NEXT DREAM 富樫 勇樹の“NBA挑戦” 着実な歩みでつかみ取る夢舞台

NBAダラス・マーベリックスと正式契約を交わし、プレシーズンゲーム参加のために渡米していた富樫 勇樹選手が一時期帰国。今シーズンのNBA開幕に合わせたイベントに登場し、“次なる夢”について語った。

“次なる夢”──既報のとおり、マーベリックスからはウェイブされた。今度は、NBADリーグ・テキサス・レジェンズ入りを果たした上でのコールアップを目指していく。今夏の「NBA挑戦」から一歩一歩着実にステップアップし、大きな手応えを感じている本人のコメントは以下の通り。(2014年10月29日/ニコファーレ:東京・六本木『NBA DREAM TEAM presents 2014-2015 NBA開幕戦 パブリックビューイング』イベントにて)

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スピードで勝負!課題は一つずつ越えていく

──いよいよNBAが開幕しました。ご自身が目指しているNBAですが、実際にキャンプに参加したあと、こうしてNBAの開幕戦を観るというのは、どんな気持ちでしたか?

富樫:そうですね、もちろんNBAの開幕ロスターに入ることを目標にサマーキャンプに参加し、プレシーズンマッチにも行ったんですが、それは(ロスター入り)叶わず帰国しました。今後はNBADリーグのほうでプレイさせていただく予定なんですけど……悔しいという思いはそれほどなくて、NBA入りするまでにはまだ足りないものがたくさんあると思っています。解雇されましたが、それをネガティブには受け取っていませんし、むしろポジティブに受け止めています。これまでのことが認められてDリーグでプレイできるチャンスをいただいたわけですから、気持ちとしてネガティブになってはいないです。

──今回は渡米されて、チームの練習に参加したり、チームの関係者ともコミュニケーションを取ったりしたと思いますが、この短い期間でどんな収穫がありましたか?

富樫:実際にチームの練習を見ることができたのが一番の経験になりました。試合で見る選手と、練習で見る選手というのは違いますから、すごく……いくらNBA選手だといっても、細かなことをやりますし、名選手のほうがより細かなことも意識しながらコーチと話をし、プレイを止めながら練習していました。そういうところが試合で生きてくるんだな、と感じました。

──コーチングスタッフと話しをし、参考になったのはどういうところでしょうか?

富樫:プレシーズンなので移動が多く、あまり話す機会はなかったんですが、僕がDリーグでプレイすることは知っていたので、「すごくいい経験になるはずだから、思い切ってトライするように」ってアドバイスをいただきました。

──目指すNBAは、どれくらい近くなったと感じていますか?

富樫:この夏に「NBA挑戦」ということでサマーリーグに参加し、また今回、プレシーズンゲームに招待されて、少しずつ前進しているとは思います。が、実際にプレイして、まだ上達していかなければならないところがあります。確実に近づいているとは思いますが、まだ遠いかな、と思うところもあります。

── 一歩二歩、少なからず近づいたという手応えはありますか?

富樫:そうですね、前よりは近づいているという実感はあるんですが、今シーズンはまずDリーグでプレイをして、NBAに上がれるような結果を残せればいいと思っています。

──現地に行って、まだ足りないなと感じたのはどんなところでしょうか?

富樫:サマーリーグでもそうでしたが、フィジカル面。行く前からわかっていたんですが、その部分の弱さは感じました。

──今回のキャンプでも、そう感じましたか?

富樫:そこに関しては日本に居るときから感じていたので、改善していかなければならないと思っています。

──フィジカル以外で、もっとこんなところを身に付けなければならないと感じたことはありますか?

富樫:どうでしょう……サマーリーグもそれほど出場時間は長くなかったので、これからもっと経験を積んでいく中で課題が出てくると思います。そのたびに修正したり、レベルアップしたりしていきたいです。

──マーベリックスにはライバルとなるガードの選手もいると思いますが、彼らを目の当たりにして、どのように見えましたか?

富樫:今までは本当に遠い存在だったんですけど、サマーリーグを経験したことで、近づけているという実感がすごくある。もちろん、これまでは画面を通して観ていた選手たちなので、緊張があったというか、最初は少し話しづらかったんですけど(笑)とてもフレンドリーに話しかけてくれて……実際に会ってみると、一緒にプレイしたいという気持ちになりました。

──(NBAに)近づいているというお話がありましたが、自分のプレイの中では何が一番の武器になると思いますか?

富樫:やっぱりスピードでしょう。スピードを生かして、オフェンスはもちろんですけど、ディフェンスでもスピードを生かして相手を苦しめられると思っています。それについても、これから経験していかなければならないと思っています。Dリーグのほうでポジション争いに勝って、出場時間をいっぱいもらって、上(NBA)に行けるよう頑張りたいです。

──これからDリーグのチームとの正式契約に向けて頑張っていくわけですが、どんなプレイをやっていきたいと思っていますか?

富樫:Dリーグでも、昨シーズン、bjリーグでやっていたようなプレイができればと思っています。自分の長所を生かして、積極的にオフェンス、ディフェンスができるようにしたいと思っています。

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NBAと日本代表、オリンピックが子どもの頃からの夢……チャレンジしたい!

──(NBAの話からは外れるんですが)今、日本のバスケット界を引っ張る富樫選手にお聞きしたいのですが、今、国内ではリーグ統一などの問題がなかなか進展していませんが。一選手としてどう感じていますか?

