ベスト8入りを決めた中京大「あと1つ欲張りに行く」

11月21日、インカレベスト8を決める4試合が行われたが、そこで関東12位の神奈川大が同10位の日本大を破り、東海地区代表の中京大が関東8位の早稲田大を破る波乱があった。いや、これを‟波乱„と言ってよいのかはわからない。神奈川大も中京大もサイズこそないが、その分鍛えられたチームディフェンスをしっかり遂行するチーム、波乱、番狂わせというより、勝つべくして勝ったという印象が強かった。

「うちはご覧のとおり小さなチーム、外国人選手もいなければ、突出した選手もいない。そんなうちが勝つためにはディフェンスをコツコツとやり、みんなでボールをしっかりシェアするバスケットをやるしかないわけです」と、語るのは中京大の松藤貴秋監督。正直、個々を見れば、数年前の方が力のある選手が揃っていたという。だが、それだけでは勝てないのがバスケットの難しさであり、同時におもしろさでもある。

「今年は2人の4年生が中心になって、3年生が2~3人、2年生もいて学年のバランスがいいんですね。でも、言い換えれば下級生たちがどこまで成長してくれるかが鍵であり、春先は不安材料もたくさんありました。その下級生たちを伸ばしてくれたのは4年生じゃないですかね。下級生がミスしても許す。もっと思いっきりやればいいと言ってくれる。練習で引っ張ってくれる4年生も含め、そんな雰囲気を作ってくれた4年生の存在は大きかったと思います」

また、地方の大学にとってベスト8に入るのは『来年のシード権を取る』ことを意味する。「昨年、名古屋経済大(昨年6位入賞)が久々に取ってくれたシード権をなんとしてでも守りたかったですからね。それを守り切れたことは本当によかった。ホッとしました」。だが、松藤コーチの目標はここで終わりではない。
「あと1つ勝って、ベスト4に残れれば(東海地区の)インカレの枠が1つ増えるんです。これはすごく大きなことですよ。実現したいですね。そのためにもあと1つ欲張りたい。なあ、みんな、あと1つ欲張ってみようと選手たちにも話しました」

松藤コーチの言葉を選手たちはどう受け止めたのか。早稲田大戦を振り返りながら、キャプテンの伊藤大和選手に次戦に向けての意気込みを聞いた。

「ここまで来たら東海代表の意地を見せたい」
(中京大キャプテン 伊藤大和)

――今日の試合を振り返っての感想を聞かせてください。

中京と早稲田だったらどうせ関東の早稲田が勝つだろうと思っている人は多かったと思いますが、僕らは最初から勝つ気しかありませんでした。だから、早稲田が勝つと見られていることが逆にうれしいというか、うれしいと言ったら変ですが、もし、勝ったら下剋上じゃないですか。だったら下剋上やってやろうじゃんという気持ちで臨みました。それが立ち上がりのいい流れにつながったのかな。後半になって追い上げられましたが、4ピリに後輩たちが頑張ってくれたおかげで勝ち切れたと思います。

――早稲田大学のスカウティングは?

もちろんしました。試合のビデオも見ましたし、練習では控えメンバーが早稲田の役になってくれて、早稲田のチームオフェンスを仮想してそれをディフェンスするとか。

――対戦する上で注意した点は?

早稲田のバスケットはガードの森井(健太)から始まるので、そこだけは徹底してみんなで守ろうと決めてました。それはまあできたのではないかと思います。マッチアップした3年の(速井)寛太がよく頑張ってくれて、もちろんやられてたところもありますが、よくやってくれたなあと僕は思ってます。

――早稲田の石原卓選手、新川敬太選手は京北高校出身、伊藤選手が藤枝明誠高校時代に勝てなかった相手ですね?そのあたりは意識しましたか?

そうですね。(京北には)2回、国体も入れると3回負けてて、そういう意味では因縁がありますから(笑)、絶対負けたくないっていうのはありましたね。

――このチームで自分がやるべき仕事はなんだと考えていますか?

