最終日のメインコートに立つ素晴らしさ(鹿屋体育大学)

「最終日のメインコートに立つ。この2年間、ずっとそこを目標にしてきました」
その目標を掲げた木葉一総ヘッドコーチは、メインコートの素晴らしさを知っている。だが、ヘッドコーチや選手として味わったわけではない。
「私も審判をしているときにメインコートでの決勝を任されたことがあり、その雰囲気の良さを知っています」

みんなにも味わわせたかった“魅惑のメインコート”

鹿屋体育大学がインカレでベスト4入りしたのは12年ぶり。九州勢にとってもそれ以来の快挙となった。木葉ヘッドコーチが鹿屋体育大学を指揮し始めたのは2012年。先に挙げたとおり、それまでは審判としてコートに立ち、数々の大舞台を味わってきた。だからこそ「みんなにもぜひ味わわせたかったです」と目標に掲げ、今年のインカレで見事にその努力を実らせることができた。

昨年は2回戦で大阪人間科学大学に57-76で敗退。何の因果か、今年も2回戦で相まみえるのはシード校の大阪人間科学大学だった。「リベンジしたかったですし、絶対に勝つという気持ちで戦ってました」と強気な姿勢で向かっていたのは大串梨沙選手。昨年は4点しか挙げられなかったが、2年生になった今年は16点/13リバウンドのWダブルの活躍を見せる。結果は73-61でリベンジに成功し、ベスト8入りを決めた。木葉ヘッドコーチは対戦前から、「昨年に比べたら今年のチームは同じくらいか、もしかすると我々の方が少し上かもしれない」という自信と勝算があった。

最終日のメインコートに立つためには準決勝に進まなければならない。大一番である準々決勝の相手は、関東4位の専修大学。第1クォーターは気持ちで上回り、26-16と10点リードを奪う。ベンチメンバーの時長美桜選手が27点を挙げる活躍もあり、出だしにリードしたことで振り切った鹿屋体育大学が69-64で勝利し、メインコート行きの切符を手にする。しかし、その歓喜の裏で中山樹選手がふくらはぎを肉離れし、チームの主力を失うこととなった。

主力が抜けるのはきつい…それ以上に出られない当人の方がもっと辛い

「今回ベスト4に入れたのもみんなのおかげであり、もう感謝しかないです」と涙を溢れさせていた中山選手。不慮のケガにより、せっかく勝ち獲ったメインコートで暴れることは叶わなかった。
1年生のとき、早生まれの中山選手は2014年の女子U18日本代表候補に選ばれている。最終メンバーにこそ残れなかったが、そのときのことが「自分にとっては自信にもなっていました」

今シーズンの集大成となるインカレだからこそ、本気の他地域の選手たちとの対戦に、「体の当たりやルーズボール、ディフェンスでのプレッシャーなどが全然違う」と中山選手はその差を実感している。それでも大阪人間科学大学と専修大学に勝てた要因として、「リバウンドが獲れていたことで、良い流れでプレーできていました」と練習から徹底してきたことを大舞台で発揮させ、勝利をつかんでいる。

これからというところで戦線離脱してしまったことが悔やまれる。しかし大串選手は、「中心選手が抜けるのはきついと思いましたが、それ以上に出られない方が辛い。自分たちががんばって試合に出してあげようという気持ちがあり、前向きには捉えていました」とモチベーションに変えて、メインコートに向かった。

なんて言っていいかは分からないですが、楽しかったです(中山選手)

準決勝の拓殖大学には66-93、3位決定戦では56-90で白鷗大学にそれぞれ完敗。

白鷗大学戦では「相当変則な形」と木葉ヘッドコーチは奇策に打って出た。188cmのシラ ソハナ・ファトー・ジャ選手に対し、マッチアップするパワーフォワードの大串選手にボールを運ばせる。「走り合いになったら白鷗大学の方が速いです。できるだけ走らせないようにしたかったです」と木葉ヘッドコーチはスローダウンさせ、なおかつソハナ選手のマークを離してハーフコートに入ってから勝負しようと画策していた。だが、「あそこまでディフェンスで前に出てくるとは思っていませんでした」としっかりマークされたことでその目論見は外れる。「関東の上位チームとはハッキリと力の差が見え、まだまだ差があると感じました」と認めざるを得なかった。

「最後は中山のケガの件もはじめ、満身創痍に近い状態でした。でも、最終日のメインコートに立てるチームは4つしかありません。そのプライドを持って、楽しんで自分たちのスタイルを表現していこうと送り出しました」(木葉ヘッドコーチ)
チームとして掲げた目標を達成させ、最後の試合での目的も見ている方々には十分伝わったはずだ。

点差がついた最終戦、木葉ヘッドコーチは最後の場面で中山選手を呼んだ。ベンチの隅から足を引きずりながらも、チームメイトに肩を叩かれ、背中を押されながら最後のコートに立つ。そのときの心境を振り返ってもらったが、「本当に感謝しかないです。出してくれて……」と涙でその先の言葉を続けることができない。落ち着いた後、あらためて今大会を振り返ってもらった。
「いつも一緒に出ているメンバーが最後まで必死に戦っている姿を見て、やっぱり自分も出たいと思っていました。本当に辛かったです。みんながんばっているし、応援しかできなかったですが、ここまで来られて良かったです。なんて言っていいかは分からないですが、楽しかったです」

69回の長いインカレの歴史において、九州勢の最高位は12年前に鹿屋体育大学が記録した準優勝である。その前から4位、3位と年々順位を上げてきた過去をなぞるように、これが始まりと期待したい。

大串選手や時長選手らスタッツを残した選手たちは、来年もこの舞台でさらなる上位を目指している。さらに木葉ヘッドコーチは、「白石(楓夏/1年)がこれから変わってくれると期待しています。ここまで来られた経験はすごく大きいですし、忘れないように明後日からすぐ練習です」と満足げに去って行った。その素晴らしさを味わってしまったことで、来年のメインコートに戻ってくるための努力もきっと楽しいものになるだろう。

文・写真 泉 誠一