関東1位の拓殖大を追い詰めた神奈川大「またここから一歩ずつ…」

見事な挑戦劇だった。
11月23日、インカレベスト4を決める最後の一戦の顔合わせは関東大学リーグ1位の拓殖大と同12位の神奈川大。誰もが拓殖大の快勝を予想していたのではなかろうか。しかし、その予想を大きく裏切り、出だしから神奈川大がリードを奪う。
「相手はリーグチャンピオンチームだし、これまで対戦したことがなかったので、正直どこまでできるかなあという気持ちも多少ありました。が、それより『やってやろうじゃないか』という気持ちの方が強かった。自分たちが今までやってきたことを出し切ろうとみんなで言い合ってコートに立ちました」(阿達隼人キャプテン)

試合は2Qに入ると拓殖大が逆転するが、神奈川大も粘り強いチームディフェンスで大量リードを許さず、#7田村大樹の連続シュートで食らいついていく。流れが拓殖大に傾きかけるたびに渾身の1本で押し返し、その都度観客席から大きな歓声が上がった。しかし、残り1分14秒65-66と神奈川大が1点差に迫った場面から拓殖大が王者の意地を見せる。ファウルをもらった#2岡田侑大がフリースローを2本沈めると、最後は#13阿部諒がゴール下に滑り込んで65-70。最後まで果敢に攻めた神奈川大のシュートはゴールに届かず、あと一歩の無念さを残し試合終了のブザーが鳴った。

2年前の3部降格がすべてだった

「勝ちたかったです。でも、選手たちは本当によく戦ってくれました。敗れはしましたが、ナイスゲームだったと思っています」。試合後のミーティングを終えて記者団の前に現れた幸嶋謙二監督は開口一番そう言って笑顔を見せた。

2年前には3部に降格した苦い経験がある。そこから2部に返り咲き、今年はリーグ2位で1部への自動昇格を決めた。そして、インカレでは1部10位の日本大を破り初のベスト8入り。この快進撃の裏にはどんなチーム作りがあったのだろう。

「ひとことで言えば、3部に落ちたあのときがすべてだったと思います。降格したのは監督である私の責任ですが、去年の4年生はみんな強いメンタルの持ち主でした。絶対2部に上がると誓って、自分たちから2部練習をしましょうと言い出した。4年生で試合に出ていたのは金丸(智生)ぐらいなのに、それでもみんなでチームを引っ張ってくれたんです。あの1年でチームも私自身も変わりました。もし、あのまま2部にいたなら、口では1部に上がりたい、上がりたいと言いながら、2部の真ん中あたりで満足しているようなチームだったかもしれません。3部に落ちたとき、みんなが本気になったんです。本気で上を目指すというのがどんなことか、そのとき初めて知った気がします。4年生の本気はチーム全員に伝わり、今の阿達たちに受け継がれ、今年のチームの土台になりました」

サイズがない分、隙のないチームディフェンスを武器とするチームを目指し、夏には韓国遠征を行い課題であるオフェンス力に磨きをかけた。
「それまではまだ15秒ぐらい時間があるのに平気でタフショットを打ってしまうような雑さがありました。もちろん、ちゃんと最後の1秒まで使ってオープンショット(を打てるよう)にしようとか、もっとズレを作ろうとかいう話はしていたんですが、韓国のチームといろんなバリエーションの試合ができたおかげでそれが身に付いてきたように思います」

先輩から受け継いだ‟本気„を土台にリーグ戦を戦い、入替戦に代わる順位決定戦では1部リーグ9位の東海大に勝ち気でぶつかっていった。
「そういう経験がチームを成長させていったのは確かです。勝った試合も負けた試合も選手たち自身が自分の栄養にしていった。それが今日の試合につながったと感じています」

チャンピオンチームを相手に90%の力は出せた

敗戦のあとにも関わらずキャプテンの阿達の顔にも暗さはない。
「もちろん、あと一歩だったという悔しさはあります。でも、拓大というチャンピオンチームと戦う自分たちに必要なのはチャレンジャー精神だとみんなで話していたし、今日はそれだけは忘れずに戦えたという満足感もあります」

特にチームが武器とするディフェンスでは「高さで勝る拓大に対抗するため203cmの(ゲイ)ドゥドゥのところはダブルチームで守り、パスされてもあきらめずにローテーションをするというチームディフェンスはしっかりできたと思います」

悔やまれるのは残り1分の攻防で自分たちのシュートを決め切れなかったこと。「あの時間にしっかりシュートを決めてきた拓大はさすがでした。僕たちとの差はそこにあったと思います。でも、ドゥドゥと岡田君のツーメンプレーからの合わせとか、拓大の得意とするところは作戦通りかなり守れたと思うし、自分たちの力は90%ぐらい出せた気がします。あとの10%はさっきも言った最後の勝負どころのシュートです。あれさえ決められていたら勝負はわからなかったのに。その10%が大きな勝負の分かれ目で、僕たちに足りなかった部分ですね」

だけど…と、阿達は続ける。「だけど、僕は4年間神大でバスケットをやってきて、最後のインカレでベスト8という成績を残せました。それだけじゃなくて、幸嶋さんの下でメンタルも鍛えられて、バスケだけじゃなくて人間としても成長できた実感があります。あとは順位決定戦で1つでも上に行くことを目指して神大バスケットを出し尽くすだけです」

迎えた5位〜8位決定戦では一戦目の青山学院大に逆転負け(64-70)を喫したが、2戦目の対中京戦は77-63で快勝し、7位で大会を終了した。3部降格から2年、腐らず、いじけず、積み重ねてきたものが確かな形となって実を結んだ。

だが、年が変わればチームを牽引してくれた4年生を送り出し、また新たなチーム作りが始まる。「また一歩ずつですね」と、幸嶋監督。「私はこのチームを見て18年になりますが、選手に助けられて成長してきたように思います。ですから、また選手と一緒に一歩ずつ上を目指していきたいと思います」

文・松原貴実 写真・安井麻実