【女子アジアカップレポート】勢いを取り戻してきた“キング”の咆哮(準々決勝:日本○73-57●チャイニーズ・タイペイ)

序盤の重たい展開のなかでひとり気を吐き、後半はさらにギアを上げることでチームを勝利に導いた。これで女子日本代表は来年度のワールドカップへの出場権獲得である。そんな女子アジアカップ2017のクウォーターファイナル、チャイニーズタイペイ戦で長岡萌映子は久々に彼女らしい“キング”ぶりを見せてくれた。

前日、大会の休息日に選手が宿泊するホテルで彼女に話を聞く機会があった。予選ラウンドでもうひとつ波に乗り切れていないように見えたことを伝えると、長岡自身もそれを認めて、こう返してきた。
「一番はシュートが入らないことのダメージが大きい。リズムの悪いシュートはもちろんだけど、いい形で打っているシュートまで入りそうにないから、ダメージが大きいんです」

予選ラウンドはフィリピン戦が11得点、韓国戦も13得点としながら、肝心のオーストラリア戦では6得点に終わっている。その結果が彼女の頭をもたげさせていたのだろう。
むろん予選ラウンドでも彼女らしいプレイは随所に出ていた。強引に突破し、シュートをねじ込むドライブや、1対1からのフェイドアウェイは彼女の持ち味であり、相手にダメージを与えるのに十分なプレイでもある。だがそうしたプレイを出しながらも、調子が上向かない。長続きしない。花火のようにパッと輝きを見せたかと思うと、次の花火がなかなか打ち上らない、誰もが少しフラストレーションを溜めるような状態だった。

「原因は自分でもあまりよくわからないんです。ただようやく日本代表のスタートでコートに立つチャンスをつかんだ今だからこそ、結果を出したいと焦っているのかなと思うところはあります。今日(大会休息日)1日空いて、いろんなことに思いを巡らせたとき、そうなのかなって思ったりもするんです」
ホテルのソファで、長岡はそんなことを吐露していた。

それが、勝てばワールドカップへの出場権を獲得できるチャイニーズタイペイ戦で、いきなり3ポイントシュートを沈めた。次の攻撃こそ相手のセンター、196センチのBAO Hsi-Leにブロックされてしまうが、それでも攻撃の手を緩めず、長岡は第1Qだけで両チームトップの9得点をあげている。
第2Qはチームメイトの水島沙紀がベンチから勢いのあるプレイを連発したため、長岡は少し息を潜めた。しかしハーフタイムに「得点には貪欲に絡みたい」と気持ちを入れ直したことで、後半さらにギアを引き上げ、最終的に28得点をあげている。

長岡は今日の自分のプレイをこう振り返る。
「自分のプレイは“気持ち”が大事だと思っていて、今日はその気持ちを出せたことがよかったです」
前日まではその“気持ち”さえも掴みそびれていたが、一方で彼女は1つの試合、1つのプレイといった、ちょっとしたきっかけがあれば、失いかけていた気持ちさえも掴み直せる、そうした瞬発力を持った選手でもあるのだ。
「自分がいいプレイをしているときというのは、いい意味で自分勝手になっているとき」
自らがそう認めるときの彼女は、もはやアンストッパブルだ。そう簡単には止まらない。

さらに今日の長岡はランニングプレイでもポテンシャルを発揮した。試合後、トム・ホーバスヘッドコーチも「今日のモエコはしつこく走った。疲れていても走ってくれた。こうしたしつこいバスケットが今の日本には必要です」と長岡の走りを称賛していたのだ。
その点についても彼女はこう言及している。
「チームとして一昨日のオーストラリア戦で足りなかったのは走るプレイ。それが出せなかったから自分も波に乗れなかったし、チームも乗れなかった。だから今日はそれをやろうと考えていて、それが結果につながってよかったです」

ようやく彼女らしいプレイを表現し始めた長岡だが、今日の結果に満足はしていないとキッパリ言う。
「今日の出来を明日の中国戦、次のオーストラリア戦で出せてこそホンモノだと思っています。まだまだ満足はしていません」
こうして鼻息荒く、王様然とした態度で語るときの長岡は、いい意味で調子に乗っている。慢心は決して良くないが、アジアカップのような短期決戦ではいかに調子に乗って、いかに自分に勢いを与えるかが非常に重要となる。このまま余計なことは考えず、ただただゴールにボールを通過させることだけを考えて、突き進んでほしい。それができるだけのポテンシャルを彼女は持ち合わせている。積み重ねたゴールの先に日本の大会3連覇と、彼女が目指している“日本のエース”の座が見えてくる。

FIBA 女子アジアカップ2017

文・写真 三上 太