3W(トリプルダブル):『本当に今、バスケが大好きになっちゃいました』GYMRATS 伊比蘭子選手

「蘭子、今なにしてんの?一緒に3×3やろうよ!」
ショッピングにでも行くかのように、軽く誘ってきたのは元女子3×3日本代表の花田有衣選手だった。2017年6月、オリンピック種目への採用が決まった直後、FIBA 3×3ワールドカップに出場した花田選手。もともと5人制バスケで活躍し、Wリーグのジャパンエナジー(現JX-ENEOS)サンフラワーズを経て、アメリカや中国の女子プロバスケリーグでもプレーした経験を持つ。そんな日本代表が目をつけ、3×3への道へと引き込んだのが伊比蘭子選手だ。

その名を覚えている方も多いことだろう。女子3×3バスケットボールトーナメント「3W」の取材時、MCがその名を呼び、ハッとさせられた。中学1年のときから新潟県選抜メンバーとして活躍。その後は桜花学園、拓殖大学と名門校でプレーしており、その名はハッキリと覚えていた。伊比選手以外にも学生時代に見ていた選手たちがバスケに励む姿をまた見られることがうれしく、それも3×3の魅力である。

3×3との出会いによって充実しはじめた社会人生活

今春、拓殖大学を卒業し、会社員として新生活をスタートさせた伊比選手。実業団チームへ進みバスケを続ける道もあったが、性格上「仕事とバスケのどっちかを全力でやりたかったので、普通に働くことを決めました」。これまで激しい競争に身を投じ、日本一を目指す環境にいた場合、引退後に次の目標を見つけるのが難しいとはよく聞く話である。伊比選手も同じように、「目標を立てることができなかったです」。全力を注ぐため、ひとつに絞った決断だったが、充実感は得られていなかった。

そんなときである。花田選手から3×3への誘いを受けたことで生活が一変した。
「新たな目標ができましたし、そのためにしっかり働いてお金を稼ごうという意欲も出て、今は仕事もバスケも両方楽しくできています」

昨年、女子3×3日本代表として活躍した花田選手だが、当時から「後進を育てていきたい」と話し、すでにコーチとしても長く活躍している。新たにできた3×3の選手育成には尽力しており、伊比選手との最初の出会いもコーチとしてだった。

「大学生による3×3の世界大会(3×3 FISU World University League / 2017年9月)があり、拓殖大学として出場することになりました。本当にラッキーでしたが、そのときにメンバーとして選んでいただいたコーチが有衣さんです」

そのときは5試合を行い、2勝しか挙げられず、伊比選手自身もなかなか得点に絡むことはなかった。学生時代、178cmの伊比選手のプレースタイルは、「センターだったのでドリブルを突くことなどもなかったですし、正直そういう練習もあまりしてきませんでした」と言う。同じような境遇だった方も多いことだろう。伊比選手も1から学ばなければならなかった。

「3×3をはじめてからハンドリングやドリブルの練習をし、どんどんできるようになってくる自分がもうすごくうれしくて、そこでハマっちゃいました。私でも練習すれば、こんな技ができるんだぁって!(笑)」

急速なプレースタイルの変化に対し、仲間たちには驚かれるそうだ。何より自分自身がその成長を喜び、自信をつけている。今夏はYAIZU GR UNITEDの一員として、花田選手とともに3×3 JAPAN TOURに参戦し、ファイナルにも出場した。優勝したTACHIKAWA DICEに準決勝で敗れたが、ベスト4の好成績を収めている。しかし、「有衣さんがいるのに負けてしまって本当に悔しかったし、辛くなることも多かったです」と、真剣に向き合っているからこその感情が沸いた。「3×3に誘ってもらった有衣さんのためにも、一緒に戦っている仲間のためにも、笑顔になれるようにがんばりたい」と前を向き、現在「3W」にて成長した姿を見せている。

成長を実感しているからこそ、目標は高く!

社会人になるのを機に袂を分かつはずだったが、「本当に今、バスケが大好きになっちゃいました」と笑顔が弾けた。簡単に縁が切れないのも、バスケの魅力である。3×3に出会い、その舞台にはOGとはいえWリーグ選手たちが集う。「今までの自分にとっては考えられないし、本当に雲の上にいる存在の選手たちと一緒にプレーができている環境が本当にありがたいです。とはいえ、負けたくないので、戦いながらいろんなことを吸収しながら、良いところはどんどん盗んでいきたいです」と貪欲だ。

都内で働く伊比選手だが、週末にはGYMRATSの練習が行われている静岡遠征も厭わない。平日は、「やさしく受け入れていただいています」という同じ桜花学園出身の先輩である桂葵選手(SHONAN SUNS)と一緒に練習しながら、技を磨いている。

インサイドプレーヤーだった伊比選手が同じバスケとはいえ、3人しかいない3×3ではドリブルを突き、積極的にゴールに向かい、本来持つバスケの魅力をはじめて実感している。
「プレーの幅がものすごく広がりました。5人制ではセンターだった選手がドリブルをしたり、3Pシュートを打ったり、ドライブをしたり、こんなプレーができるんだって新たな発見ができ、すごく楽しいです。やっていても、見ている人も楽しい。3×3は楽しいことがいっぱいあります」

一つひとつの課題をクリアしながら上達しはじめている伊比選手。東京オリンピックに話題を向ければ、「ゼロでは全然ないです」と意欲を見せた。
「自分のできることを一生懸命がんばって、チャンスがあればそこはものにしたいです」

今後のスケジュール

11月10日(土) 渋谷ストリーム
11月17日(土) ダイバーシティ東京

3W -3×3 Women’s Basketball Games-

文・写真 泉 誠一