本気の舞台で蘇った感情(リンク栃木ブレックス#22網野 友雄選手、#8山田 大治選手)

54試合目、レギュラーシーズン最終戦でプレーオフへの道を拓いたリンク栃木ブレックス。
53試合目、首位・東芝ブレイブサンダース神奈川に敗れるまで、28連勝していたトヨタ自動車アルバルク東京。連勝を止められたこの1敗により、1ゲーム差でイースタンカンファレンス2位通過。3位リンク栃木とのカンファレンスセミファイナルからのNBLプレーオフ開幕となった。
100点ゲームで初戦を飾ったトヨタ東京であったが、その後は苦戦を強いられる。2戦目は流れをつかめないまま81-95で敗れ、1勝1敗。何が起こるか分からないのがプレーオフ。第3戦の3Qまでは46-46、同点。勝利を呼び込んだのは、アーリーエントリーで入団した田中大貴選手。第2戦で出番が無かったルーキーが、積極果敢にチームを盛り立て、74-59で勝利。2勝1敗としたトヨタ東京が、東芝神奈川の待つカンファレンスファイナルへ進出。
アップセットに手を掛けていたリンク栃木だったが、勝利の女神は微笑んでくれなかった。

リンク栃木ブレックス#8山田 大治選手

リンク栃木ブレックス#8山田 大治選手

今シーズンの課題点が大事な場面で出てしまった悔しい思い

目を赤くし、足早にロッカールームへ向かう網野友雄選手。1人ベンチに残り、うつむいたまま立ち上がることができなかった山田大治選手。
ともに日本大学からトヨタ自動車アルバルクへ進み、トップリーグでのキャリアをスタートさせ、日本代表でも活躍した実績がある。そして2011年、大きな期待とともに二人揃ってリンク栃木へと移籍して来た。網野選手はトヨタ〜アイシンの一員としてそれまでプレーオフ常連。逆にトヨタ時代以降、プレーオフの舞台に立つ機会が無かった山田選手。
リンク栃木で3シーズン目を迎えた今年、ようやくプレーオフの舞台に返り咲くことができた。網野選手と山田選手は、昨シーズンより5分ほど平均出場時間が短い。しかし、久しぶりとなる真剣勝負の舞台に辿り着き、様々な感情を感じてもいた。

「やっぱりトヨタの方が最後まで集中していたのが勝敗を分けた敗因だった」
第3戦を振り返る山田選手。勝負が分かれた4Qの10分間、コートに立ち続けたが、第2戦のような流れを引き寄せる活躍には至らなかった。
「トヨタに気持ち良くオフェンスをやらせてしまった。自分の中ではディフェンスを修正していたつもりでしたが、うまく行かなかった」と言い、肩を落とす。
シーズンを通して課題となった点が最後の4Qに出てしまった。
「最後まで集中し切れなかったのがブレックスの弱い部分。相手に引き離されたらそのままズルズルと行ってしまうのが、今シーズンの課題でもあった。それが大事なこの試合でも出てしまったのが悔しいです」

一番成長を感じることができた今シーズン

涙をシャワーで洗い流した後、再び目の前に現れた網野選手。42試合だった昨シーズンのJBLからNBLは54試合に増えたが「実際にやってみたらあっという間でした」と切り出し、シーズンを振り返り始めた。
「ブレックスに来て3シーズンが経ちましたが、その中で一番チームの成長を感じられたし、充実した1年になったのは間違いないです。開幕からトヨタと千葉にやられて連敗スタートでしたが、後半にはアイシンや東芝、トヨタにも勝つことができた。このプレーオフでも3試合全てにおいて、どっちに転んでもおかしくない試合を最後までできていたので、チームとしての成長を実感しています」
ラストゲームは2Qだけの出場機会であったが、ディフェンスやリバウンド、ルーズボールといった網野選手らしい活躍から得点へとつなげ、自らも2連続得点を挙げて35-28とリードを奪う。第2戦での出場機会は無かった網野選手だったが、第3戦では限られた時間の中でやるべきことをやり、チームを勢いづけた。
「先週の千葉戦で足を少し痛めてしまったので、ヘッドコーチが気を遣ってくれてたのかなと思います。以前も少しケガをした時に、『選手のキャリアを守るのもコーチの仕事だ』と言ってくれていました。勝たなければならない試合と選手を守ることの判断をコーチはしてくれたのだと思っています。でも、選手としてはありがたい反面、出たいという気持ちがあります」
フツフツとした個人的な感情を抑えつつ、チームの勝利へ向けて網野選手はできることを考えながらベンチで戦況を見つめていた。
「今日はチャンスが来るかなという期待もあったので、出た時にはディフェンスでシューターを止めたいという気持ちがありました」

