ネガティブな「たら、れば」はもう要らない。(男子バスケットボール日本代表チーム)

2月22日、横浜国際プールにて行われたFIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区第1次予選(Window2)において、日本代表はチャイニーズ・タイペイに69-70で敗れた。まだ勝ち星がない両チームにとって是が非でも手に入れたい1勝。ホームで迎える日本にとってはなおのこと『勝たなくてはならない』ゲームだったと言えるだろう。それだけに僅か1点差で逃した勝利のショックは大きく、ついつい「たら、れば」を考えてしまうファンも多かったのではないか。

もし、あのオフェンスリバウンドが取れていれば、もし、あそこでルーズボールをものにできていれば、もし、残り44秒で得たフリースローを成功させていれば…。

中でも残り8秒、66-69の場面で得たフリースローの1本目を篠山竜青が外したことで「2本目を意図的に外し、オフェンスリバウンドを取り3Pシュートを狙う選択をした」というフリオ・ラマスヘッドコーチの作戦は多くの議論を生んだ。残り2秒に辻直人の3Pシュートで1点差まで迫っただけに、オフェンスリバウンドを奪取できる確率を考えれば、あそこはきっちり1本いれておくべきだった。いや、それは結果論で、ラマスヘッドコーチの選択が間違っていたとは言い切れない。賛否両論、聞こえてくるさまざまな声。が、それも終わってみれば全てが「たら、れば」であり、誰もがもやもやとした気持ちを抱えたまま正解には辿りつけない。

はっきりわかっているのは『1点差で日本が敗れた』ということだけだ。フィールドゴール37.1%、(チャイニーズ・タイペイ44.1%)、リバウンド37本(チャイニーズ・タイペイ46本)という数字を残して日本は敗れた。もちろん、試合には運、不運もあるし、試合後に篠山が語った「ミドルレンジや外角ゴールについてはノーマークを作れていたが、試合の出だしになかなかシュートが入らなかった」という側面があったのも事実だろう。が、残した数字が日本の大きな課題となり、行く道をさらに険しくしたこともまた事実だ。この敗戦により、日本が崖っぷちのそのまた崖っぷちに立たされたことは否めない。

しかし、同時にこの敗戦の全てがネガティブなものであったわけではない。試合の中には今後の道を照らす”光”を感じることもできた。その1つは1Q残り3分からコートに出て、ためらいのないロングパスでアイラ・ブラアンのダンクシュートを演出した宇都直輝の存在だ。Window1では思うようなプレーができなかった宇都は「どんな状況であっても自分がコートに出たら自分のプレーをする。そう決めて準備はしていた」と言う。ポイントガードとしてはチームで1番高い191cmという身長をアドバンテージにすること。ブロックを恐れず、ペイントエリアに果敢にアタックすること。何よりも自分自身が躍動し、チームに勢いをつけること。心に決めた強い思いがこの大一番で光を放った。強気の姿勢を示したのはオフェンスだけではなく、守ってもまたテイクチャージを奪うなど見る者をも奪い立たせるエネルギッシュなプレーで日本に流れを呼び込んだと言える。

そして、もう1人、この試合を通して存在感を見せつけたのはシューター辻直人だ。1Q残り2分にコートに出ると、すぐに放ったファーストシュートは外れたものの「タッチは悪くなかったし、(今日は)イケると思った」という感触を得て、2Q開始直後にまずは1本目の3Pシュートをゴールイン。そこから始まった『辻劇場』の主役は、この試合8本の3Pシュートを含め26得点をマークする活躍を見せた。

試合後、2人が口にしたのは「今日はリズムを変えるという意味で少しは貢献できた手応えはある」(宇都)、「久々の代表戦で結果を出せたことは自信につながった」(辻)という1つの達成感。思えば、それを生み出したのは「初めて選ばれた日本代表の舞台で自分を出し切ってみせる」(宇都)「ケガで落選した前回の分も必ず存在感を示してみせる」(辻)というそれぞれの負けじ魂だったのかもしれない。

それでも敗戦を振り返れば手放しで喜べない自分がいる。「自分(のプレー)ができたとしても、ポイントガードとしてチームを勝たせられなくては意味がない」「勝敗を分けたのは勝負ところでのリバウンドとルーズボール。そこは自分を含めまだまだだと思う」――インタビューを締めくくることばは同様に厳しかった。が、だからこそ伝わってきたのは「次こそは勝ってみせる」という決意だった。

今回の敗戦で日本に点った黄色信号はチカチカと目に痛い。だが、これで全てが終わったわけではないのだ。チャイニーズ・タイペイが次のオーストラリア戦とフィリピン戦に敗れるという前提があるにせよ、日本はチャイニーズ・タイペイとの次戦に2点差以上を付けて勝つことで2次予選への道は開ける。いや、そんな前提でありきで語るより、いち早く黄信号の点灯消すためには直近のフィリピン戦に勝てばよい。アウェーで迎えるフィリピン戦は当然のごとくタフなゲームになると予想されるが、大事なのは3連敗のネガティブなイメージを振り払うこと。敗戦の中で感じられた光、敗戦の中から学べたもの、それは必ず味方になるはずだ。フィリピン戦は2月25日、20:30(日本時間)ティップオフ。5000人を超す観客で真っ赤に染まった横浜国際プールの光景を胸に、敵地のコートで「勝ちに行く」AKATSUKI FIVEの姿を見せてほしい。

文・松原貴実 写真・吉田宗彦