アメリカでのこれまでと、そしてこれからと──後編(ジョージ・ワシントン大学 #12 渡邊雄太選手)

現在、アメリカで活躍する日本人選手が増えているとともに、ピマ・コミュニティ・カレッジ の榎本新作選手(アイザイア・マーフィー)やポートランド大学の渡辺飛勇選手(ヒュー・ホグランド)といったアメリカで生活していた日本人が発掘されている。FIBA U17やU19ワールドカップに出場し、すでに世界を経験している頼もしい世代であり、今後の日本代表が楽しみである。

「日本代表を強くしたい」とアメリカに渡った渡邊雄太選手は、今なおその思いは変わっていない。授業や街に出かけるときでさえ、日本代表ウェアを着ることはよくあるそうだ。アメリカで活躍し始めている後輩たちとともに、今後の日本代表を強くすることを楽しみにする反面、2018年6月問題に頭を悩ましている──

成功例として道を拓いたことで同じ道を歩む日本人が増加中

ーー昨シーズン、ゴンザガ大学の八村塁選手が日本人初のNCAAトーナメントに出場し、いきなりFINAL4(結果は準優勝)に行った活躍を見たときの心境はいかがでしたか?

うらやましい部分も当然あります。でも、アイツらががんばった結果であり、塁はファイナル4という考えられないような舞台に立ったわけです。それも本人たちの努力だと思いますし、正直に言って同じ日本人として喜ばしいです。…と同時に、やっぱり少し悔しい部分もありますね。

ーー八村塁選手やシェーファー アヴィ幸樹選手(ジョージア・テック大学)など続々と日本人がNCAAで活躍し始めているこの状況は、今後の日本代表にとっても楽しみではないですか?

本当にすごく楽しみです。僕がアメリカに来るにあたり、こっちで成功例になることによって後に続いてくれることがうれしいと思っていました。彼らに僕がどれだけ影響しているかは分からないですし、もしかしたら僕のことなんて関係なく、ただ自分の意志で来ているのかもしれません。それは分からないですが、アメリカでプレーする選手が増えているのはうれしいです。

ーーセント・トーマスモア・スクールの後輩でもある角野亮伍選手(サウザンニューハンプシャー大学/Div2)や鍵冨太雅選手とは連絡を取っていますか?

亮伍とはもともと仲が良かったのでちょくちょく連絡は取り合っています。太雅はツイッターのDMで何回か連絡が来ました。

ーー2年生になった角野選手が、Div1にトランスファーできる可能性は?

可能性は全然あります。でも、数字を残していないとなかなか難しいのでがんばって欲しいですね。

ーーちなみに中学3年で日本代表合宿に参加している田中力選手のことは知ってますか?

はい。ハイライトで映像は見ました。中学生と知らずに見たら、大学生の中でもうまい選手と言ってもおかしくないです。普通にダンクもしていましたし、体つきも同世代に比べたらできているので、今後が楽しみですよね。

ーー楽しみである若い世代の先頭にいるのが渡邊選手であり、目標としてきたNCAAトーナメントにはぜひ出て欲しいです。

なんとしてもやっぱり出たいです。

ーーそこに出ないことで、その後の進路においても不利になるのでしょうか?

やっぱりトーナメントに出ることで見てもらう機会が当然増えます。それが全てではないですが、そこに出ることでいろいろと次の道には当然つながっていくと思います。

人生最大の岐路に立つ2018年6月問題

ーー身近に迫ったNBAへ行く目標とともに、「日本代表を強くしたい」という志を持ってアメリカに来たわけですが、すでにワールドカップ予選が始まっている日本代表はチェックしていますか?

(フリオ)ラマスさんがわざわざ試合を見に来てくれました。第一印象は、すごく良い人だなって率直に思いました。実際には試合後に1時間程度話しただけで、そのときは(代表についての)細かいことではなく、僕のことを知りたいという目的で来てくれました。僕の置かれている状況もすごい理解してくれていますし、話を聞いていても僕をすごく必要としてくれていることも伝わってきました。その期待には応えたいと思っています。日本代表が世界で勝ててはいない中で、ラマスコーチになってしっかり世界と戦えるチームになっていって欲しいですし、その一員として戦って行きたい気持ちはすごくあります。

ーー今年6月に代表戦があり、そこで渡邊選手と八村選手が帰ってくることを楽しみにしていますが、NBA入りを目指すとなるとその6月こそ忙しいのでは?

