成長過程にある206cm/太田敦也選手(浜松・東三河フェニックス)

bjリーグオールスターゲーム後のインタビューは、帰る支度を済ませた選手をミックスゾーンでつかまえて、話を聞く段取りとなっている。いの一番にロッカールームから出て来たのは太田敦也であった。待ち構える取材陣と目線を合わせないようにし、オールスター選手というオーラを消しながら、明らかに足早に立ち去ろうとしていた。彼の性格から言って、「僕なんかに聞くことないでしょ」と思っているに違いない。しかし、もうひとつ急いでいる理由があった。その答えは後ほど明かすとしよう。

日本代表経験後、平均2点台だったオフェンス力が向上中

130206c.jpg206cmの恵まれた体格を持ち、bjリーガーとして唯一の日本代表でもある太田敦也に対するイメージは、外国人を相手に体を張ったディフェンスは良いが、オフェンスはサッパリ。とはいえ、一芸に秀でていれば良いのがプロ選手。日本代表選考時、鈴木貴美一HCは「bjリーグの中で目立っており、体が強く成長しているビッグマン」と評価。
成長と言う点では、サッパリという印象を持っていたオフェンス力が、少しずつだが進化を見せている。
チームとしてJBLラストシーズンとなった2007-2008シーズンにOSGフェニックスへ入団。その年は、ほとんどプレイタイムを与えられない日々を過ごしたが、bjリーグにチームが移籍すると状況は一転する。先発出場こそ3試合に留まったが、2008-2009シーズンは全52試合に出場し、試合時間も平均17分と大幅アップ。続く2009-2010シーズンは19試合で先発を務め、さらなる実績を積む。しかし、2010-2011シーズンまでの3シーズンにおける平均得点は、どれも2点台(2.6点、2.1点、2.9点)に留まり、やはりオフェンスはサッパリであった。この年までは──。

2011年になると、bjリーグ選手にも日本代表の門戸が開き、当時島根でプレイしていた石崎 巧(現在ドイツでプレイ)とともに日本代表に選出される。浜松同様にディフェンスや体を張って味方を生かすプレイが求められ、自分の仕事を全うした。しかし、その後のシーズンでは、オフェンスに対して積極性が出始める。それは数字にも表れており、2011-2012シーズンは前シーズンより倍となる平均5.7点と大きな進歩を見せた。
この年の変化と言えば日本代表に選ばれたこと、そして中村和夫HC(現秋田)から河合竜児HCに指揮官が変更となった点が挙げられる。つまり、中村HCの呪縛から解き放てたことが大きな要因なのではないか?
「ないない、全く関係ないですっ!もともと課題であったディフェンスが段々できるようになってきたので、今度はもっとオフェンスにフォーカスして行かないといけないと思って取り組んでいます。でも、そう言ってもらえると、少しは良くなって来ているのかなと思います」
今シーズンの前半戦を終えた時点で、太田の平均得点はすでに5.89点と昨シーズンを上回っていた。そして迎えたオールスターゲームでは、1Q途中から出場するや否や得点を挙げ、まさかの前半だけで7得点をマーク。
「空気を読まずに確実にレイアップに行ったのが良かったです」

リーグを代表するビッグマンだが意外にもオールスターは2度目

昨年末に行われたbjリーグオールスターゲーム記者会見では、唯一7年連続出場を果たした青木康平(東京)とともに、太田もリーグを代表して登壇。
その時に青木をマッチアップしたい、そして3Pシュートを決めたいと抱負を語っていたが、「一回も康平さんと一緒に出る時間が無かったです。3Pも狙って行きたかったのですが、一切、そんな僕が打てるような空気が無かったです」とオールスターゲームを振り返る。前半で7点を決め、欲が出て来たのかと思って見ていたハーフタイム中の3Pは、そんな目標があったからであった。
「そうなんですよ。やる気満々だったんですが、そんな空気が全く無かったですね。後半からはかなりガチな戦いでしたので、これは3Pなんて打ったら行けないな、と早々に諦めました」

