世界基準のプレーで魅せるポイントガード(千葉ジェッツ#2富樫勇樹選手)

秋田でプロとしてのキャリアを踏み出した富樫勇樹選手にとって、週末に行われた秋田ノーザンハピネッツ戦は今シーズン2度目の凱旋試合でもあった。リーグが統一されたからこそ実現でき、秋田のファンは温かく迎えてくれた。だが、富樫選手にとっての最大の天敵が秋田にはいる。
「何なんでしょうね?もう、やりづらくてしょうがない。本当にダメ」と不満をもらすその天敵は、秋田のホームであるCNAアリーナ★あきた(市立体育館)だった。

「正直言うと、秋田にいたときからこの体育館が本当にやりづらくて、今までプロになって戦った中でも一番苦手。天井の高さなのか、コートなのか、その理由は分からないけどやりづらくてしょうがない。前回の2試合もダメでした。『なんでなのかな?』と思うくらい苦手意識しかない。なかなか体育館に苦手意識を持つことはないですが、今日もまさに体育館の空気にのまれた試合でした」

4月1日の秋田戦は70-80で敗れた。富樫選手自身は14点を挙げていたが、2Pシュート率は2/7(28.6%)であり、ディフェンスを振り切ってシュートまで行ってるのにリングに嫌われてこぼれ落ちたシーンが幾度かあった。「決めなければいけなかったシュートも3〜4本あったと思う」と反省点を挙げ、苦手意識がプレーにも影響してしまった。しかし翌日は28点を叩き出し、95-73で千葉の勝利に貢献。秋田の地でチャンピオンシップ進出を決めたことで、少しはCNAアリーナ★あきたにも良いイメージを持つことができたかもしれない。

アイザイア・トーマスを参考にファウルをもらうプレーを習得

2シーズンプレーした秋田時代は平均15点を決めていた。秋田でデビューした当初、当時の中村和雄ヘッドコーチは、「パスばかりを考えている。アメリカで大きな選手の中にいたから仕方ないかもしれないが、中学校の頃はもっとよいシュートを持っていた。積極的に得点も狙っていくようにしていかないといけない」と話していたのが思い出される。その甲斐あって得点が伸びた。だが、NBA Dリーグを経て、再び日本に戻ってきた千葉での昨シーズンは平均5.2点に落ち込んでいる。富樫選手は自分のプレーを見失ってもいた。
幸い、大野篤史ヘッドコーチは「富樫を中心にチームを作る」ことを就任時から考えていた。「得点だけに集中しているわけではないですが、自分の良さをアピールするにはそこしかないとも思っています」と言う富樫選手は平均13.3点を挙げ、その輝きを取り戻している。

ここ3試合で特筆すべき数字がフリースローだ。3月26日のレバンガ北海道戦は13/14本、秋田戦の初戦は10/11本であり、2戦目は11/14本といずれもフリースローだけで10点を超えている。NBA選手としては小さな175cmのアイザイア・トーマス選手(ボストン・セルティックス)を参考にし、取り組んできたことが実を結び始めた。
「アイザイア・トーマスのフリースロー試投数の多さはかなり参考にしています。あの身長でドライブをしていくスタイルはすごく勉強になり、先週の北海道戦からフリースローを多く打てていることはかなりの収穫を得ました。ファウルをもらいたいときに、自分からもらえるようになってきたかなという手応えはあります」
引いて守る相手に対して、自ら飛び込んで行ってファウルをもらう技術が向上し、フリースローの数字がグンと上昇し始めている。

得点力あるポイントガード急増中

167cmの富樫選手がペイントエリアをえぐるようにゴールへアタックし、得点を重ねる。大きな壁に阻まれれば、空いたスペースへボールを飛ばし、平均4.1本(現在リーグ3位)のアシストを決める。富樫選手のプレーに触発されるように、今シーズンはポイントガードの得点が目立つ。富樫選手も同じように感じており、対戦した秋田の安藤誓哉選手や名古屋ダイヤモンドドルフィンズの笹山貴哉選手の名前を挙げた。その安藤選手は、「フィリピンとカナダのリーグでプレーした時にアグレッシブなガード陣が多かった。逆に日本のポイントガードはそこが少ないと感じている部分でもあったので、自分はアグレッシブなスタイルでいきたいなと思ってました」と話しており、現在コート上で具現化している。

プレータイムの増加が大きな要因でもあるが、安藤選手は平均2.3点から10.7点へ、笹山選手も5.2点から10.6点へと昨シーズンから得点を伸ばしている。彼らだけではない。サンロッカーズ渋谷の伊藤駿選手が2.3点から7.5点に、そのSR渋谷から京都ハンナリーズへ移籍した川嶋勇人選手は平均1.6点から7.4点へと躍進。オールスターゲームが明けた後半から得点を獲りに行くスタイルに切り替えた川崎ブレイブサンダースの篠山竜青選手は、直近20試合中9試合で2桁得点を挙げている。横浜ビー・コルセアーズの細谷将司選手は1試合39点をマークするなど、得点力あるポイントガードが頭角を現している。田臥勇太選手も12月22日の琉球ゴールデンキングス戦で22点を挙げ、それまでの4試合は全て二桁得点をマーク。その時期を皮切りに、二桁得点を挙げる試合が増えている。

マーチマッドネスもNBAも、得点ランキングトップはポイントガード

世界を見渡せば、ポイントガードがスコアラーであるのが主流だ。現在、全米を熱狂させているNCAAトーナメント「マーチマッドネス」でも顕著に表れている。得点ランキングベスト10のうち7人もガードが占めている。1位のマーカス・キーン選手(セントラルミシガン大学)と2位のクリス・クレモンス選手(キャンベル大学)がいずれも175cmしかない。ともに背番号は3番であり、そのプレーはアレン・アイバーソンを彷彿させる。どちらもドライブで切れ込んでいき、キーン選手はブロックをダブルクラッチでかわし、身体能力が高いクレモンス選手はダンクで上回り、ゴールを決める。

そのトレンドはそのままNBAでも見られており、オクラホマシティ・サンダーの司令塔であるラッセル・ウェストブルック選手が平均31.9点でトップに立つ。富樫選手が参考にするトーマス選手も29.1点で3位につけている。NBAだけではなくアジアも含めた世界を見渡しても、ポイントガードの得点力は欠かせない。

Bリーグの得点ランキングは外国人ビッグマンが占めてはいるが、日本人ポイントガードは世界基準のプレーを見せ始めている。新たなスタイルを牽引する富樫選手だが、「特に自分は得点を獲れることで評価されないと、この先もプロとしてやっていけないと本当に思っている。そこに関しては自信を持って、アグレッシブにやっていきたいです」とさらなる進化を魅せることで、オールジャパンに続くタイトル奪取にも近づくはずだ。
今週末の千葉は、同地区首位の栃木をホームに迎える。田臥選手と富樫選手による日本屈指のポイントガード対決は見逃せない。だが、チケットは完売であり、残るは立見席のみ。

千葉ジェッツ

文・写真 泉 誠一