リンク栃木ブレックス#22網野 友雄選手

リンク栃木ブレックス#22網野 友雄選手

ブレックスの歴史を刻むベテランたちの努力

山田選手のプレーオフは、JBLスーパーリーグで2連覇を果たしたトヨタでの2006-2007シーズンまで遡らねばならない。
実に7年ぶりの真剣勝負を終え、「良い緊張感を持ちながら楽しもうと思っていました。でも、やっぱり負けると悔しいですね」。来月には33歳を迎えるベテランにとって、プレーオフを経験したことは大きな刺激にもなっていた。
「まだまだ自分でもできると信じていますし、来シーズンも必ずこの舞台に帰って来たい。今度はしっかり結果を出せるようにまたがんばります」

今シーズン、50試合に出場した網野選手だが平均出場時間は15.5分。20分出場した翌日にプレイタイムが激減することもあった。ルーキーの熊谷 尚也選手ら若手の活躍、さらに来シーズンは帰化申請すれば日本人選手として扱われるルール変更により、日本人の母を持つトミー・ブレントン選手らとのチーム内でのポジション争いはさらに激しくなりそうだ。
「選手としてコートに立っている間は負けたく無い気持ちがあります。試合に出て、結果を出すことが評価される世界。負けずに切磋琢磨しながらも、若手が育ってくれることはチームとしては大事なこと。そこはうまく気持ちを整理しながら、バランスを取ってできていると思っています」
34歳を迎える網野選手と田臥選手、2つ上にはキャプテン竹田 謙選手がいる。ベテラン勢が率先して努力して来たことがリンク栃木の礎となり、2007年発足の若いチームの歴史を刻む。
「練習中から自分なりにはハードにやってきたつもりですし、プレイタイムがあってもなくても変わらずにやるべきことはやって来ました。竹さんも常にそういう姿を若手に見せています。第2戦で遠藤(祐亮)がチャンスをもらった時に、しっかり結果につなげることができた活躍を見ていると、少しは若手にも伝わっているのかな」

まだまだ現役!

認めたくは無いが、選手としてコートに立てる時間には限りがある。しかし、負ければ終わるプレーオフの緊張感や真剣勝負の楽しさを久しぶりに味わったことで、来シーズンへ向けての新たな原動力にもなったはずだ。
海の向こうで熱戦が繰り広げられているNBAを見れば、30代の選手たちが当たり前のように活躍している。3連覇を目指すマイアミ・ヒートの先発メンバーには、32歳のドウェイン・ウエイド選手や35歳のシェーン・バティエ選手が名を連ねていた。日本で活躍する30代の選手たちだって、まだまだ伸び白は十分にある。

今シーズン、プレイタイムが減った網野選手に「引退」の二文字が脳裏に浮かんでしまってはいないか……そんな心配が頭を過ぎり、今回話を伺ったのが本当のところ。
「とくにプレイタイムが無いからといって心配してもらうようなことはないですよ。ヒラメキの多いコーチなので!」と笑い飛ばしてくれたことで、胸をなで下ろす。キャリアの最後についても話してくれたが、それはまだまだ先の話。
まずはしっかり体を休め、そして来シーズンの巻き返しへ向けて充実したオフシーズンを過ごしてもらいたい。半年後、今シーズン以上にコートの中でハッスルできるように──

連日、栃木県から駆けつけ、サポートし続けたブレックスファン

連日、栃木県から駆けつけ、サポートし続けたブレックスファン

NBLプレーオフは今週末、首位チームが登場するカンファレンスセミファイナルが行われる。

イースタンカンファレンスファイナル

東芝神奈川(1位)vs トヨタ東京(2位)
第1戦:5月10日(土)15:00@代々木第二体育館
第2戦:5月11日(日)15:00@代々木第二体育館
第3戦:5月13日(火)19:00@代々木第二体育館

ウェスタンカンファレンスファイナル

和歌山(1位)vs アイシン三河(2位)
第1戦:5月10日(土)15:00@愛知県体育館
第2戦:5月11日(日)15:00@愛知県体育館
第3戦:5月13日(火)19:00@パークアリーナ小牧

NBL
リンク栃木ブレックス

文・泉 誠一 写真・三上 太