アメリカでのこれまでと、そしてこれからと──中編(ジョージ・ワシントン大学 #12 渡邊雄太選手)

やっと勝った!現地2月7日、ラ・サール大学戦を80-69で破り、ジョージ・ワシントン大学は5試合ぶりに白星を挙げた。29点を挙げた渡邊雄太選手は、キャリアハイのおまけ付きでの勝利に笑顔が戻った。卒業へのカウントダウンがはじまった今、人生の岐路を迎えている。渡邊選手自身も、応援する我々も期待するのは、田臥勇太選手(栃木ブレックス)以来となる日本人NBA選手の誕生だ。

NBAへ行った選手たちとマッチアップしてきたことで芽生えた自信

ーー目指すべきNBAへ向け、就職活動中の4年生として今できることとは?

(チームが選手に対して直接交渉をする)日本のシステムとは全然違います。プロセスとしては、シーズン後にエージェントと契約し、NBAのチームへの紹介がはじまります。そこで話があればNBAのワークアウトに参加し、ドラフトされるだろう選手はシカゴに集まってドラフトコンバイン(※NBAドラフト候補選手を招集して様々なドリルや測定を行いながら査定される場)に参加。その後にドラフトがあり、そこからサマーリーグとなります。NBAのチームと選手が直接交渉することはルール上、絶対にできません。必ずエージェントを通さなければならないので、そのパートナーを誰にしようかなと思って話を聞いているところです。

ーーNBAを見ていても分かるとおり、エージェント選びこそが全てとも言えます。

そうなんです。エージェント次第ですごく変わると周りのみんなも言ってるので、すごく大事です。

ーーすでにNBAで活躍しているタイラー・カバナー選手(アトランタ・ホークス)とは連絡を取っていますか?

しょっちゅう連絡しています。タイラーは本当に努力家ですし、メチャメチャ練習する選手です。ずっと一緒に練習したり、目の前にいた選手が今はNBAで活躍してくれているのは良い道標になってくれています。また、自分にもチャンスがあるんだなと思えます。本当にありがたい存在です。

ーー地元ワシントンDCにあるウィザーズにも2016年オリンピック世界最終予選で対戦したチェコ代表のトーマス・サトランスキー選手が活躍しているのも刺激になったりしますか?

彼の例だけではなく、大学時代にマッチアップした選手が活躍しているケースも結構あります。その選手とマッチアップしたときに、ボコボコにやられたかと言えばそうでもない。当時は彼らの方が上でしたが、そういう選手と対戦してきたことで(自分の実力を測ることもでき)チャンスはあると実感しています。当然、厳しい道ではありますが本当にチャンスはあると思っています。

NCAAディヴィジョン1でエースとして試合に出ている今は不思議な感じもする

ーー最初にアメリカに行きたいと思っていたときとNCAAで経験を積んだ今、NBAの距離はどう変わりましたか?

日本から出るときは漠然としており、それこそ小学生がNBAに入りたいと言うのとさほど変わらないレベルの夢でした。でも今は現実味も出てきており、着実に階段を上っていると思います。

ーーやっぱり地元のウィザーズに入りたいですよね?(※筆者は25年来のウィザーズファン)

アハハハ。でも、DCの街はすごい好きなので、もしウィザーズが呼んでくれたらそれは喜んで行きますよ。笑

ーーそこがNBAのすごいところだと昔から思ってました。以前のプロ野球ではドラフトされたチームに不満があって辞退することもありました。NBAドラフトはウェーバー方式であり、下位チームが優先されます。言ってしまえば人気も、実力も劣るチームであっても、みんな喜んでおり、それはチーム云々ではなくNBAというリーグ自体の価値が高く、ステータスを感じているんだなとずっと思っていました。

やっぱり世界中のトップ選手が集まる場所であり、世界最高峰のリーグなので、強い弱い関係なく入れるだけでうれしい人ばっかりなのだと思います。

ーーNCAAだってFinal4で勝てば世界チャンピオンと言われるアマチュア最高峰のリーグであり、今いる環境もやっぱりすごいです。

いざ、自分がやっているとあまりそういう実感はなくなってきます。あらためてアメリカに来る前の自分を思い出し、大学に入れるかどうかも全然分からなかったあのときの状態から振り返ると、Div1のエースとして試合に出ている今は不思議な感じをするときがたまにあります。

「日本のことが恋しくなってきた」ホルムアシスタントコーチ

ジョージ・ワシントン大学のアシスタントコーチには、bjリーグ時代に仙台89ERSなどで活躍したクリス・ホルム氏がいる。元々日本でプレーしていたホルムアシスタントコーチは、Bリーグの現状を好意的に見ていた。

ーーハッサン・マーティン(琉球ゴールデンキングス/ロードアイランド大学)やリチャード・グレスマンヘッドコーチ(愛媛オレンジバイキングス/ドゥケイン大学)などアトランティック10カンファレンス(以下A-10)からBリーグに逸材が来ている現状はご存じですか?

日本に行く前に彼ら二人から連絡が来て、いろいろと聞かれたよ。日本は良いところだと伝えたとともに、僕自身も一緒にプレーしていた選手がまだ活躍しているので、Bリーグもチェックしてるよ。

ーーA-10の選手たちにもオススメできるリーグでしょうか?

もちろん!自分がプレーした経験もあるし、日本のこともよく分かっているので自信を持って紹介したい。すごく良いリーグだし、日本のことが恋しくなってきたと奥さんともたまに話をすることがあるくらいさ。

ーーBリーグができ、現役復帰も想定しているとか?

僕が?もう年を取り過ぎちゃったよ。笑
でも、コーチとしては興味を持ってる。2年前にジョージ・ワシントン大学として日本に行ったときにまた帰ってきたいと思ったくらいさ。日本は良いところなので、今後はコーチとして戻りたいし、本当に興味を持ってるよ。

滞在中、実際にNBA選手やヨーロッパのリーグで活躍する選手を多く抱えるエージェントに話を伺うことができた。「あの身長(206cm)で3Pシュートがあり、なによりもディフェンスが素晴らしい」と評価している。「着実に階段を上っている」と渡邊選手自身が実感しているとおり、周りもその実力を認めていた。

ラ・サール大学戦での3Pシュートは5/7本を成功させ、29点のオフェンス力を証明。さらに相手のエースや渡邊選手よりも速いポイントガードを1on1では完全に封じることができるディフェンス力は、今後の日本代表でも大きな武器として期待される。

『日本代表を強くしたい』と高い志を持って海を渡った渡邊選手だが、2018年6月問題に頭を悩ましていた──(つづく)

ジョージ・ワシントン大学
ジョージ・ワシントン大学/渡邊雄太ページ(協力:杉浦大介氏)

文・写真 泉 誠一