スプリングトーナメントレポート①「上位チームと戦った経験は次に向かう財産になる」(上武大・近藤洋樹コーチ)

第67回関東大学バスケットボール選手権(通称スプリングトーナメント)が4月21日からスタートした。新チームとなって初めてのこの大会は、例年『今後の課題と指針』を探る場所としての意味も持つ。また、下部リーグのチームにとってはリーグの垣根を超え格上のチームと対戦する貴重な機会となる。5月1日、優勝候補の一角に挙げられる東海大と対戦した上武大学もその1つだ。「まずは経験を積むこと。下部リーグにはない高さやフィジカルの強さ、激しいディフェンスもリバウンド争いもすべてが勉強になります」と語るのは近藤洋樹コーチ。69-91で敗れはしたものの第1Qは22-24と互角の戦いを見せた。

「なんとか一桁差で前半を折り返したいと思い、そのゲームプランも立てていたのですが、やはり身体の強さ、ディフェンスのハードさに絶対的な差が出てしまいました。でも、こうした経験が積めたことは今年2部リーグで戦う財産になると思います」

近藤コーチが上武大のコーチに就任したのは6年前。当時チームはまだ4部リーグに所属していたが、その年3位で出場した入替戦を勝ち抜き3部昇格を決めた。しかし、翌年には再び4部に降格。
「チーム力が上向いたのはアメリカ人のマーテル(テイラーバロン)が入ってきてからですね。1年上にいた湊(俊樹)とともにチームの核になりました。4部から3部、そして、去年2部に昇格できたのもこの2人の存在が大きかったと思います」

マーテル・テイラーバロン選手については昨年このサイトでも取り上げたが、本来は今年4年生となる彼はアメリカの短大で1年プレーしていたこと(大学では通算4年間しかプレーできないという国際ルールがある)で、1年早い引退を余儀なくされた。もう1人の”核”だった湊選手も卒業した今年は新たなチーム作りを目指しつつ、初めての2部の舞台で戦うことになる。

「今年の柱と考えているのは細川一輝です。今日の東海大戦を見ると、ゴール下では相手の身体の強さに負けてしまう場面がありましたが、まだ3年生ですしエースの自覚を持って心技で成長してくれることに期待しています。また、うちにはグリザック・マルコ(3年、201cm)、アリウンボルト・アナンダ(2年、193cm)という2人のモンゴル人選手がいます。彼らは高校から日本に来たのですが、まじめにバスケットに取り組む姿勢からも今後が楽しみな存在と言えます」

今年の目標は2部リーグを勝ち抜くこと。だが、上武大バスケットボール部には毎年変わることのないもう1つの目標がある。
「うちには120名の部員がいるんです。恐らく部員数で言えば日本で1番多いんじゃないでしょうか。このチームをA1、A2、B1、B2、B3とだいたい25名ずつに分けてそれぞれ学生コーチを付け、彼らと私と佐俣(智彦)監督が相談して練習メニューを決め、各チームの方向性を考えながら活動しています。上武大でバスケットをやりたいと入ってきた大勢の選手たちが『ここでバスケットができてよかった』と胸を張って卒業できるようにすること。それが私が掲げるもう1つの目標ですね。佐俣監督はかつて駒澤大学のエースとして2部リーグの得点王に輝いた実績を持つ人ですから、チームを作る上でも非常に頼りになる存在。これからも二人三脚で頑張っていきたいです」

さらなる飛躍を目指す上武大の”秋”に期待したい。

「ひと回り大きな身体になってチームに貢献したい」(グリザック・マルコ)

近藤コーチが挙げた今年のキーマンの1人であるグリザック・マルコ選手はこの大会からスターティングメンバーに抜擢された。201cm、86kgとまだ線は細いが「ウエイトトレーニングを頑張ってもうひと回り大きな身体になりたい」と前向きに語る。

父はセルビア人、母はモンゴル人、セルビアで生まれ、2歳からモンゴルで育った。そのおかげでセルビア語、モンゴル語、モンゴルに近いロシア語、そして日本語が話せる。小さいときはサッカーをやっていたが、身長が高かったことから周囲に勧められてバスケットを始めた。日本の羽黒高校から声をかけてもらったのがきっかけで15歳のときに来日。「そのときは日本語は全然話せなかったし、日本のことも何も知りませんでした」

現在は上武大バスケット部の尞に住み、「朝と晩には食事も出るし、困るようなことは何もありません。おかげでバスケットと勉強に集中できて毎日が楽しいです」
初の先発として東海大と対戦した感想は「3部のチームとはディフェンスの強さが全然違います。高さもスピードもレベルの差を感じました」

だが、「将来は国の代表選手になりたい」という夢を持つ彼にとってそれも”経験”という学びの場所。「今、週3回やっているウエイトトレーニングでより強いフィジカルを身に付けることはもちろんですが、自分的には運動量で勝負したいという気持ちもあります。走力を活かし、ディフェンスやリバウンドで貢献できる選手になりたいです」
秋のリーグ戦では「ひときわたくましくなった自分を見せる」と、今から心に決めている。

関東大学バスケットボール連盟

文・写真 松原貴実