富樫:正直なところ、細かなところまではわからないのですが……実際、東京オリンピックの開催が決まって、自分の中では目標のひとつになりました。決まった時は7年後のことだったんですが、頑張っていこうという気持ちは強く、それがモチベーションになり、頑張れた部分はありますから、今、こういうニュースを聞くのはすごく残念です。バスケをしている以上、(選手にとっては)その国の代表を背負ってプレイするのは夢だと思うので、統一に向けてしっかり話し合っていただいて、良い方向に進めてもらえればと思います。

──NBL、TKbjリーグの統一問題で制裁措置が課せられる可能性があります。これについては日本代表経験がある富樫選手として、どうお考えでしょうか?

富樫:そうですね。今回アジア大会に出場し、20年ぶりの銅メダル獲得とすごく良い方向に進んでいる時にこういうニュースは残念です。来年はオリンピック予選も控えています。代表として活躍したいというのは、ひとつの夢でもあるので、オリンピックの舞台が与えられない、というかチャレンジすらできないというのは残念ですね。

──6年ぐらい前からの問題ですが、ここまで長引いてしまったというのはいかがでしょうか?

富樫:どうなんでしょう!? そこまでの問題だとはあまり知らなくて、最近、新聞に出るようになってから知ったんですけど……ルールも違うし、他にもいろいろ違う部分がある2つのリーグなので、(統一は)難しいとは思います。ですが「一緒にならなければ代表としての活動できない」と言われたら、一緒になるしかないと思いますので、その方向で話が進むんではないかなと……。

──中学生や高校生、大学生などいろいろなチームがある中で、今回の件はどんな影響があるとお考えでしょうか?

富樫:男子はなかなか勝てていない状況で、ニュースにでも取り上げてもらえなくてメジャーになれていないのにまた暗いニュース……子どもたちもモチベーションが無くなってしまうというか、早く解決してもらいたいですね。

──日本バスケットボール協会に要望などはありますか?

富樫:要望!?……細かいことがわからないので何も言えませんが、一緒にならないと日本代表として活動させてもらえないということなら、そうするしかないと思います。どっちのリーグも何かを変えていくしかないと思います。男子も女子も、すごく良い方向で(代表として)いけると思うので、早くリーグが一緒になって欲しいですね。

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話を戻して……NBA入りに向けての新たな決意

──今日、ダラス・マーベリックvsサンアントニオ・スパーズの試合をモニターで観戦されましたが、どんなお気持ちでご覧になったでしょうか?

富樫:もちろんマブスのプレシーズンに行っていたわけですし、解雇されましたが、悔しいという気持ちはなくて、単純にNBAを楽しめました(笑)

──今度はモニターを観るのではなく、モニターの中でプレイすることを目指していくわけですが、自分がプレイしているイメージはできましたか?

富樫:試合を観ている時はイメージしていませんが、実際、プレシーズンで観ていた時は、「このコートでプレイしたい」と思いました。

──向こうでは、小さい選手たちのプレイを意識していましたか?

富樫:今回アメリカに行った際、コーチ陣から小さい選手のビデオを観たほうが良いとアドバイスを受けました。アイザイア・トーマス(175cm:フェニックス・サンズ)や“JJ”バレア(183cm:ダラス・マーベリックス)、クリス・ポール(183cm:ロサンゼルス・クリッパーズ)選手などの動画をたくさん観ました。アイザイアは、本当は170cm前後だと聞くこともあるので、そういう選手が平均20点ぐらい取り、オールスターに出てもおかしくないくらいの活躍をしているわけですから、「自分にできないことではない」と感じています。

──課題のフィジカル面を改善するために現在取り組んでいること、あるいはこれから取り組むことを教えてください?

富樫:フィジカルの課題は食事の面でも改善できると思っています。11月1日から味の素さんと契約させていただいて、栄養指導やアミノバイタルの提供などを受けることになりました。栄養のことを考えながら、体重を少しずつ増やし、70kgで走れる体になることが目標なので、味の素さんと一緒に取り組んでいく予定です。これまで一人でやってもなかなか増えずにいたので、味の素さんのサポートによって、少しずつ改善できると思います。Dリーグだと遠征が大変で、食事や栄養の摂り方など難しい面もありますが、体重を落とさず、むしろ増やして70kgに近づければいいと思っています。

──(Dリーグで入団を目指す)テキサス・レジェンズには同じぐらいの身長で活躍されたスパッド・ウェブさんがいらっしゃると思いますが、お会いになりましたか? 会ったらどんなアドバイスが欲しいですか?

富樫:(まだ会ってはいませんが)アドバイスですか!?……どんな、というのはないですが、実際に自分のプレイを見てもらってアドバイスをいただきたいですね。やはり、あの身長で活躍されていたわけですから、すごく助けになると思います。

──最後に、改めて今後に向けての抱負をお願いします。

富樫:今シーズンはDリーグで結果を残し、少しでも(NBA入りに)近づけるよう頑張ります。シーズン中にコールアップされ、NBAに上がれるチャンスも毎日のようにあると思うので、一試合一試合大切にプレイしたいと思います。

富樫選手は11月2日に再渡米し、3日から始まるテキサス・レジェンズのキャンプに合流する。その後、レジェンズの広報発表をもって正式な入団となる。
おそらく、渡米後も小柄なことが話題となり、メディアから質問を受けることになるであろう富樫選手。だが、その夢の大きさはとてつもなくデカい。
「僕みたいに中卒でもいいし、高卒でもいいから、海外でチャレンジする選手が増えれば、日本のバスケも変わるかも……」とコメントした富樫選手。まだまだこれからたくさんの課題が見つかるだろう。でも、それは自分の特長(スピード)を最大限に生かして突破していく。シーズン中に再びビッグニュースが届くことを期待し、皆で精一杯の声援を送ろう。

NBA Dリーグ
テキサス・レジェンズ

文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。