新たな戦力を得た日本代表が挑む『起死回生』の大舞台

韓国代表を招き、6月15日(東京)、17日(宮城)に行われた男子代表国際強化試合はアメリカから戻った八村塁と日本に帰化したニック・ファジーカスの“お披露目„の大会でもあった。ポスターとなった八村塁の写真の上には大きく『希望』の文字、『希望が帰ってくる』のキャッチコピーは大会後に開催されるFIBAワールドカップアジア予選Window3を見据えてのものだろう。全敗で後がない日本にとって、八村とファジーカスは文字通り希望をもたらす救世主となれるのか。この2連戦をともに戦った3人の選手たちに新戦力を得た手応えとその中で担うそれぞれの役割について聞いた。

手に入れた武器をどう磨いていくか(#15竹内譲次)

「彼らは日本が手に入れた大きな武器だと思います」――ファジーカスと八村について聞かれた竹内譲次は迷いのない口調でそう答えた。これまで以上に存在感を見せつけたと言える第1戦の10得点、8リバウンド、4ブロクショットという数字も「(2人の加入が)自分の刺激になっているし、モチベーションになっている」ことと無縁ではないだろう。「馬場(雄大)から、今日の譲次さんは足がめっちゃ動いてましたねと言われました」と笑いながら、試合後「まだ体力が残っている」という感触があるのもうれしい変化の1つだ。210cmのファジーカスと203cmの八村の加入により自身の負担が軽減されたことは「間違いない」と感じている。が、その一方で2人に頼り過ぎてはいけないという思いは強い。「塁は1人でクリエイトできる選手ですが、競い合うことでその能力を自分がさらに引き出していけたらいいと思っています。また、リーグで何度も戦っているファジーカスのいいところは十分わかっているので、これからより良い関係性を築いていけば互いの戦力も上がっていくはずです」――手に入れた2人の戦力をプラス2とはせず、プラス3、プラス4と高めていくこと。それが長く代表チームに身を置く自分の役割だと考えている。

2人を生かすことで周りも生きる(#25古川孝敏)

2試合を通じ持ち前のハードなディフェンスでチームを支えたのは古川孝敏だ。所属する琉球ゴールデンキングスのエースであり、当然シューターとしてプライドもあるだろうが、「ゲーム中は今どんなプレーが必要なのか、自分が担うべき役割はなんなのかを常に考えています」と言い切る。「シュートに関してはあまり我を出し過ぎないよう意識しました。スペーシングを見ながらチャンスがあったら狙っていくという感じですね。それより心がけていたのは周りを生かすための動きです。声を出してチームを鼓舞することもそうですし、気が付いたことはすぐにみんなに伝え、悪い流れを断ち切るのも仕事だと思っています」
八村とファジーカスについては「あれだけ得点力のある2人が入ってきたことはすごく大きい」としながらも「かといって、チームというのはそんな簡単にできるものではない」と、ベテランらしい発言。「能力の高い選手が入ってきたら、その能力を周りがいかに引き出すか、いかにいい流れの中でプレーさせてあげられるかが重要になります」そのためには身を挺し、泥臭く、自分の仕事を貫く覚悟だ。「不可欠なのはしっかりコミュニケーションを取ること。彼らが生きれば周りも生きます」。自身の言にあるように新たなチームつくりはそう簡単ではないだろう。「だけど…」と、古川はこう続けた。「だからこそ楽しみも大きいんですよ」

得点力のある2人の加入は大きなプラス要素(#3辻直人)

ピュアシューターとして得点力を求められる辻直人は、やはり八村、ファジーカスの得点力に注目する。「点を取ってくれる人たちが入ってきたのはすごく心強いですよ。チームにとって大きなプラス要素ですね」。だが、無論そのことでシューターとしての自分の役割が変わるわけではない。「一番よくないのは、たとえばコーナーなんかで傍観者になってしまうことです。常にボールに触ることを意識して、その中でシュートチャンスをうかがっていかないと」。インサイドの強みが増したことで、定評のあるアシストも出しやすくなった。インサイド アウトから放つシュートのイメージもさらに明確になった気がする。コート外でも川崎ブレイブサンダースのチームメイトであるファジーカスは言うに及ばず、「天然素材の塁をいじるのは楽しいですよ」と、八村とのコミュニケーションも万全のようだ。だが、Window3が間近に迫った今、自分が最終メンバーに残れるかには危機感を持つ。シューターとしての貢献度はもちろんだが「目下一番の課題はディフェンスです。コートに出ている間はファウルを恐れないぐらいハードなディフェンスをやり切らないとプレータイムは勝ち取れないと思っています」。徐々に上がってきているというコンディションを味方にして“負けられない舞台„を目指すつもりだ。

JAPANのユニフォームにプライドを持ち、
チームメイトとともにチャレンジしたい(#22ニック・ファジーカス)

強化試合の結果は1勝1敗。88-80で勝利した第1戦ではファジーカスがゲームハイの28得点、13リバウンド、八村はそれに次ぐ17得点、7リバウンドと期待を裏切らない活躍を見せた。が、第2戦は韓国の攻め気あふれるバスケットに終始圧倒され99点を献上。ディフェンスの課題を残したま87-99で完敗した。この試合で徹底マークにあったファジーカスは12得点に終わったが、それでも「この2連戦はとても楽しかった」と言う。「僕も八村も得点能力は高く、ゲームを支配する力はあると思っています。ただ大事なのはその役割をこなしながら“勝つ„ということ。他のメンバーにもタレントがあり、スペースが広く取れるしゲームの流れが読みやすいと感じています。あとはさらにチームケミストリーをしっかりさせていくことですね。私はJAPANのユニフォームにプライドを持っているし、それを身に付けられることを光栄だと思っています。次の試合になるオーストラリア戦は大きなチャレンジでもありますが、私はチャレンジすることが大好きなんです。このチームの仲間たちといいチャレンジをしたい。そして、勝利を手にしたいです」

「僕たちが手にした大きな武器」(竹内)は、それを「周りが生かすこと」(古川)で、さらに「大きなプラス要素」(辻)になる。29日に控えたオーストラリア戦がタフな戦いになることは必至だが、そこで日本がどんな『希望』を生み出すのか。チーム一丸となった起死回生へのチャレンジに期待したい。

FIBAバスケットボールワールドカップアジア地区1次予選
Window3 試合予定

■6月29日(於千葉ポートアリーナ)
日本―オーストラリア

■7月2日(於チャイニーズタイペイ)
チャイニーズタイペイー日本

文・松原貴実 写真・安井麻実