辻直人選手に憧れる20歳の新米3Pシューター(パラ神奈川SC/U23日本代表 #7 古澤拓也選手)

弊誌今月号(Vol.08)で特集している3Pシューターを「内閣総理大臣杯争奪 第45回記念日本車椅子バスケットボール選手権大会」でも探してみた。
しかし、足腰をバネとして使えず、背筋や腹筋などにも障害を抱える選手たちにとって、車椅子に座ったままの状態から放つ6.75m離れたリングは途方もなく遠い。スタッツが集計された17試合(5-6位決定戦予選となった2試合は未集計)を見てみると、3Pシュート試投数156本(平均4.6本)のうち成功したのはたったの27本(平均0.8本)。その成功率は17.3%という数字が物語るように非常に難しい。両チームとも1本も入らなかった試合は5回もあった。ディフェンスがいないフリースローであっても成功率は47.9%(138/288本)であり、得点のほとんどがペイントエリア内である。

そんな厳しい状況下において、3Pシュート王となった千葉ホークスの土子大輔選手が4試合で13本を決めたのはものすごい。5-6位決定戦予選となったLAKE SHIGA BBC戦では5本を沈めている。日本代表でも活躍するベテラン土子選手に対し、5-6位決定戦で対戦したパラ神奈川SCの20歳のエース、古澤拓也選手が3Pシュートで対抗する。「代表合宿では一緒に練習させてもらっていて、すごいシューターということは間近で見て分かっています。対戦するのがすごい楽しみで、あのシュートをどうやって止めようかと思っていました」と臨んだ古澤選手だったが、土子選手に3本の3Pシュートを許してしまう。対する古澤選手は積極的に10本の3Pシュートを放ったが、この試合は1本も決めることはできなかった。チームも54-81で完敗し、6位で大会を終えた。

左が千葉ホークスの土子大輔選手であり、フィジカルの差は一目瞭然

左が千葉ホークスの土子大輔選手であり、フィジカルの差は一目瞭然

3Pシュートを打ち始めてからまだ2年

古澤選手“も”小学生の頃は野球少年だった。“も”を強調したのには訳がある。「3ポイントシュート」特集に登場した田口成浩選手(秋田ノーザンハピネッツ)も、アイラ・ブラウン選手(サンロッカーズ渋谷)も同じく野球に打ち込んでいたことは、すでに弊誌で紹介しているとおり。野球と3Pシューターの関係がここでもつながったことに驚かされた。しかし、「中学1年の時に合併症を発症し、背中の空洞症の手術をしたときに下肢麻痺になって車椅子になりました」。すぐに車椅子バスケと出会い、「そこからハマりました」

お気に入りの選手を挙げてもらえば、やはり同じポジションの2人をチョイス。NBAでは「ステフィン・カリー(ゴールデンステートウォリアーズ)」。Bリーグもよく見ており、「辻(直人)選手(川崎ブレイブサンダース)がすごい好きです。会ってみたいですね」と目を輝かせていた。

先に挙げたようになかなか決めるのが難しい3Pシュートであり、それを得意とする日本の車椅子バスケ選手は大概、プロレスラーのような分厚い体をしている。上半身や腕力だけで、3Pシュートが届くのも見ていて納得するが、古澤選手の線はまだ細い。持ち点は3.0であり、下半身の筋力はほぼ使えない状況のため、「メディシンボールやダンベルを使ってフィジカルトレーニングをし、いかに早くシュートフォームを作れるかに重点を置いて練習してきました」という努力の成果が実り、1回戦と2回戦はしっかり2本ずつ3Pシュートを決めた。

中学2年から本格的に競技として始め、現在大学3年生の古澤選手の車椅子バスケ歴は7年目。ポジションはポイントガードであり、今大会中も目の覚めるようなキラーパスを通し、バスケセンスの高さが光る。「自分の持ち点は3.0で高さもそこまでないので、3Pシュートとスピードで戦っていかないと代表入りはない。そう思ってから3Pシュートを練習し始めました」。新たな武器として、3Pシュートを打ち始めたのは2年前の話。つい最近のことだった。

日本代表としてリオパラリンピックにも出場したチームメイトの石川丈則選手に誘われ、昨年よりパラ神奈川SCに移籍。「石川さんは試合中も自分がシュートを打ちやすい形を作ってくれたり、メンタル的な部分では入らなくても励ます言葉をいつもかけてくれています。メンタルが安定して保てているからこそ、シュートも入るようになってきました」と環境を変えたことが成長を促進させている。

男子U23世界選手権大会は6月8日より開幕!トランジションバスケットで目指すは5位以上

男子U23日本代表のキャプテンも務める古澤選手。今年1月に行われたアジア・オセアニア予選ではオーストラリア、イランの強豪国に勝利し、2位となって6月8日からカナダトロントにて、男子U23世界選手権大会への切符を勝ち取った。U23日本代表の京谷和幸ヘッドコーチからは、「3Pシュートにこだわれ」と言われている。「たとえシュートが入らなくても、しっかりと打ち抜くこと、打ち続けることにこだわりを持って戦っています」とその期待に応えている。

車椅子バスケもオリンピックを目指す日本代表も変わることなく、世界を相手に戦うためにはトランジションバスケットが最大の武器となる。京谷ヘッドコーチは、「僕自身が現役だった頃から世界と戦うためにはこれしかないだろうとずっと思っていました。日本の特徴であるスピードとクイックネスは世界に十分通用します」と実体験としてその強みを感じ取っていた。
「小粒なメンバーですが、スピードが絶対的な武器になると考えました。トランジションバスケットを敷き、得点を獲った後はすぐにプレスを仕掛け、相手に大きな選手がいても何もさせないというディフェンスを取り組んだ結果、アジア・オセアニア予選ではリーグ戦で全勝することができたことは自信になりました」

どんな結果になっても最後は勝って終われるよう、目標は5位以上。対戦相手の情報を入手する中、「けっしてメダル獲得も無理な目標ではない」と京谷ヘッドコーチは頼もしいコメントを残している。古澤選手は、「3Pシュートを積極的に打ってチームを勢いづけていきたい」と抱負を語った。

U23日本代表を足がかりとし、もちろん目指すは東京パラリンピック。古澤選手は「1年1年、日本代表に選ばれるようにこれからも努力を続けていきたい」と3年後を見据え、京谷ヘッドコーチも「U23日本代表から一人でも多く、日本代表選手を輩出したい」と話しており、来月開幕するU23世界選手権から日本代表の底上げを図る。

車椅子バスケットボール連盟
2017IWBF男子U23世界車椅子バスケットボール選手権大会
大会サイト(英語)

文・写真 泉 誠一