ウインターカップ2018:ストイックに、前向きに〜進化するポイントガード(福岡第一高校#8河村勇輝)

ポイントガードとして福岡第一を冬の王座に牽引した河村勇輝のスピードと卓越したパスセンスに驚かされたバスケットファンは少なくないだろう。が、さらに驚かされるのは試合後、プレーを振り返る彼の冷静な言葉だ。そういえば確か昨年のウインターカップでも的確に言葉を選び、自分の考えを述べる河村に「なんと1年生らしからぬ!」と、驚いた覚えがある。同時にそんな河村を見ながら「自分の頭で考え、それを表現できるのもポイントガードの資質の1つ」と、語っていた井手口孝コーチの笑顔も思い出した。あれから1年、河村の成長は著しい。

「去年のウインターカップの準決勝で(福岡大附属)大濠さんに敗れたあと、自分たちに足りなかったものは何かということをみんなで考えました。それで大濠さんとうちが違っていたのはファウルのところとシュート確率だと再確認したんです。その反省を踏まえ、新チームになってからはシュート練習に力を入れてきました」

まずは朝45分間シュート練習し、夕方いつもどおりハードな練習を終えるといったん寮に戻り夕食を摂ったあと再び体育館へ。「そこでまた1時間ぐらいシュート練習をします。同じシュート練習でも1年のときは集中できない部分もあったんですが、大濠さんに負けてからは絶対やってやるという気持ちが強くなって、本当にすごく集中してできるようになったと思います」

3点差の悔しい敗戦から自分自身の課題も見つかった。「課題と言ってもまだ足りないものばかりなんですけど、1番はやはりシュート力。あの試合で自分は10本3ポイントを打って1本も決めることができませんでした。だからこの1年は本当に気合いを入れてシュート練習をしてきたし、今日(決勝戦)2本決められたのは、少しは練習の成果があったのかなと思っています」

夏にU18日本代表メンバーとしてFIBAアジア選手権の舞台を踏んだ経験も大きかったという。「アジアではガードの身長が高いのでそこは勉強になりました。スピードでは通用する部分が結構多かったですが、それだけではダメ。もっと緩急を付けて1対1で振り切る力とか、相手がフェイスガードしてきたときもフラストレーションを溜めず、自分が仕掛けていく力とか、それプラス外のシュート、ミドルレンジももっと練習していかなければいけないと感じました。そうしないと相手が止めやすい選手になってしまうので。アジア選手権で学んだことは自分だけではなく、これからもチームに還元していきたいと思っています」

質問に淀みなく答える河村にはもう1つ特徴がある。それはごく自然に口にする感謝の言葉だ。たとえば先のシュート練習の話をしたときは「打つときにリバウンドを付けてもらってるんです。だからより集中できる。1時間リバウンドをしてくれる人たちにはいつも感謝しています」と述べ、スタメンとしてチームを引っ張ってくれた2人の3年生については「キャプテンとしてチームをまとめしっかり点を取ってくださった松崎裕樹さん、縁の下の力持ちというか、ディフェンスや精神的なところを率先してやってくださった古橋正義さんは本当に大きな存在でした。3年生あっての優勝だったことは間違いないです」と、丁寧語&フルネームで感謝。大会を通して1番印象に残った試合は?と尋ねると「どの試合も心に残っていますが、強いて言えば飛龍戦でしょうか。自分たち2年生が3人スタメンになったときも嫌な顔ひとつしないでいつもしっかりサポートしてくださったベンチの3年生が全員コートに出て全員が得点した試合です。あのときは本当にものすごくうれしかったです」と、ここでも日ごろの感謝を表した。

「今年自分たちはどこよりもきつい練習をしてきた自負があるし、精神的なものも肉体的なものもどこより強いチームになったと思います。集中力がちょっと切れてきたなと思うと、自然に声をかけ合ったし、大事な場面ではそのたびに円陣を組んでやるべきことを確認しました。チーム一丸にならないと勝てないことはわかっていたし、だからこそみんなが言いたいことを言える関係になったというか。そういう雰囲気を作れたのはやっぱり3年生の力だと思います」

だが、その3年生たちもこの大会で卒業。優勝という歓喜の舞台を降りたとき、バトンは自分たちに渡されたのだと思う。「3年生が抜けたあと、今度は自分たちが優勝に値するチームになれるようすぐまた練習に励みます。正月も寮に残って(福岡)第一の体育館で練習するつもりです」。えっ?正月も休みなく?「はい、正月も帰省せず練習します。自分の武器はスピードとボールへの執着心だと思っていますが、さらにそれを磨くためにもボールに携わらない日が1日もないようにしたいんです。この大会は自分たちのバスケットを発揮できて優勝を勝ち取ることができましたが、チームも自分もこれで終わりじゃないんで、これが第一の“最大„じゃないことを示すチームになりたいと思っています」

たった今、優勝の栄冠を手にして、たった今、大会が終了したばかりだというのに、すでに来年を見据えている河村にはただただ恐れ入るが、17歳にしてこのストイックさはちょっと出来過ぎなんじゃないか。そこで、最後にこんな質問をぶつけてみた。

――普段からそんなにしっかりしてるの?おまえ抜けてるなあと言われることなんかはないの?
その瞬間、浮かんだ笑み。「あります。どっちかと言うと、学校ではバカにされたりいじられたりするタイプです。自分が上から何かを言えるのはバスケだけなので、だから、何ていうか、その分コートの中では強くいたいなと思っています(笑)」

そうかあ、素顔の河村勇輝はそんな高校生なのか。が、その普通の17歳がバスケットコートの中では鮮やかな変貌を見せる。ここから始まる新たな1年、ストイックに、前向きに、河村はどんな進化を遂げるのだろうか。気が早いと知りつつも18歳の河村に出会う来年のコートが今からもう待ち遠しい。

文・松原貴実 写真・吉田宗彦