若者たちよ、大志を抱け!(トヨタ自動車アルバルク東京#24田中大貴選手)

トヨタ自動車アルバルク東京#24田中大貴選手

トヨタ自動車アルバルク東京#24田中大貴選手

「いえ、自分はまだまだできると思っています」

NBLプレイオフのイースタン・カンファレンス・セミファイナル。トヨタ自動車アルバルク東京がリンク栃木ブレックスを破って、カンファレンス・ファイナルに進出を決めた第3戦で、ベンチスタートながら10得点を挙げたトヨタ東京の田中大貴は、「いいプレイができたと思っている?」という記者の質問にそう答えた。

田中は宇都直樹、張本天傑とともに「アーリーエントリー制度」で、大学の卒業を待たずにNBLデビューを果たした新卒プレイヤーだ。つまりこれまでであればコートの外で見守ることしかできなかったプレイヤーが、プレイオフの舞台に立ち、チームの勝利に貢献したのである。それでいて、自分の力はこんなものじゃない、まだまだできるんだと言う。

田中大貴選手

田中大貴選手

ではそれがビッグマウスかといえば、さにあらず。田中の発言は自信に満ちている。県立長崎西高校から東海大学に進学し、大学在学中に日本代表入りを果たした自信。才能のみに過信することなく、厳しい練習に耐え、努力を重ね、磨き上げた自分の実力を信じる、文字どおりの“自信”である。日本人はとかく謙虚であることが美徳だという。「自分なんてまだまだですよ」。そういえば可愛げがあるようにも思われる。だが謙虚さも度を越してしまうと、ネガティブな、自信のなさにつながりかねない。同じ「まだまだ」でも、「もっとできるんだ」という田中の発言は自信の表れとともに、ここで立ち止まっている場合じゃないという未来への強い意志でもある。

リンク栃木との第3戦、トヨタ東京のドナルド・ベックヘッドコーチは、2度、田中をコートに送り込んでいる。1度目は第2ピリオド残り6分3秒の場面。トヨタ東京が1点ビハインドのときだ。そして2度目は第4ピリオドの開始時、【46-46】の同点の場面である。ともに競った展開のなかでの投入だが、後者はあと10分で決着がつく、負ければシーズンが終わるというクライマックスの時間帯である。前日の第2戦ではまったく起用しなかった田中を起用した意図について、ベックヘッドコーチは「第3ピリオドだけを見れば【10-7】と得点が停滞していた。だから第4ピリオドは得点が必要と判断して、オフェンス力のあるダイキを投入したんだ」と言っている。

しかし「ディフェンスとリバウンドが信条」であるトヨタ東京にとって、緊迫した場面でオフェンスだけの新人を入れるとは考えにくい。田中のオフェンス力に期待を寄せつつ、一方で田中の、東海大学で鍛えられたフィジカルなディフェンス力も十分に評価しているということだろう。
実際に第4ピリオドの残り7分、田中のハードなディフェンスがリンク栃木の田臥勇太に渡るボールをスティールし、そこからチームの得点に結びつけている。彼のディフェンスが1つの大きな流れを作った瞬間である。

「ベンチで見ていて、ハンドオフ(手渡しパス)からのシュートをやられていたので、もし自分が試合に出たら、フィジカルなディフェンスで、押し合いながら守ろうと思っていたんです。あの場面はそれがたまたまスティールにつながったのでよかったです」
たまたま、というあたりが田中の謙虚さだろうか。

 「プレイオフはレギュラーシーズンとはまったくの別物だと思っています。ここからが本当の勝負だと、実際に試合に出ても感じるし、ベンチで見ていてもそうした緊張感が伝わってきます」
だからこそ、前半に出たとき、2本連続でシュートを落としたことを悔いている。周りからの賞賛よりも、反省のほうが大きい。田中とはそういう選手なのだ。
「控えとして試合に出る以上、1本目のシュートを決めないと試合に出るチャンスはどんどん減っていく。プレイオフでは1つひとつのプレイが勝敗を分けると思うから、余計にあの1本目がすごく大事だったんじゃないかって思うんです」

 反省と課題を明確にしながらも、「自分はまだまだできる!」と口にする田中大貴。彼のような若者が、もっと出てきていい。

スティールする田中大貴選手

スティールする田中大貴選手

イースタンカンファレンスファイナル

東芝神奈川(1位)vs トヨタ東京(2位)
第1戦:5月10日(土)15:00@代々木第二体育館
第2戦:5月11日(日)15:00@代々木第二体育館
第3戦:5月13日(火)19:00@代々木第二体育館

ウェスタンカンファレンスファイナル

和歌山(1位)vs アイシン三河(2位)
第1戦:5月10日(土)15:00@愛知県体育館
第2戦:5月11日(日)15:00@愛知県体育館
第3戦:5月13日(火)19:00@パークアリーナ小牧

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三上 太