに、メインイベントを心配する声が囁かれる。
しかし、主役はやっぱりNBLオールスターゲームであり、役者が一枚上手であった。

3Pシュート王となったWEST#14金丸晃輔選手(アイシンシーホース三河)に対し、3Pシュートコンテストで敗れたEAST#14辻 直人選手(東芝ブレイブサンダース神奈川)のリベンジマッチ。ダンク王のWEST#22アマット・ウンバイ選手(三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋)が引っ張る形で、両チームともにダンクをぶち込み、オールジャパン決勝を盛り上げたWEST#10竹内 公輔選手(広島ドラゴンフライズ)×EAST#15竹内譲次選手による1on1兄弟対決勃発。スピードスターWEST#7五十嵐 圭選手(三菱電機名古屋)がドライブで抜けば、同い年のEAST#0 田臥 勇太選手(リンク栃木ブレックス)はパスで翻弄し、仲間たちを気持ち良くゴールへ導く──。
オールスター選手たちが、それぞれの特長や技を出し合いながら会場を盛り上げていった。

様々な感想があるとは思う。しかし、高校生ドリームゲームでも満員にできないのかと思っていた客席が、メインイベント前には埋まっていたのが全てを物語っている。やっぱり主役はNBLオールスターであった。

NBL ALL-STAR GAME
WEST○127-112●EAST
MVP:アマット・ウンバイ選手(44点)

笑顔を見せながらも、それぞれの特長を披露した選手たち。 (左)五十嵐 圭選手(右)田臥 勇太選手

笑顔を見せながらも、それぞれの特長を披露した選手たち。
(左)五十嵐 圭選手(右)田臥 勇太選手

真剣勝負を欲する方々には、すぐさまその舞台が帰ってくる。まもなく1月21日(水)の平日ナイトゲームよりNBLは再開。厳しいチーム状況が取り立たされる中、平日は集客が落ち込むことが懸念される。オールスターゲーム同様、現場に行けばやっぱり楽しい。いつでもどこでもバスケ観戦は会場で!

1月21日(水)NBL 後半戦再開ゲーム

19:00 東芝神奈川 vs つくば@とどろきアリーナ
19:00 アイシン三河 vs 和歌山@西尾市総合体育館
19:00 広島 vs 兵庫 vs 広島サンプラザホール
19:00 熊本 vs 三菱電機名古屋@益城町総合体育館
19:15 トヨタ東京 vs 北海道@国立代々木競技場第二体育館
19:15 リンク栃木 vs 日立東京@ブレックスアリーナ宇都宮

オールスターゲームを見たかった、という方は、J SPORTSで放送されるので要チェック!
1月19日(月)23:30〜 NBL ALL-STAR GAME(J SPORTS3)
1月20日(火)22:30〜 高校選抜ドリームゲーム(J SPORTS3)
1月21日(水)22:30〜 NBDL ALL-STAR GAME(J SPORTS3)

生で見たい!という場合は、2月1日(日)「TK bjリーグ オールスターゲーム」がALSOKぐんまアリーナで開催される。
何はともあれ、バスケシーズン真っ直中。会場へ行けば楽しいバスケが待っている。

NBL

泉 誠一