130206b.jpgbjリーグを代表する日本人ビッグマンであり、オールスターゲームはすでに常連だという印象もあったが、出場経験は昨年に続き2度目。どちらもブースター投票ではなく推薦での出場。しかし、そんな太田への人気は高く、その年齢層も高い。
「なんか分からないですけど、年配の方が応援してくれています。差し入れにいただくのも和菓子が多く、羊羹とかいただいたりしています。さすがに試合後すぐに食べる気にはなれませんが、チームのみんなと分けたり、家に帰ってからヨメと一緒に美味しくいただいています」と話すように、ファンの年齢層が高いようだ。ゆえにインターネット投票しかないことが不利とも言える。もし、会場やハガキ投票があれば常連になっていた……かもしれない。
とはいえ、今回で2度目。
「そうなんですよ。まだぺーぺーです。笑」
……。2回目のオールスターは楽しめたのでは?
「メッチャ楽しめました。おもしろかったです」
具体的にはどんなところが楽しめたのかな?
「タオルをブン回したこととか!(笑)オールスター選手が集まった中で、みんなで団結して試合し勝てたことが楽しかったですし、うれしかったです」
屈強な外国人を相手にも、真っ向勝負で体をぶち当てていくコート上とは180度違い、インタビュー中は目尻は下がりっぱなしの低姿勢。急いでいるはずにも関わらず、ゆる〜い調子でインタビューは続いた。

東から西地区へ移動した浜松だが、王者沖縄を相手に準備期間があるのは集中できる

そんな良い人オーラ丸出しの太田だったが、後半戦へ向けたチームの話になると少しだけ表情がキリッとする。ほんの少しだけ。
「何とか勝てるではなく、ちゃんと勝てるようにチームは変わって来ています。シーズン当初は、試合をしていても何とか勝っている状況でしたが、試合をこなしていくうちに、チームの団結力も高まって来ており、良くなって来ている手応えを僕自身も感じています」
今シーズンより、ウエスタンカンファレンスへ移動した浜松だが、何か影響はあるのだろうか?
130206a.jpg「僕自身はそれほど感じていませんが、昨年のチャンピオンである沖縄など元々強いチームが西側の方が多いとは思っています。これから強いチームとの対戦が多くなる後半戦になってみて、あらためて何か感じるかもしれません」
後半戦がすでに再開したが、アウェイでの島根と高松に対して1勝1敗と連勝ならず。今週末はようやくホームに戻り、6位京都との対戦が待っている。その後も、カートライトHCを迎え沖縄と接戦を演じた大阪、そして首位沖縄とウエスタンカンファレンスで実績あるチームとの対戦が続く。
その沖縄は、昨シーズン優勝を賭けてファイナルで争った相手。今後の優勝争いへ向けても、昨シーズンのファイナリスト同士が、ファイナルを前に対戦することとなる。
「確かにウエスタンに移動したことで、沖縄を倒さないとファイナルへも進めないですからね。でも、そこを乗り越えれば優勝に近づくと逆に思えるかもしれません。どちらにしても、その後はイーストのトップチームと対戦するわけですけどね。優勝へ向け、まずは昨年の王者にリベンジすることに集中したいです。ファイナル4でのカンファレンスファイナルで当たれば、そこは一発勝負ですし、それまでに準備期間も作れます。つまり、昨年のようにはならないと思います。まぁ、勝つでしょう。フフフフ」
さっきまで目尻を下げていた低姿勢とは違い、不敵に笑う。昨シーズン、ファイナルで敗れたことがよほど悔しかったことが伝わってきた。

足早に帰ろうとしていたワケ…目指すは優勝して一緒に記念撮影

昨シーズン、ファイナルで敗れた後、ブースターが待つゴール裏へ男泣きしながら頭を下げた河合HC。今年は何としてもうれし泣きさせたいところだ。
「もちろんです。優勝してみんなで写真を撮る時に、僕自身としては子供を抱いて記念撮影したいです」
子供?そう言えば、子供が産まれたという話を噂に聞いていた。
「まだ産まれて来ていませんが、今日にでも産まれそうなんです。だから早く帰らないと!」
誰よりも早くロッカールームから出て来て、足早に去ろうとしていたワケは、第一子誕生を間近に控えていたからであった。
「今シーズン、人生初となるキャプテンを任されています。いろんな仕事もありますが、チームも好調であり上向いているので、自分もそれにしっかり乗っかり、そしてプレイでみんなを引っ張り、まずはイースタンカンファレンスチャンピオンになります」と後半戦へ向けた抱負を語り、愛妻の待つ浜松へ帰って行った。

1月24日、3300グラムの女の子が誕生したことが浜松オフィシャルfacebookで伝えられた。愛娘とともに記念撮影する新たなる夢に向かっても負けられない。そして、父となった太田は、さらに成長するはずだ。進歩する速度は遅いかもしれないが、まだまだ成長過程にあると期待している。

  • 浜松vs京都@岡崎中央総合公園体育館
    2月9日(土)18:00
    2月10日(日)13:30
  • 浜松vs沖縄@豊橋市総合体育館
    2月23日(土)18:00
    2月24日(日)13:30
  • 浜松vs東京@豊橋市総合体育館
    3月9日(土)18:00
    3月10日(日)13:30

text by IZUMI