プレーオフ進出へのカギを握る2年目の”パワフル”ルーキー(日立ハイテククーガーズ #21 ヌンイラ玲美選手)

Wリーグはプレーオフに進出する7チームがすでに決まった。残る1枠にほど近い、現在8位にいるのが日立ハイテククーガーズである。昨シーズンはレギュレーションが異なり、レギュラーシーズンでの上位6チームへ先にプレーオフへの出場権が与えられた。残る2枠は、下位6チームによる2次ラウンドで決着をつける。それまで8位とプレーオフ圏内にいた日立ハイテクだったが、土壇場で東京羽田ヴィッキーズに抜かれ、悔しい思いをした。「今シーズンは失速ではなく、現状維持でもダメ。加速していこう。どこが相手でも挑戦し、まだまだおもしろいバスケットをしていきたい」と、3シーズン目を迎える藪内夏美ヘッドコーチが先頭に立ち、チームを奮い立たせている。

現在7位、すでにプレーオフ進出を決めたトヨタ紡織サンシャインラビッツと対戦した前節。前半は44-36で上回っていたが、第3クォーターに7連続失点で流れを奪われ、そのまま66-79で敗退。トヨタ紡織は日立ハイテクより下の順位にいるチームには全て勝っており、7位と8位には見えない壁がある。それについて藪内ヘッドコーチは、「上位になればなるほど個人技や戦術など、何かしら打開策を持っています。うちはまだそこが弱い。なんとかチーム力で打開しようと思って取り組んでいますが、まだまだ足りない部分がたくさんあります」というのが現状だ。

ケガから復帰した2年目のルーキーはパワーと天性の感覚が持ち味

「ハイ、もうバリバリやっている2年目のルーキーです!」
コートでは物怖じしないパワフルなプレーでチームを勢いづけ、コートを離れれば明るい笑顔で応えくれたのはヌンイラ玲美選手。昨シーズン、期待されたルーキーの一人であったが、入団直前の検査で右足首の舟状骨を疲労骨折が発覚。「痛かったですが気にせずにずっとプレーを続けていたら、骨同士がくっつかなくなってしまった」ことですぐにでも手術をしなければならなかった。早期発見していれば全治3ヶ月ほどだが、いつやったか定かではないほど放置されていたため、昨シーズンは一度もコートに立つことはできなかった。完璧に治して復帰し、”2年目のルーキー”としてWリーグでのスタートを切った。

「思いっきりのびのびプレーさせてもらっています」とヌンイラ選手に笑顔が戻る。「パワーと天性の感覚的なものは本当に素晴らしい」と藪内ヘッドコーチは評価し、その期待に応えるようにシックスマンとして存在感を示している。大黒柱の鈴木知佳選手のバックアップとして、遜色ない働きで平均15分出場、6.4点とチームに貢献。トヨタ紡織戦でも、流れを持って行かれていた第3クォーター途中に投入されると、いきなりインサイドから2連続得点を挙げ、息を吹き返す起点となった。
「自分の体の強さは大学の時から実感していました。今、Wリーグで戦っていても通用すると感じています。トヨタ紡織戦も相手のマークは3枚も寄ってきました。そうなったときにどう対応すれば良いかがこれからの課題です。それをクリアできれば、自分の自信にもなります」

2人、3人と寄ってくるディフェンスにも動じることはないパワーが長所だが、「それだけでは通用しない部分もたくさんある」と藪内ヘッドコーチは技術をプラスし、ようやくフィットし始めてきたばかりである。一方で、180cmを越える選手が多いWリーグにおいて、ヌンイラ選手は176cmしかない。そのビハインドを補うべく、「180cmある2人のチームメイトを相手に、練習中からどう点を獲るかを考えています」と鈴木選手と永澤果歩選手と7cm大きな二人に挑みながらレベルアップに勤しんでいる。

日本代表クラスのビッグマンがいる上位チームとの対戦時は、「トヨタ紡織戦のように2〜3人のディフェンスが寄ってくることなく、1on1になるケースが多いです。相手の手をしっかり見て、自分が行けると思う場所が少しずつつかめてきているかなと思います」と1on1であれば打開できる術が見え始めていた。課題点は、身長差が生じるがゆえのファウルトラブル。「手の使い方や相手のポジションを獲らせなかったり、ボールを持たせる前の動きをもっとうまくできるようにしていきたいです」とまだまだ発展途上である。

『飛躍』するための終わりなき努力の先に待つプレーオフ

ヌンイラ選手を含め、同期入団した選手は5人と多い。「自分が悪いプレーをしてもゴメンのひと言で分かり合える部分があります」とそのメリットを感じている。先輩も同世代ばかり、平均24.5歳の若いチームは、「お互いにガムシャラにぶつかり合いながら成長していこうという雰囲気があります」。チームとしてスローガンに掲げるのは『飛躍』。「プレーが完成することはけっしてなく、日々進化していく過程にいます。常に満足することなく、何か得るものがあったり、成長できる要素を探し続けなければなりません。それがプレーオフへ行けるかどうか、上位と下位の分かれ道であり、これまでの2年間ですごく感じたことです」と藪内ヘッドコーチもこれまでの反省を踏まえながら、飛躍させるためにもチーム全員での努力に終わりはない。

レギュラーシーズンも残すところあと5試合。9位のアイシン・エィ・ダブリュウィングスとはたった1ゲーム差しかない。次節は4位シャンソン化粧品シャンソンVマジック、3位デンソーアイリスと上位チームとの対戦が待っている。
「やっぱり私の持ち味はパワーであり、そこは誰にも負けたくありません。それを生かしながら自分が点を獲るときなのか、パスをさばくときなのか、外に出るときなのか、中に入るときなのかという状況判断をハッキリして、流れを変えられる選手になりたいです」
昨シーズンとは打って変わって全試合出場しているヌンイラ選手は、試合を重ねるごとに理想像に近づけるよう挑戦を続ける。

アイシンAWは全てが上位チームとの対戦を残しているのに対し、日立ハイテクは最後の3試合は下位チームが相手であり、絶対に落とすことはできない。プレーオフの切符を手にするとともに、4度目の上位チームとの対戦するチャンスをつかみたいところだ。若いチームにとっては強いチームに挑むことこそが、次への糧になる。また、今シーズンのプレーオフは全て一発勝負のトーナメントであり、何が起こるかは分からない。このままの順位で行けば、初戦の相手は女王JX-ENEOSサンフラワーズである。これまで3度の対戦を終え、「手応えとしてはすごくあります。ただ、それが40分間続かない。それがJXの強さであり、私たちの弱さでもあります。1分でも2分でも手応えを感じたその隙間を狙って、なんとか勝負したいなというワクワク感があります」と藪内ヘッドコーチも、4度目の対戦を楽しみにしていた。

日立ハイテククーガーズ

文・写真 泉 誠一