負けられない──強いハートの仙台っ子(仙台89ERS#14佐藤文哉選手)

仙台89ERS#14佐藤文哉選手

仙台89ERS#14佐藤文哉選手

明成高校から仙台大学を経て、仙台89ERSへ入団したルーキー、佐藤文哉。生まれも育ちも仙台市。そして、地元のプロバスケットボールチームでプロとしてのキャリアを歩み始めた。

地方の大学が関東のチームを倒す方が“おもしろい”という選択

明成高校時代は1年生からコートに立ち、3年時のウィンターカップでは準々決勝で福岡第一高校に敗れるも20得点をマーク。佐藤久夫監督の下で育ち、全国の舞台でも活躍したならば、関東大学一部リーグのチームからも声をかけられたのではないだろうか?
「高校2年になった時に仙台大学に行くと決めており、先生にもそのことは伝えていました。最初からそう言っていたせいか、特に先生からも関東の大学からの話などは聞かされることは無かったです」
さらに、仙台から離れない理由に迫ってみた。
「仙台大学に行けば、また久夫先生にお世話になれる、何かを学べるということが理由の一つ。関東の大学へ行ってバスケをすることも選択肢の一つだと思ったこともありましたが、僕の中では地方の大学が関東のチームを倒すという方がおもしろいかなと思って、そっちの道を選択しました」

“おもしろい”という動機で関東の強豪チームを倒す目標を持って過ごした大学4年間。なかなか初戦を突破できずにいたインカレ。4年生時、1回戦の相手は当時関東2部リーグとはいえ、入替戦で日本大学を破って1部リーグへの昇格を決めたばかりの白鴎大学。勢いあるチームを相手に58-56で接戦を制し、ラストチャンスで目標達成。佐藤自身は23得点を挙げ、勝利に貢献。続く明治大学戦もチームハイとなる17点を挙げたが45-64で敗れ、大学バスケに終止符が打たれた。

過去10年間のインカレを振り返ってみても、2回戦を勝ち上がってベスト8に残る関東以外のチームは、たった10チームであり1割程度。関東の大学チームの選手が皆、関東圏出身かと言えばそうではない。大学日本一を決めるインカレだからこそ、関東以外のチームも上位に名を連ねることが、ウィンターカップなどの高校バスケやNCAAトーナメントのような盛り上がりとなるはずだ。地元の大学で関東の強豪チームを倒すおもしろさがあることを高校生たちには知ってもらいたい。
そして、昨年末のウィンターカップを制した明成高校の後輩たちは、佐藤の心意気をぜひ見習っていただき、89ERSの一員として今後も仙台を盛り上げて欲しい。
「テレビで決勝戦を観て、優勝した後輩たちをすごく誇りに思いましたし、僕も負けられないという気持ちが芽生えました。今から、89ERSに後輩たちが来るのを待っています」

負けたく無い気持ち、負けられないチーム

先発を務める仙台89ERSルーキーズ。(左)#14佐藤文哉選手(右)#11和田 保彦選手

先発を務める仙台89ERSルーキーズ。(左)#14佐藤文哉選手(右)#11和田 保彦選手

レギュラーシーズンも大詰めを迎えているbjリーグ。仙台はプレイオフ圏に一歩及ばず現在7位。6位青森ワッツと同じ23勝23敗、直接対決も2勝2敗ながら得失点差でわずかに下回る。負けられないプレッシャーとブースターの期待を背負いながら、最近8試合はスターターを任された佐藤。
「試合の出だしからアグレッシブにプレイすることを常にコーチからは求められています。スタートで使われた試合は、そのプレイはできていると思っています。チームに勢いをつける役割は責任も大きいですが、自分にとっては良い経験になっています」
和田 保彦とともにルーキーながらも先発としてチームを引っ張り、4月5日(土)の東京サンレーヴス戦では1Qに25-15と10点差をつけた。ともに3Pを決めた2人のルーキーの活躍も光る。コート上での佐藤は、率先して周りの選手たちに声をかけ、リーダーシップを発揮。
「僕自信が負けたく無い気持ちが強く、当然チームとしても負けられない。勝つためにも声を掛け合うことが必要であり、ルーキーであろうが遠慮することなく、必要だと思うことは話すように心がけていつも試合に臨んでいます」