まずキャプテンとしてみんなの気持ちが落ちてるな、集中してないなと感じたときは喝を入れなきゃならないし、点が取れてなかったり、流れが悪かったりするときは自分が点を取りに行かなきゃならない。それは自分の仕事だと意識しています。ただ、なんていうんですかね、毎回毎回点を取るというんじゃなくて、ここで(点が)ほしいというときに点を取れる選手を目指してやっています。早稲田戦の出来は、うーん、8割ぐらいかな。100%とはいかなかったですけど、声はずっとかけ続けていたので、そこはよかったと思ってます。

――選手としてここをもっとこうしたいというような目標みたいなものはありますか?

僕は見てのとおり線が細いので、フィジカルの強化は今後の課題だと思っています。正直、ずっとそれは自分には要らないものだと考えていて、ウエイトトレーニングをきっちりやり始めたのが3年ぐらいからなんです。

――心境の変化があったわけですね。

はい、大学までなら今のままでもいいと考えてたんですけど、もし、上のステージに行きたいと思ったらそうはいかない。もっとフィジカルが強くないと戦えないと思いました。

――ということは、次のステージを考えている?

はい、できるならこれからもバスケットを続けたいと思っています。まだまだやりたいです。

――早稲田戦に話を戻しますが、早稲田は小さいけれどスピードがあるチーム。そのスピードに負けていなかったですね。

うちもちっちゃなチームですからね。そこは負けられないです。うちはこれまで公式戦で外国人選手がいるチーム以外に1度も負けたことがないんです。他の選手はわかりませんが、それは僕の自信になっています。うちの強みはチームディフェンスですから、シュートが入ったらプラス、もし入らなくてもマイナスとは考えず、そこからもう1回ディフェンスしてバスケを作っていく。だから、早稲田に後半追い上げられた場面でも焦りはなかったです。とりあえずディフェンスで我慢しよう。オフェンスの波はどっちにもあるけど、自分たちが悪いときはディフェンスを頑張る。これまでもそうやって戦ってきたし、それを心がけていれば大丈夫だと思っていました。

――それが今年のチームのストロングポイントだということですね。

そうです。ちっちゃいチームだからまずディフェンスから入る、それができないと勝てません。流れが悪いときはディフェンスで我慢して、オフェンスの波が来たら爆発しようといつも言ってます。スリー(ポイントシュート)が入ればプラスだけど、落ちたとしてもマイナスじゃない。またディフェンスで立て直せばいいんだと。この1年そうやってチームバスケを作ってきました。

――今日はオフェンスの波もしっかりものにしましたね。

東海リーグでは5点、6点を追う展開になる試合が多くて、いきなり二桁リードを奪って追われる立場になるなんてことはほとんどなかったです。そこは想定外でした(笑)。

――さて、次はベスト4の扉をこじ開けに行くわけですが、その意気込みを聞かせてください。

大東文化大と東海大九州の勝者が相手になりますが、両方ともよく練習ゲームをしているのでお互いのことはわかっているし、あとは思いっきりやるだけです。もし、大東文化と戦うことになったら、モッチ(ラミン・200cm)はやっかいでしょうが、うちは東海リーグでも外国人がいるチームと戦ってきているのでビビることはないですね。まあ、マッチアップする舜汰(笹井・188cm)はちょっとイヤかもしれませんが(笑)。ここまで来たら東海代表の意地を見せたいです。大学バスケットは関東だけじゃないってところを見せたいと思っています。

――松藤コーチは「来年のインカレ枠を勝ち取るためにもあと1つ欲張りたい」とおっしゃっていました。

それは自分たちも同じです。特に僕たち4年にとっては中京のユニフォームを着る最後の大会なので、1試合でも多くコートに立てるよう全力で戦うつもりです。

翌22日の試合結果により、中京大の対戦相手は大東文化大に決まった。ベスト8に残ったのは中京大を除いて全て関東勢。その中で伊藤が語った「東海の意地」を見せられるか。中京大が「欲張りに行く」注目の一戦は23日12時40分、大田区総合体育館でティップオフとなる。

第69回全日本大学バスケットボール選手権大会

文・松原貴実 写真・安井麻実