最初で最後の“JAPAN”(日本学生選抜#6バランスキー・ザック選手)

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サッカー・ワールドカップがクライマックスを迎えつつある今、日本で「ザック」といえばサッカー日本代表を率いたアルベルト・ザッケローニをすぐに思い浮かべる方が多いだろう。しかし日本のバスケット界にはザッケローニよりも以前から「ザック」が活躍している。東海大学4年のバランスキー・ザックである。

国立代々木競技場第二体育館で開幕した「関東大学バスケットボール連盟 創立90周年記念試合 三菱電機カップ」。日本学生選抜とカナダ・ビクトリア大学が対戦するその試合に、ザックはアンダーカテゴリーを含めて初めて“JAPAN”のユニフォームに袖を通した。両親ともにアメリカ人で、自身もアメリカ国籍を持つザックは帰化をしない限り日本代表に選ばれることはない。しかし今大会はそうした国籍を抜きにして、日本の大学に通い、日本の大学バスケット界でプレイする選手として、日本の学生選抜チームの一員に選ばれた。

univ140706b「正直なところ、ボクは日本国籍ではないので、少し複雑な思いはあります。でも22年間生きてきたうちの16年間を日本で過ごしていて、友だちからも『日本人みたいだ』と言われるし、だからこうした素晴らしい経験ができてすごく嬉しいです。もちろんやるからには勝ちたいと思っています。(日本国籍の)みんなとは背負うものが違うかもしれないけど、戦う気持ちはみんなと一緒です」

JAPANのユニフォームを着ることについて、ザックはそう言っている。日本で生まれ、4歳から10歳までの6年間以外はずっと日本に住んでいて、日本語も流暢。長野・東海大三高から東海大に進み、今やチームに欠かすことのできないインサイドプレイヤーとして主戦力の活躍をしている。

そんなザックがいつもはライバルとしてしのぎを削り合っている他大学の仲間たちと、同じユニフォームを着てプレイする。日本人同士であれば、過去にそうした経験をしていたり、もしくは未来にもそうしたチャンスがあるだろう。また同じくセネガル国籍で今大会のメンバー入りをしている拓殖大学のジョフ・チェイカ・アハマド・バンバは2年生で、在学中にこうした大会が行われれば再びJAPANの一員になる可能性がゼロではない。しかし国籍を変える予定のないザックにとっては、これが最初で最後の“JAPAN”になる可能性が極めて高いのだ。

「このチームは東海大学とは違う楽しさあります。みんな、それぞれの大学ではスターですけど、ここに来るとみんなが自分のエゴを捨てて、チームのために自分は何ができるのかを考えています。スタメンとか、ベンチとか関係なく、みんなで自分の役割をやって、高め合っているんです」

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エゴを出さず、チームで高め合うことを楽しむ――穿った見方をすると、外国人選手はエゴを出してでも、自分をアピールしたいと思う選手が多い気がする。むろんすべての選手がそうではないが、野心にあふれる若い選手はそうした面を強く持っているように思う。ここでその是非を問うつもりはないが、ザックの言葉を聞くと、彼はやはりチームワークを重んじる日本的な資質を持ち合わせていることがわかる。彼は自分自身の役割についてもこう言っている。

univ140706d「日本学生選抜を率いる池内(泰明)ヘッドコーチのバスケはオフェンス中心なんですけど、そうするとみんなディフェンスでのコミュニケーションが少なくなってしまうので、自分はそうしたコミュニケーションの部分で貢献したいと思います。そしてみんなはオフェンスがすごくうまい選手たちなので、自分はちょっと一歩引くというか、みんなを生かす感じでプレイしようと思っています」

5日におこなわれた第1戦で日本学生選抜は【80-84】で逆転負けを喫している。ザックはベンチから18分出場し、5得点・3リバウンド。

「相手は全体的にサイズとパワーがあって、特に12番のセンターには何本もリバウンドを取られて、そこから点数をつなげられました。彼を1人で守ることは難しいと思うので、みんなで潰しにいって、ローテーションをして、全員でリバウンドを取る。そこから速攻で走れば勝つチャンスはあると思います。明日は切り替えて頑張ります」

エゴとは遠いところにある日本人的なアメリカ人。いや、もはや日本人だとか、アメリカ人だとか、そうした国籍を超えて、ザックはチームのバランスを絶妙に取っている。

バランスキー・ザックが“JAPAN”の一員として戦う最後の試合は、6日の13時に代々木第二体育館でティップオフされる。

第1戦の試合結果やチケット情報などの詳細は関東大学バスケットボール連盟オフィシャルサイトへ

三上 太