そこが僕の頭をすごく悩ましています。6月のその時期はちょうどNBAのワークアウトがある時期なので……。考えるだけで頭が痛くなります。

ーー個人的な意見ですが、2020年はたまたま東京でオリンピックが開催されてしまうとともに、残念ながらバスケットには他の競技のように自動的に出場できる開催国枠がありません。しかし、渡邊選手ら楽しみな逸材が多いこの世代はその次のオリンピックでさらなる活躍をするためにも、まずは自分の夢に向かって欲しいという思いもあります。

そういう考えもあるとは思います。でも、僕の希望としては2020年東京オリンピックに出たいという気持ちがすごくあるんですが……タイミングがすごく悪い。なんでこの時期なのか、今年以外ならばどこでも良かったのに……

ーーこれまでのように一カ国集中開催の8月に行われれば、問題なかったのに…。

8月だったらサマーリーグも終わって、全然大丈夫なんですけどね。今年の6月は僕の人生の中で一番大切な6月になります。なんでこのときに重なってしまうのかなぁ……。

ーー日本代表の明るい未来は、同世代の選手たちがアメリカで台頭してきていることでその兆しは感じられていますか?

僕の人生が大きく変わったのは、高校2年生になったときに日本代表候補として当時のトーマス・ウィスマンヘッドコーチ(現横浜ビー・コルセアーズ アドバイザー)に選んでもらったからです。たまたまU18代表合宿があり、そのときにたまたまコーチが来ていて、本当にたまたま僕に目をつけてくれました。そして代表候補に呼んでくれたことが、大きく人生が変わった瞬間でした。代表にはすごい感謝していますし、チームを強くして恩返しすることが僕がやりたいことでもあります。日本代表のエースとして引っ張っていきたい気持ちもありますし、そうならないといけないと思っています。

「渡邊雄太と八村塁が加われば、日本は変わる」という声はファンだけではなく、アメリカへ会いに行ったフリオ・ラマスヘッドコーチも大きな期待を寄せている。だが、彼らはまだ大学生。そこまで大きな責任と重圧を与えてしまって良いのかと不安にも感じている。逆にプロとなり、60試合の熾烈なレギュラーシーズンを戦っているBリーガーたちこそ奮起し、大学生に頼ることなく自らの手で切り拓いて欲しい。

Vol.15で表紙を飾った日本のエース・比江島慎選手(シーホース三河)はこう話していた。
「下の世代の選手たちが日本代表に入ってきても、彼らに任せるのではなく、自分が中心となって一緒に戦っていきたいです。渡邊雄太や八村塁はまだ学生であり、ワールドカップ予選に出られるかと言えば難しい部分もあると思います。そこまではしっかり自分が日本代表を引っ張っていきたい自覚はあります」

若く才能ある後輩たちを安心させるためにも、Bリーガーたちがプライドを持って勝利に向かっていかねばならない。まずは2月22日に横浜国際プールで行われる、チャイニーズ・タイペイ戦で初勝利をもぎ取り、その勢いでアウェーでのフィリピンも破ってしまおう!

渡邊選手はこれから続くアウェーゲームが正念場となる。現在3勝8敗で14チーム中13位だが、ともに4勝7敗のジョージ・メイソン大学戦(現地2月10日)、マサチューセッツ大学戦(現地2月14日)で2連勝すると、団子状態になっている下位グループから一歩抜け出せる可能性がある。その後のVCU(現在5位)、リッチモンド大学(現在4位)を迎えるホームゲームに向けても弾みをつけたいところだ。最大の目標であるNCAAトーナメント“マーチ・マッドネス”出場へ向け、諦めない戦いは続く!

ジョージ・ワシントン大学
ジョージ・ワシントン大学/渡邊雄太ページ(協力:杉浦大介氏)

文・写真 泉 誠一