意識改革(三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ#34伊藤 俊亮選手)

最近はどの業界の方とお会いしても、「バスケはどうなっちゃんですかね?」というのが挨拶のようになっている。話せば話すほど気持ちは重たくなり、会場へ向かう足取りも重い。
1ヶ月ぶりにホームゲームを行う東芝ブレイブサンダース神奈川が、三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋を迎え、初の交流戦を行った12月5日(金)。試合が始まると東芝神奈川が一気に点差を開き、1Qが終わって30-9。この時点では、会場に来たことに対し、後悔の念に苛まれていた。

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フルコートプレスを仕掛けた諦めない姿勢

チーム数が増え、東西カンファレンスに分かれたことで、昨シーズンは29勝25敗だった三菱電機名古屋。JBL2007-2008シーズン以来となる勝率5割を越え、プレイオフに進んだ。新規プロチームが多い西地区だっただけに、勝ち星を拾えたという見え方もあり、ドアマットチームの印象はまだ拭えない。
NBLユタ・ジャズのアシスタントコーチに就任したアントニオ・ラングに代わって、今シーズンからスペイン人のトリフォン・ポック ロペズHCが指揮を執る。チームに求めるスタイルを伺ってみると、散々な試合結果の後ということもあり、「単にバスケットボールチームを創りに来ただけであり、今日のような試合はいらない」とお怒りモード。

前半は47-30、17点差を追いかける三菱電機名古屋。しかし後半に入るとフルコートプレスディフェンスを仕掛け、少しずつ点差を詰めていく。諦めずに戦う姿勢を対し、前半までの虚無感は晴れていった。
4Q残り7’33、69-58と11点差まで詰めたのだが、その後の東芝神奈川は憎らしいほどタフショットも厭わずシュートを決めまくる。4Qだけを見るとフィールドゴール58.8%、3Pシュート50%、フリースロー100%と高確率でネットを揺らし、90-75と15点差で試合終了。三菱電機名古屋は立ち上がりの失点が悔やまれる結果となった。

大きな転換期

スピードスター五十嵐 圭選手

スピードスター五十嵐 圭選手

「ヘッドコーチが変わったことが一番大きいです。昨年まで長く続いていた三菱電機名古屋らしさが大きく変わったことであり、チームの歴史を振り返っても大きな転換期と言える事象だと思います」
昨シーズン、チームに移籍してきた伊藤 俊亮選手は、敵チームとして対戦して来た経験を踏まえながら、チームの変化を語ってくれた。
怒れるヘッドコーチは言葉少なめだっただけに、あらためて伊藤選手にチームのスタイルを聞いてみよう。東芝神奈川の決定力が高い試合であったことが一つの要因かもしれないが、スピードスター五十嵐 圭選手を擁しながらセットオフェンスがこの日は多かった。それが、ポックHCが求めるスタイルなのか。
「早い展開を目指してはいます。今日は相手にシュートをしっかり決められてしまったことで、なかなかブレイクが出せない状況でした。そのため、余計にセットオフェンスばかりになってしまい、重たい展開になってしまった。アマット(ウンバイ)はリバウンドを獲ってそのままブレイクに持っていける能力があり、僕も含めてインサイド陣がしっかり真ん中を走っていき、それに合わせてガード陣が展開するプレイが本来の狙い所です」

オフェンスこそ重たい状況ではあったが、「ディフェンス・リズム・誇り」というチームのスローガンどおり、ディフェンスは目覚ましい進歩を見せてくれた。
「積極的にディフェンスを仕掛けていきはじめてから、勢いに乗れた部分もありました。1Qに離された点差を少し縮められたことは、今日のゲームでの収穫点。だが、全体的に見ると自分たちが目指すバスケからはまだまだかけ離れたところにいます。しっかり修正していかねばいけません」
今シーズン、自分たちのバスケができた試合はあったのだろうか。
「上位チームを相手には、なかなか(自分たちのプレイを)やらせてもらえていません。順位争いをしている広島(ドラゴンフライズ)に対しても1勝1敗でしたし、波に乗り切れていない状況ではあります。時間がかかる課題もたくさん残っていますが、そこに向かって小さなステップを踏めていることは自分たちでも少しずつ感じています。そこが昨シーズンと比べ、変わって来ているところではないかと思います」

選手の意識を変えなければ何も変わらない

10月の月間MVPを受賞し、現在得点首位のアマット・ウンバイ選手

10月の月間MVPを受賞し、現在得点首位のアマット・ウンバイ選手

2年目を迎えたアマット・ウンバイ選手は、精神的な成長が見て取れた。
「もう少しアマットをうまく使いながら、彼の負担を軽くしてあげるようにしたいです。そのバランスが取れてくれば、全体的にもっとプレイしやすくなってくると思います。余計な負担をかけてしまったり、無理させたり、悪い方に出てしまう時間帯もありますが、昨シーズンよりもグッと少なくなってきています。それはコミュニケーションを取りながらできているからだと思います。昨シーズンほど、アマットにフラストレーションを溜めさせずにプレイさせていると思いますし、それはスタッツ(平均23.8点で12月14日現在リーグNo.1)にも現れており、月間MVP(10月)にもつながっています」

