キャプテンのプライドを持って貫いたもの〜東海大学#15内田旦人

第70回全日本大学バスケットボール選手権男子決勝。観客が見上げる電光掲示版の数字は東海大88、専修大70。タイムアップのブザーと同時に手にしたウイニングボールを高く放り上げたのはキャプテン内田旦人だった。満面の笑み、そして、そのあとの涙。「Bチームのみんながコートになだれこんできたとき、ああ、自分たちはこいつらも含め全員の力で優勝できたんだと思って、一気に熱いものがこみあげてきました」

内田にとって大学最後の年はこれまでになく自分自身と向き合い、同時にチームと向き合う1年だった。大学バスケットボール界をリードする常勝軍団と言われながらリーグ戦9位、インカレ5位に沈んだ昨シーズン。「チームが崩れていったときに立て直せないまま終わってしまったという思いがあって、このままじゃダメだ、キャプテンになったからにはもう1度強い東海大を取り戻したいという気持ちでいっぱいでした」
 4年生だけでミーティングを行ったのはシーズンが始まる前。「そこで新シーズンの東海大はチームとしてどうあるべきか、勝つべきチームはどういうチームなのかについてとことん話し合ったんです。みんなの思いが同じなのを確認して、最後はそれをブラすことなく1年間貫こうと言いました」

だが、『ブレない気持ち』を貫くことはそう容易いことではない。とりわけ大倉颯太、八村阿蓮を筆頭に有力な新人たちが入ってきた今年はチームの中にはさまざまな変動があった。スタメンだった自分や同じ4年生の鶴田美勇士が控えに回ることになったのもその1つだ。
4年生としてのプライドが傷ついたり、人知れず葛藤したことはなかったのだろうか。
「プライドはもちろんあります。けど、力がある1年生が入ってきたとき、これで自分たちのプレータイムは減るだろうなと覚悟しました。そこからのスタートです」

思い浮かべていたのは、自分が東海大に入学したときの4年生たちの姿だ。「キャプテンはベンドラメ礼生さん(サンロッカーズ渋谷)だったんですが、礼生さんはどんなときでも自分たちに伸び伸びプレーさせてくれました。4年生としては我慢することも多かったと思いますが、それでも僕たち1年生が自由にプレーできる環境を作ってくれたんです。だから、チームの雰囲気も良く、自然に1つになっていったような気がします。今年自分が目指したのはあのときみたいなチーム。礼生さんみたいなキャプテンになりたいと思いました」

プレータイムが減ったことは試合で貢献するチャンスも減るということだが、「貢献できるのは試合だけじゃないですから。練習中に集中力が切れてるヤツがいたら厳しいことも口にしたし、厳しいことを言える自分であるためには誰より練習を頑張らなきゃいけないと思っていたし。大変ではありましたが、同じ思いでサポートしてくれた他の4年生たちに助けられました」

そんなキャプテン、そんな4年生たちを下級生はどう見ていたのだろう。1年生の大倉颯太はこう言う。「入った当初の練習では4年生にまったく歯が立ちませんでした。特にディフェンスでは内田さん、秋山(皓太)さん、松浦(翔太)さんにボコボコにされて、そのたびに勝つためにはどうしたらいいのかとずっと考え続けて、だからこそ今、スタメンで使ってもらえる自分がいるんだと思っています」

たとえ控えに回ったとしてもセカンドチームにはセカンドチームの意地がある。「自分も美勇士も秋山も、3年生の(寺嶋)良も練習はスタメンを潰すぐらいの気持ちでやってました。それは自分たちの力を示したいというエゴではなくて、自分たちがハードワークをすれば自然とファーストチームの力、さらにはチーム全体のレベルが上がるはずだと考えたからです。スタメンを潰すぐらい頑張る。それが自分たちセカンドチームのプライドでした」

結果、東海大はリーグ随一の選手層の厚さを誇るチームに成長する。決勝戦を戦った専修大のエース盛實海翔が「東海大はメンバーが代わってもプレーの質が落ちない。ディフェンスの強度も変わらない。そこが本当にすごかった」と、語ったように東海大と対戦するチームは、1つの試合の中で2つのチームと戦うタフさを求められたと言っていいだろう。

内田が大学最後となるコートに出たのは4Q残り5分半。すかさず得意のジャンプシュートを決めて場内を沸かせる。専修大に5点を連取されたあとは悪い流れを断ち切るかのような3ポイントシュート、さらに終盤、相手のディフェンスをワンフェイクでかわし2本目の3ポイントを沈めると、ベンチの後輩たちがガッツポーズで一斉に立ち上がった。その瞬間、少し胸が熱くなったのは、後輩たちが振り上げた拳の中に、内田がキャプテンとして貫いてきた1年間の答えが見えた気がしたせいかもしれない。

試合後、陸川監督は今年の4年生についてこう語った。最後の一言は笑顔で、そして、深い感謝をこめて。
「実力がある者が表舞台に立つのがスポーツだと私は思っています。今年でいえば大倉や八村が先輩たちに代わってスタメン出場した。それは彼らの能力、また普段の練習の姿勢などをみんなが認めた上でのことです。ただしバスケットはチームスポーツですから、力のある後輩を認め、送り出してやるには先輩の度量が必要になる。先輩の人間性というのはその年のチームを作るために絶対必要なことなんです。今年の4年生はその度量が大きかった。私が言わなくともなにをすべきかを考え、チームのために力を尽くしてくれました。見ていてちょっと胸が熱くなるぐらいひたむきに、献身的に。私は今回の優勝は4年生あってのものだと思っています。スタートのコートに彼らは1人もいなかったけど、今年のチームを作ってきたのは間違いなく彼ら。なかでも4年生をまとめ、ブレることなく1年間チームを引っ張ってくれたキャプテンには感謝したい。私は心の中であいつを“愛の人„と呼んでいます」

全日本バスケットボール連盟
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文・松原貴実 写真・吉田宗彦

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