楽しみながら戦えた初の東京体育館(宮城MAX #31 萩野 真世選手)

毎年ゴールデンウィークに行われる車椅子バスケの日本一決定戦、「内閣総理大臣杯争奪 第45回記念日本車椅子バスケットボール選手権大会」は今年も宮城MAXが頂点に立った。5月5日、5051人の観客を集めた東京体育館での熱気溢れる決勝戦はとても見応えがあった。初優勝を狙うNO EXCUSEがリードして試合は進んでいったが、宮城MAXが底力を見せて逆転に成功。55-52の接戦を制し、前人未踏の9連覇を成し遂げた。

猛者どもがひしめき合う“コート上の格闘技”に女子選手が初参加

今年から史上初となる女子選手の参加が認められた。各チーム、コート上に2名まで同時に出場することができる。通常のバスケットとほぼ同じルールの車椅子バスケだが、一つ大きく違うのが『持ち点』だ。1〜4.5点まで0.5点刻みで選手はクラス分けされ、この持ち点が低くなるにつれて障害程度が重くなる。コートに出る5人の合計が14点以内で構成されていなければならない。だが今大会は、女子選手を一人出場させるにつき、合計点に1.5点がプラスされる。個人ではなく、チームとして持ち点がプラスされることにより、運動能力が高いハイポインター(障害程度が比較的軽く持ち点が高い選手)を多く出場させることが可能になる。

“コート上の格闘技”とも呼ばれる車椅子バスケ。車椅子同士をぶつけ合う肉弾戦であり、フィジカルな戦いは転倒する場面も多い。さらに車輪が付いている分、スピーディーな展開となり、タイヤが焦げる匂いが立つ。そんな猛者どもがひしめき合う中でも負けずに、得点を決めていったのが宮城MAXの藤井郁美選手だった。決勝戦では宮城MAXのエース・藤本怜央選手が徹底マークに合う苦しい中、藤井選手が5/10と5割の高確率でシュートを決め、13点を挙げる活躍でチームを救った。大会ベスト5にも選ばれ、その活躍はすでに多くのマスメディアを通じて目に触れられたことだろう。

宮城MAXにはもう一人、女子選手がいた。24歳の萩野真世選手である。1回戦と2回戦はプレータイムを与えられ、それぞれ2点を挙げている。

女子選手がいることが、王者・宮城MAXの本来の姿

昨年まではスタンドで応援してきたこの大会だが、今年は初めて東京体育館のコート上にいることができた。「初日はコートがいっぱいありましたし(4面展開)、準決勝や決勝はしっかり設営されていて、男子の大会は女子(毎年11月にグリーンアリーナ神戸で開催される全日本女子車椅子バスケットボール選手権大会)よりも観客が多く、声援も大きいです。観に来ていただいた方も楽しめる環境になっていましたし、その中で楽しみながら戦えたのは良かったです」と、萩野選手は感想を述べた。

1回戦の富山県WBC戦と準々決勝の福岡breez戦に出場し、「いつも一緒に練習しているメンバーですので、合わせるタイミングなどはいつも通りできたかなと思います。ただ、初戦は会場の雰囲気なども違うので、いつもの自分ではなかったかなという場面もあったかと思います。良い緊張の中で戦うことができました」と振り返った。

今大会より初めて女子選手の参加が認められたが、宮城MAXはそもそも男女混成チームであり、「逆に言えば、この大会にだけ女子が出られないという状況です」と萩野選手は言う。
「この大会以外は練習も一緒ですし、試合にも出ています(全日本女子選手権にはSCRATCH所属として出場)。昨年まではこの大会が近くなると、逆に男子メンバーだけの構成で練習することが多くなっていましたが、今回は私たちも出場できるということでいつも通りの練習ができました。また、女子が入ることで持ち点が+1.5点になり、新しいメンバー構成を作ってきました」

つまり、宮城MAXにとって女子選手の参加は、フィジカル面等でのマイナスになることは一切なく、これが本来の姿だった。

門戸が開かれた選手権を通して、女子日本代表を強くする

萩野選手は今年で車椅子バスケ経歴9年目。元々スポーツ観戦が好きだった少女が、「カッコいいな」と憧れたのが宮城MAXだった。萩野選手も藤井選手も女子日本代表として活躍しており、宮城MAXには男子日本代表の主力選手たちが揃っている。
「藤井新悟選手や豊島(英)選手というローポインター(障害程度が高いために持ち点が低い選手)の同じポジションの選手たちのプレーを見て、試合に出たら同じようなプレーをしたいと思っています」と言う萩野選手は、プロレスラーのような体格の猛者たちを動かすポイントガードを担う。

2011年ロンドンパラリンピック出場を懸けたアジア・オセアニア予選から萩野選手は女子日本代表として奮闘してきたが、檜舞台から遠ざかってしまっている。「ロンドン、リオと2大会連続でアジア・オセアニア予選に出場しましたが、自分たちの手でパラリンピックをつかみとることができませんでした。(開催国枠で出場できる)東京パラリンピックでは恥ずかしいプレーはできないという思いもありますので、女子の車椅子バスケを全面に出していき、自分もその中で活躍していきたいです」と先を見据えていた。

今大会より女子選手が参加できるようになったことは、女子日本代表の強化にもつなげていかなければならない。
「男子のスピード感は女子にはない面でもあります。女子も同じようにスピード感溢れるプレーをするためにも、この中で揉まれながら試合ができるというのはすごく必要なことだなと思います」

日本車椅子バスケットボール連盟

文・写真 泉 誠一