チーム最年長となった伊藤選手から、坂本ジェイ選手やウンバイ選手(12/14の誕生日で25歳)、新加入したブレンダン・レーン選手(24歳)ら若いインサイド陣に向け、「伝えられるところは伝えています。お互いに練習中から切磋琢磨できているのが大きい。練習とゲームでレベルが変わるようなチームも経験しています。今はしっかり練習中にゲームライクなプレッシャーを感じながらお互いに切磋琢磨できており、すごく良い環境だと思っています」と充実した日々を送れている。

「選手の意識を変えなければ何も変わらない」とポックHCは言う。伊藤選手が述べていたように、ここが転換期であり、少しずつだが変わり始めている。その成果は早くも取材した翌日に結果として表れた。97-85で東芝神奈川を破ったのだ。変化を実感し、自信を高めるためには勝利が何よりの特効薬となる。
「若い選手も多いので、結果がついてくるによってチームが一つになっていきます。一生懸命やることでチームとしてまとまれば良いのですが、どうしても結果がついてこないとバラバラになりやすいチームでもあります。細かい部分を積み重ねながら、結果を拾っていくような姿勢でやっていきたいです」
さらなる成長を目指すためには、下位チームに対して取りこぼさないことが重要だ。

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今週末のホームゲームはキャリーオーバー!

不甲斐ない敗戦だけに、表情一つ変えず淡々と話すポックHCだったが、伊藤選手が明かす普段の素顔を知り、真剣さがより際立つ。
「オンオフがハッキリしていて、プライベートではお茶目なおじちゃんです。すごく好感が持てるヘッドコーチ。母国語はスペイン語ですが、英語でコミュニケーションを取ってくれたり、今は平仮名を読めるようになったり、日本の文化にもすごく理解を持っていて、一生懸命溶け込もうという意識で接してくれています。自転車で通勤してたり(笑)。家族で日本に来ており、馴染もうという努力はすごく感じられます」

やっぱりバスケはおもしろい。試合前とは打って変わって、終わってみれば充実した気持ちにさせられた。コート外での由々しき状況は長引いているが、憤りを少しでも収めるためにもバスケ観戦でリフレッシュするのが一番である。今週末(12月13日-14日)、三菱電機名古屋はホームゲームを迎える。「シューターズ ハーフラインシュート」は現在キャリーオーバー中。ハーフラインからのロングシュートを決めれば7万円の食事券がもらえるぞ。クリスマスへ向けて挑戦したい。

  • 12月13日(土)14:00 三菱電機名古屋 vs 兵庫ストークス@名古屋市東スポーツセンター
  • 12月14日(日)14:00 三菱電機名古屋 vs 兵庫ストークス@名古屋市東スポーツセンター

「一発勝負のオールジャパンでは格上のチームに対しても勝てるチャンスがあるわけです。優勝を狙ってがんばっていきたい」と話していた石崎 巧選手のインタビュー「今までとは違う目線でアイデアを出していきたい」も合わせてご覧ください。

全力を出して失敗することが大事

nbl141211e最後にFIBAから資格停止の制裁を受けた問題について、元日本代表の伊藤選手の心境を紹介したい。
「急に無力感に苛まれたりしますが、自分にできることをしっかり見つけてやって行こうという気持ちでいられるのは、ファンの皆さんの支えがあってこそだと感じています。ファンにしっかり恩返しができるように、自分ができることをやっていくだけです。
つくば(ロボッツ※開幕直後に経営破綻しリーグ管轄下になっていたがその後、新会社を設立。しかし、新オーナーと10選手との交渉が決裂し自由契約となった)の件を報道で見ていても、選手として辛い部分は本当にありますが、チームが無くならなくて良かったという気持ちが一選手としてはあります。

いろんな意見があるとは思いますが、最終的なゴールがどこにあって、そこに行くまでの道のりを示す人がいて、最終的なゴールがどこにあって、そこに向けて自分自身が100%の仕事ができているかどうかを、自分に問いながらやれば良いと思っています。成功させるんだ、と強く思って進まなければ、何をやっても、誰がやっても一緒ではないかとも思います。成功させようとして失敗するのと、何となく一緒になって失敗するのでは、失敗の意味は大きく違います。失敗からしっかり学ぶためにも、全力を出して失敗することが大事なのではないかと思います。
ずっと答えが出ず、結果もついて来ず、変われないところはあるので、すぐにうまく行くとは思えませんし、いろんな失敗をしながら前に進むしかないと思うんですよね。そのためにもタイミング毎に全力を出して失敗することが大事だと思います。
周り人たちに自分の仕事を理解してもらうことが、結果的にはすべてにつながっていく。家族、友人、近所の人、地域の人たちに理解してもらうことを広げて行き、認知してもらうことが唯一できること。それを疎かにして、形ばかりを追いかけていてはいけないのではないか、と個人的には思います」

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泉 誠一