【ウインターカップ2017】未来の富樫勇樹を目指して(福岡第一#8河村勇輝)

「ドリブルがつける、パスを出せるというだけなら他にもいっぱいいます。あの子は速いだけじゃなくて、丁寧で柔らかいパスが出せる。いざとなったら自分で攻められる。さらに自分の頭で考え、自分の言葉でしゃべれる。そういうことが僕はガードの資質だと思うんですよ」

井手口孝コーチが相好を崩してこう語る‟あの子„とは、福岡第一の1年生ガード河村勇輝である。スピードとパスセンスを買われて、今大会からスターターに起用された。関門の1つであった土浦日大戦では40分フル出場、ベスト4を懸けた中部大第一戦では34分プレーしチーム2番目となる17得点をマークした。だが、本人はプレータイムや得点より自分が犯したターンオーバーの数(土浦日大戦5、中部第一戦7)が気になるようだ。
「試合の中でまだ集中力が切れてしまうところがあります。土浦日大戦では結構点差があったのに、自分が上手くゲームをコントロールできなかったせいで追い上げられてしまった。1年生だからミスしても仕方ないというレベルの大会ではないので、そこは自分の課題だと思っています」

バスケットを始めたのは小学1年生のとき。バスケットの指導者だった父が取り付けてくれたリングに向かい毎日シュートを打っていた。「最初は遊びみたいな感じでしたが、それが楽しくてどんどんバスケが好きになりました」

柳井中学時代に出場した全国中学生大会では成績こそベスト16に終わったが、卓越したパスセンスで注目を集め、U-16日本代表候補にも選出された。その河村に真っ先に声をかけたのが井手口コーチだ。福岡第一のインターハイ決勝戦を見た河村は「(重冨)周希さん、友希さんの活躍がすごく印象に残りました。2人とも身長は低いけどスタートで出て走るバスケットをやっていて。自分の武器はスピードだし、ここなら身長が低い自分も使ってもらえるかもしれないと思いました」

とはいえ、福岡第一には井手巧実(3年)という力のある先輩ガードがおり、自分に出番が回ってくるのはまだ少し先になるだろうという思いもあった。スターターに起用されたのはウインターカップの1ヶ月ほど前あたりからだが、このことについて河村は「自分のスピードが求められた」と理解している。練習では1年生としての遠慮もあったが、スターターになったことで自分の考えを積極的に口にできるようになった。

「先輩たちがそういう雰囲気を作ってくれたこともありますが、そのことで自分の中に(スターターを任された)責任感も生まれました」。土浦日大戦で猛追されたとき、まず頭をかすめたのは「インターハイで井手さんが3位に牽引してくれたチームを自分がここで終わらせることは絶対できない」という思いだったという。「ウインターカップはやっぱり3年生の大会だから、その3年生に代わって出してもらっている自分が不甲斐ないプレーはできないと、それはいつもいつも考えています」

あこがれの選手は福岡第一の先輩でもある並里成(現滋賀レイクスターズ)。
「時間さえあればビデオを見てます。しっかりした基本があって、その上で見ている人がわくわくするようなプレーをする並里さんが本当に大好きで、スピードもテクニックも自分のお手本にしています」

203cmのバムアンゲイ・ジョナサン、U-18日本代表でもある松崎裕樹、高確率のシュート力が光る松本礼太など有力な先輩たちを牽引するガードとして最優先に考えているのは『精度の高いパスの配給』だという。「もちろん自分が行けるときは行きますが、うちには得点力がある上級生が揃っているので、まずそこを生かすことを優先しています」。169cmの自分の武器はスピードと積極性、そして、味方を生かすパスだと思う。「そこはあこがれの並里さんや富樫(勇樹・千葉ジェッツふなばし)さんから学ぶところが沢山あります。いつか自分もああいう選手になりたい。それが目標です」

時を同じくして井手口コーチの口から出たのも『並里成』と『富樫勇樹』の名前。
「河村には並里以来のガードの資質を感じます。将来は富樫のような選手になれるよう育てていきたいですね」
ウインターカップの舞台から未来のスピードスターが誕生するのか。1年生ガード河村勇輝の成長に期待が膨らむ。

文・松原貴実 写真・吉田宗彦