U24から日本のスタンダードを上げていく使命(日本学生選抜チーム 陸川 章ヘッドコーチ)

大学生の日韓定期戦として毎年行われている「第40回李相佰盃日韓学生バスケットボール競技大会(以下、李相佰盃)」が5月19日(金)から3日間、東京・大田区総合体育館にて開催される(今年は9年ぶりに女子戦も復活)。今年2月、イランと対戦した国際強化試合で日本代表デビューを果たした馬場雄大選手(筑波大学4年)をエースに、特別指定選手としてBリーグのコートに立った杉浦佑成選手 (筑波大学4年/サンロッカーズ渋谷)や保岡龍斗選手 (江戸川大学4年/秋田ノーザンハピネッツ)、中村太地選手 (法政大学2年/シーホース三河)らが日本学生選抜チームに候補選手として選出されている。

2月後半から3週間にわたり、セルビアからやって来たルカ・パヴィチェヴィッチテクニカルアドバイザーの指導の下、スプリングキャンプが開催された。世界基準のバスケットを体得したのは選手ばかりではない。陸川章ヘッドコーチも多くのことを学び、新しい発見もあった貴重な機会となった。
「最初の頃は参加人数も多かったために、ルカが指導したグループの練習を見て学び、その後にすぐさま次のグループに対して私たちが教えていました。何かを試されているぐらい集中して学び、それを復習するように選手たちに教えられたことは一番良い勉強になりました。確かにしんどかったです。それでも、ルカから学んだ3週間はかけがえのないほど濃い時間となりました」

これまでの日本では例がないほど細かく、丁寧な指導には定評がある。
「何のためにこの練習をするのかが本当に明確です。これまで見逃していたことや、なるほどこういうことを言ってるのかなど、いろんなことが分かってきました」
全ての練習を通して見えてきた勝利への道筋。スプリングキャンプ後に行われた韓国遠征で、パヴィチェヴィッチテクニカルアドバイザーの練習がいかに的確であったかをさらに知ることになる。

練習でルカが言ってたことが、試合を通じて「なるほど」と思うほどつながった

■日本学生選抜チーム 韓国遠征 試合結果
GAME1:日本学生選抜●62-73〇安養KGC
GAME2:日本学生選抜〇78-61●SKソウルナイツ
GAME3:日本学生選抜〇60-59●LG
GAME4:日本学生選抜●62-73〇ソウルサムスンサンダース
GAME5:日本学生選抜〇79-75●仁川電子ランド

韓国プロリーグKBLチームの育成リーグでプレーする選手たちと5試合を戦い、3勝2敗と勝ち越すことができた。
「こちらのオフェンスに対して、試合中に相手のディフェンスの対応が変わっていきます。でも、ルカはそれに対応すべきポジションや技術をスプリングキャンプ中に教えてくれていました。瞬時に出せるまでにはまだ至ってませんが、あの時にルカはこう言ってたよな、そうだ待てば良いんだ、こういう場合はスペースを取ろうなど、練習で言っていたことがなるほどと思うほどつながったわけです。スプリングキャンプでいろんな練習をしてきたことがゲームを通し、特にうまくいかなかったときにこそ、こういう時にはあの練習を出せば良いんだという答えが見えてきました」

一番の成果として、「オフェンスがうまくいかなくても、絶対にディフェンスだけはソリッド(堅く)にプレーすることを崩さない。だから、最後まで競った中で勝ち切れた試合ができたわけです。まず基本となるのは簡単に破られないように、堅く守るソリッドディフェンス」を挙げ、このチームのベースとなった。「細かいところこそ手を抜かず、気を抜かずにやらなければいけない」と言う陸川ヘッドコーチは、「細部に神は宿る」という言葉を用いて実感していた。

テンションを上げ、エネルギーを持って全部を出して勝利をつかみに行く

40回を数える李相佰盃だが、過去の戦績は30勝82敗3分と大きく負け越している。3試合を戦う中で勝ち越せたのは6回しかなく、そのうち3連勝できたのは1990年の1回だけ。逆に3連敗を喫したのは15回もあった。陸川ヘッドコーチ自身も選手として出場した経験がある。日本体育大学3年生だった1982年大会は2勝1敗で勝利したが、4年生となった翌年は3連敗に終わっている。

「昔は韓国より日本の方が大きかったですが、今では韓国の方が大きく、パワーもあります。韓国バスケットのベースとなるのはシューター軍団。さらにバスケットの俊敏性や上手さは韓国の選手の方が上手です」とその強さを挙げた。だが、今年は新たな武器を手にし、手応えを感じてもいる。
「ルカに教わったディフェンスでどう守るか、相手の長所をどう止めるかに対する意識づけはできるようになってきました。我々の方が、力が上かと言えば絶対にそんなことはありません。でも、1点でも上回って勝つための準備はしています。スプリングキャンプでルカに学んだことと、今こうして積み上げていることをベースに、それを崩さずに我々が信じたことを全部出せるようにしたいです」

パヴィチェヴィッチテクニカルアドバイザーがディフェンスの課題を克服すべきゴールとして、「INTENSITY(強度)」「AGGRESSIVE(積極性)」「SOLIDNESS(堅さ)」の3本柱を掲げている。「ルカからトランジションディフェンス、ピックディフェンス、スクリーンディフェンスを習いましたが、それら全てができてこそのソリッドディフェンスです。ルカの練習にはちゃんとシナリオがあると感じています」とロジカルな練習を徹底し、12年ぶりとなる李相佰盃での勝ち越しに挑む。

「INTENSITY、AGGRESSIVE、SOLIDNESSというテーマでずっと強化してきたので、観に来てくれた方にもそれが伝わるような姿勢をゲーム中だけではなく全てに対して出して欲しいです。エネルギーが弾けるようなゲームにしたいです。コートにいる選手もベンチもそうですし、私もそうです。もちろん全部の試合に勝って優勝するのが目標ですが、結果はどうなるか分かりません。それでも、ルカに教わったことや韓国遠征での経験も踏まえて、全部を出し切りたい。ルカは、『U24から日本のスタンダードを上げていきたい』と言ってました。それは将来のことではなく、今、我々から上げていきたい。そういうゲームをお見せしたいです」

コートでもベンチでも、テンション上げっぱなしのエネルギーで韓国に立ち向かわなければならない。その熱さを出せれば、自ずと観客席にも飛び火し、会場での声援も大きくなることだろう。

第40回李相佰盃日韓学生バスケットボール競技大会
会場:大田区総合体育館

5月19日(金) 16:00 女子戦/18:00 男子戦
5月20日(土) 13:00 女子戦/15:00 男子戦
5月21日(日) 13:00 女子戦/15:00 男子戦

全日本大学バスケットボール連盟
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文・写真 泉 誠一