しかしその後、仙台の流れが悪くなる。追い打ちをかけるようにウェンデル・ホワイトが負傷するアクシデントに見舞われ、熱くなる河内 修斗HCがベンチテクニカルを犯し、東京にリズムが移り逆転を許す。調子に乗ると手を付けられないのが東京の長所。必死に追い上げる仙台であったが、ラストは井手 勇次のジャンプシュートで万事休す。下位の東京戦を87-91で落としてしまった。
「中盤で自分たちが点数を離して、本来であればそこから一気に引き離さなければいけなかったのに、自分たちのエナジーが足りなかったり、ミスから相手にシュートを決められて逆転されてしまった。今日はプレイオフを狙う僕らにとっては、本当に情けない試合となってしまいました」

努力して作った“体”の安心感

敗れはしたが、10点差を付けられても諦めずに3Pバスケットカウントをねじ込んだ佐藤のプレイ。残り時間1’15、78-83。外国人がインサイドを攻め込み、ディフェンスが小さくなれば外から佐藤が再び3Pを決める。残り17.8秒、ジャーフロー・ラーカイが決め、87-87同点。強気の姿勢を保ち、負けられないと歯を食いしばったからこそ、土壇場で追いつくことができた。勝ちきれなかった点は若いチームにとって、今後の糧につなげたい。緊張感ある試合が続くルーキーシーズンにおいて、佐藤自身は成長を実感していた。
「今まではずっとシューターとしてプレイして来ました。シュートを打って外れても、打ち続けろとか、力を抜いて打てなど、優しい言葉をかけられることが多かったです。しかしbjに入ってからは、プロという職業なので、シュートを決める責任を常に持つようになったことが大きく変わった点です」

ルーキーらしからぬ落ち着きがあり、シュート力もある。170cmの身長はけっして大きくは無いが、安定感がある。その要因はビルドアップされた分厚い体だ。
「高校の時から筋力トレーニングが大事だと久夫先生に教えられて来ましたし、大学時代はケガをしないためにもウェイトトレーニングの必要性を指導されました。自分で努力して作った体です。チームのためには体を張る場面も出て来ますし、勝つために日々鍛えています」
2mを越す屈強な外国人選手が突進してきても、臆することなくオフェンスチャージを奪ってみせた。「ぶつかられても大丈夫」という言葉に、さらに安心感が増す。

翌4月6日(日)の東京戦は100点ゲームで快勝し、勝率で青森ワッツに並んだ。しかしこの試合、ルーキーたちはベンチスタート。レギュラーシーズンの残り6試合も、仙台にとってはプレイオフへ向けた厳しい戦いは続く。
仙台を離れずに培った“負けたく無い”という強い気持ちで、残る試合に全てを賭ける。オフェンスチャージを奪ったように、体を張った真っ向勝負でこれからも強気な姿勢は崩さない。

  • 4月12日(土)18:00 仙台 vs 富山グラウジーズ@仙台市体育館
  • 4月13日(日)14:00 仙台 vs 富山グラウジーズ@仙台市体育館
  • 4月19日(土)18:00 仙台 vs 信州ブレイブサンダース@千曲市戸倉体育館
  • 4月20日(日)14:00 仙台 vs 信州ブレイブサンダース@千曲市戸倉体育館
  • 4月26日(土)18:00 仙台 vs 岩手ビッグブルズ@ゼビオアリーナ仙台
  • 4月27日(日)14:00 仙台 vs 岩手ビッグブルズ@ゼビオアリーナ仙台

仙台89ERS
bjリーグ

泉 誠一