日本人チームだからこそできること(大塚商会アルファーズ 青野 和人ヘッドコーチ)

ベンチ前で#22長谷川 智也選手に指示を出す青野和人HC

ベンチ前で#22長谷川 智也選手に指示を出す青野和人HC

NBDLは9チーム中3チーム(黒田電気、アイシンAW、大塚商会)が日本人選手だけでリーグ戦を戦っている。最大オンザコート2の外国人選手を起用できるNBDLにおいて、そのギャップに立ち向かいながら挑んでいる。中でも好成績を見せているのがアイシンAWアレイオンズ安城であり、1月26日現在3位(13勝7敗)。オールジャパンにも出場した。日本人選手だけだからと言って勝てないわけではないことを証明している。

外国人選手がいない以上、日本人の特長を生かして勝たねばならない。この週末、東芝ブレイブサンダース神奈川からレンタル移籍中のファイ・サンバがいる東京海上日動ビッグブルーに2連勝した大塚商会アルファーズ。195cmしかないビッグマンたちがインサイドを固め、リバウンドを奪う。20試合を終え、チームリバウンドは平均39.7本、9チーム中4位。負け試合でもリバウンド数が上回る傾向があり、連勝した週末は2試合とも50本を越えていた(1月25日:52本、1月26日:59本)。
「得点を獲る選手にしっかりスクリーンをかけてノーマークを作るとか、リバウンドは戦場なので一人が体を張ってがんばっていたら、他の選手がそのこぼれ球に対ししっかりルーズボールへ行こうとか、外国人がいてもいなくても共通してできるプレイがあると思っています」
そう話すのは、大塚商会の青野 和人ヘッドコーチ。bjリーグ埼玉、京都でのアシスタントコーチを経て、2010-2011には京都でヘッドコーチに就任。その後、リンク栃木ブレックスで再びアシスタントコーチとして2シーズンを過ごし、今シーズンより大塚商会で指揮を執る。外国人ばかりのbjリーグやJBLを経験して来た青野HCにとって、日本人選手だけのチームでNBDLを戦うことは、チャレンジでもある。

大事なのはチーム力と試合までの準備期間

インサイドもアウトサイドもある#32長谷川 武選手

インサイドもアウトサイドもある#32長谷川 武選手

「これまで10人中5人が外国人のチームであったり、クオリティの高い日本人に合わせてプレイできる外国人がいたり、いろんな経験をしてきました。その中で共通して言えることは、試合の場に立つまでに準備する過程の表れが結果につながること。大敗した時は、気持ちを入れてがんばれなかったというよりも、それぞれ準備が足りなかったことの方が多かったです。外国人がいるとかいない以前に、スクリーンをしっかりかけて相手のズレを作ったり、相手の弱点をどれだけ把握できて試合に臨めているかが勝敗に関わってきます。他のチームでアシスタントコーチやヘッドコーチを務めていた時も感じていましたが、選手が意固地になり、個人プレイで決まったシュートは絶対に次につながりません」
これまで培った様々な経験を生かしながら、チーム全員でスクリーンをかけてノーマークを作り、リバウンドも全員で飛び込むことを徹底させている。日本人だけで勝つには個の力ではなく、チーム力が大事。大塚商会はベンチでは全員が盛り上がり、コート内でも選手たちがよくしゃべる印象を受けた。
「開幕の頃に比べるとそれはものすごく増えましたね。やれ、と言うとやらないのですが、自発的に出た意見を反映できるようになっています。特に先週から今週にかけて(森野 耕輔)キャプテンを中心にどんどん動いており、たぶん試合前に気疲れした部分もあるとは思いますが、それも全員でカバーしながら試合してきた結果がこの勝利につながったと思います。こういう試合もないとやりきれないですからね」

インサイドではいずれも195cmの#32長谷川 武、#73落合 知也、#8山本 修二がハッスルしている。
「落合は成長著しい選手であり、自分の存在感を出せる場がNBDL。この調子でさらにがんばってもらいたいです。同時に山本はもっとできるはずです。ものすごく正直でがんばる男であり、みんなに好かれるタイプですが、それが相手にも読まれるぐらい正直さを出してしまう点は良くないので、そこが課題です。しっかり成長して欲しいです」
リバウンドもさることながら、東京海上日動のファイをペイントエリアから押し出す体を張ったディフェンスが効いていた。昨年、長谷川 武は#24長谷川 聖とともに3×3日本代表としてアジア選手権へ出場。落合もまたUNDERDOGのメンバーとして3×3 WORLD TOURで、それぞれ体格良い猛者どもとぶつかり合った経験が生かされている。

