スプリングトーナメント④新たなチームつくりで道を切り拓いた中央大が17年ぶりの準優勝

17年ぶりのトーナメント決勝の舞台。高さで大きく上回る筑波に果敢に挑んだ中央大だったが、結果は68-99の大差がついた。しかし、選手たちの顔に暗さはない。もちろん完敗を喫した悔しさはあるだろう。が、同時に選手たちの胸には「自分たちが積み重ねてきたものが決勝までの道を切り拓いてくれた」という思いがある。指揮を執る荻野大祐ヘッドコーチは「一発勝負のトーナメントは組み合わせなどといった”運”も左右する。自分たちの実力でここ(決勝)まで来たという勘違いだけはしないようにと、それは選手にも伝えました」と、謙虚に語るが、明治大との一戦を鮮やかな逆転劇(80-75)で制し、準々決勝で日本大を撃破(98-72)し、準決勝で白鷗大に競り勝った(69-68)連日の戦いは決して”運”だけで成せるものではない。伊藤俊亮(千葉ジェッツ)、五十嵐圭(新潟アルビレックスBB)、柏木真介(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)といった有力選手を揃えて勝ち上がった17年前とは大会における立ち位置も注目度も異なるチームだったが、だからこそ今回の準優勝には『意味がある』とも言える。「去年のインカレが終わったあとから目指してきたチーム作りが1つの結果として表れたことは選手たちの自信につながったと思います」(荻野ヘッドコーチ)。今年1部リーグへの昇格を果たしたチームにとって、秋へのモチベーションが高まる大会ともなった。

平面を制するディフェンスの強化

中央大はこれまでも数多くの日本代表選手を輩出してきた名門校の1つだが、チームのスタイルとしては「点を取られたら取り返す」というオフェンスティブな印象が強かった。だが、ここしばらくはトップ争いからも遠ざかり、降格した2部リーグで戦う日々が続いたことで見直すべき新たな課題となったのはディフェンスの強化だ。
「今の大学にはどこのチームにも留学生が1人、2人います。うちのようにサイズがないチームが勝つためにはディフェンスの強化が必須となりました。サイズがないチームは平面勝負になりますから、高い位置からプレッシャーをかけ、少しでも多く(相手に)点を取りに来る時間をかけさせる。ハーフコートで守る時間を短くしようというのをチームのテーマとしてやってきました」(荻野ヘッドコーチ)
チームを牽引する4年生は2016年の新人戦で準優勝したメンバー。その4年生たちが「もう1度決勝の舞台で戦いたい」と口を揃え、前向きな姿勢でスタートを切れたことも大きかった。
「空いたら打つ、寄ったら抜く、インサイドのプレーヤーも打っていいんだよと言っています。ただし、そこで忘れてならないのはディフェンスの徹底。ガチャガチャと攻めるだけなら高校生のバスケットになってしまいます。ためらうことなく攻めるけれどもしっかりとしたディフェンスはぶらさない。(流れが悪いときも)ディフェンスで我慢して、どこかで波が来たらそれを逃さず一気に攻める。そういう今のスタイルは4年生たちが作ってくれました」(荻野ヘッドコーチ)

苦しい時間に我慢できるメンタル

今大会を振り返っても『我慢する時間帯』は何度も訪れた。中でも準決勝の白鷗大戦は立ち上がりから相手の勢いに押され、第1Qで6-19といきなり二桁のビハインドを背負った。だが、「あきらめずディフェンスを頑張っていれば必ずチャンスは来るから我慢しようと、それはみんなで話していました」(4年・中村功平)。白鷗大のインサイドの柱ディオップマムシェッハイブラヒマ(3年・210cm)をWチームで懸命に守り、相手が隙を見せた瞬間ためらうことなくシュートを放つ。自分たちが目指してきたバスケットを貫くことで次第にリズムを取り戻すと、第2Qには4点差まで迫り、第3Q開始2分で沼倉壮輝(3年)のジャンプシュート、中村の3ポイントシュートで逆転に成功した。その後も怒涛の攻めを見せた中央大はこのQに31得点をマークし、59-46と逆に二桁リードを奪う。だが、「うちは悪い流れになると誰かが1人で長い時間ボールを保持してしまう。それが今日も出てしまった」(荻野ヘッドコーチ)という第4Qには白鷗大の逆襲の前に足が止まり、残り2分には64-66と逆転を許す展開となった。去年のインカレで白鷗大と対戦した中央大は前半二桁のリードを奪いながら、後半に失速して20点差で敗れるという苦い経験を持つ。13点差をひっくり返されたとき、荻野ヘッドコーチの頭にも一瞬その苦い敗戦が浮かんだのではないか。しかし、今年の選手たちはそこで踏みとどまった。中村の3ポイントシュートで再び前に出ると、その後の一進一退の攻防を制し69-68の1点差で勝利。数字だけを見れば、リバウンド数は白鷗の50(OR22、DR28)に対し、中央大29(OR9、DR20)と大きな差がついたが、この絶対的不利な状況をチームディフェンスでしのいだところに選手の成長があったとも言える。「1部のチームを見ると、高さもディフェンスも(2部とは)質が違います。小さなうちがその中でどう戦っていくのか、それを探るうえでも学ぶものが多い試合でした」(荻野ヘッドコーチ)

エースがつかんだ手応え

22年ぶりとなる春の優勝は叶わなかったが、エースとしての存在感を発揮し3P王にも輝いた中村は言う。「決勝戦の筑波大はベンチメンバーの能力も高くて、サイズ、選手層ともに大きな差がありました。うちの課題だった”ビッグマンの守り方”も、筑波大の場合はWチームで守りに行くと、パスアウトされて外から高確率のシュートを決められる。前半はなんとか食らいついていきましたが、うちの疲れが見えた後半に一気に(流れを)持っていかれました。それでもうちのスピードのオフェンスというか、ディフェンスリバウンドからのファストブレークが通用した部分は確かにあります。筑波大には歯が立ちませんでしたが、ここまで来るまでに1部のチームを3つ破ったことは自信にもなりました。自分がシュートを決めることでチームがリズムに乗れるのでそこは意識して、今までどおり積極的に点を取りに行く、ディフェンス面では『声を出してコミュニケーションを取る』というチームの約束事を忘れず、それを率先できる選手として頑張りたいです」
1部リーグに返り咲いた中央大がこれからまたどのようなチームに成長していくのか、台風の目になる可能性に期待しつつ秋のリーグ戦を楽しみに待ちたい。

関東大学バスケットボール連盟

文・松原貴実 写真・吉田宗彦