ルーズボールに飛び込む#73落合 知也選手

ルーズボールに飛び込む#73落合 知也選手

失いがちな志を持ってコートに立つプロ意識

昨シーズンから復活した大塚商会だが、それ以前となる2006-2007シーズンまで日本リーグに所属していた3シーズン時も練習場所や時間の確保ができずにいたという話は聞いていた。
「今もやっぱり厳しいですが、それでもやれることはたくさんあります。テクノロジーも進化しており、映像を共有できたり、メールで連絡を取り合ったりしています。集合時間を早めたりしながら、少しでも時間を作るように努力していますし、学生時代よりも部活をやってる感じがしています。また、選手たちの意識も高く、プロ選手には申し訳ないですが、失いがちなその気持ちを失わず、締まった志を持った選手たちだからこそ、コートに立てるありがたみを分かっています」
遠征時、初戦で敗れた翌朝は6時から駐車場に集まって、動きの確認をしたりもしているそうだ。

選手たちに芽生えているプロ意識。それは長年に渡りプロでコーチしてきた青野HCだからこそ、指導の中で自然に浸透していったとも考えられる。
「正直言って、空回りしていた時期がありました。こちらが伝える要求にも、選手たちにとっては『何を言ってるんだ』となり、こちらが下に降りるのか、選手たちのレベルが上がるのを待つのが良いのかという葛藤もありました。その時に、凝り固まった形で『高いレベルはここだ』と決めつけずに、適材適所、選手たちの長所を高めた形でのシチュエーションを説明するように切り替えました。特にこの試合はタイムアウト明けの実行力がすごく良かったです。シュートは入らなかったけど、きちんとノーマークでシュートを打てていたり、ディフェンスでもやられたけど良いトラップができていたりなど、そういう仕掛けが随所に出ていました。ここから上向いて行くと思います」

献身的なプレイ──それこそ日本人の強み

青野 和人ヘッドコーチ

青野 和人ヘッドコーチ

大塚商会にとって、そして青野HCにとっても、今シーズンを終えた時にターニングポイントと言えるかも知れない、今シーズン初の2連勝。7勝13敗で現在7位。プレイオフ圏内となる4位にいる豊田合成スコーピオンズまで、たった2ゲーム差。混戦のNBDLを抜け出すためにも必要なのは、「やっぱりリバウンド」を挙げた。
「日本人のファーストショットは結構落ちたり、ディフェンスでも守れているのですが、身長差ある外国人選手にタップシュートで簡単に決められてしまいます。相手にオフェンスリバウンドを獲られてセカンドチャンスを決められたり、こっちのオフェンスもワンチャンスで終わってしまう。上位チームとのリバウンドの差は大きく感じます。具体的に言うと、エクセレンスはそういう感じがありますが、豊通名古屋の外国人選手はさらにチームに献身的にプレイします。単に個の力よりも、チーム力で戦う豊通名古屋の方が対戦していて力は上だと感じます」

献身的なプレイというキーワードが出た。それは日本人チームだからこそ強みになるのではないか?
「そうなんですよ!そこなんです。心を折らずに最後まで戦い続けることでチームが強くなるし、そうならないといけない。自分がこのチームですごく学んでいるのは、選手たちの成長過程です。今までのプロではシーズンの勝敗で評価されましたが、大塚商会では全体像を見ており、育った選手がいるかどうかを見られています。あまりそういうのは得意ではなかったのですが、全員が底上げできるような声がけをしながら、今後も一つでも多く上位チームを食えるところにつなげていきたいです」

9チームで行われているNBDLは、毎週末必ずオフとなるチームが一つ出る。今週末、その番が回って来るのは大塚商会。2連勝した良いイメージを持って、練習時間に費やせる貴重なオフとなる。そして再来週2月8日(土)9日(日)はレノヴァ鹿児島@いちき串木野市総合体育館、翌週は豊田合成スコーピオンズ@大田区総合体育館と、プレイオフ争いをするライバルチームとの対戦が控えている。

大塚商会アルファーズ
NBDL

泉 誠一