ヴィッキーズ愛が強すぎたことで、早すぎる引退を決断(東京羽田ヴィッキーズ #19 瀬崎理奈選手)

プレーオフ進出の望みが消え、ホームでの残り3試合となった2月27日、突然の引退発表した東京羽田ヴィッキーズの瀬崎理奈選手。シーズン途中というタイミングに発表すべきかどうか葛藤がなかったわけではない。ファンのことを第一に考えた末に発表したが、逆に批判を受けるのではないかという不安も大きかった。しかし、それは杞憂に終わる。
「遠方から応援しに来ていただける方や発表してくれて良かったというファンも多くいて、言って良かったなと思いました」
瀬崎選手のラストゲームは追い上げる第1クォーター終盤に決めた2連続3Pシュートの6点、そして仲間たちに未来を託すような気持ちのこもったパスで4アシストを挙げた。勝利で飾ることはできなかったが、温かいファンの声援に包まれコートを後にした。
引退を決めた理由を赤裸々に語ってくれたとともに、”ヴィッキーズ愛”に溢れたラストメッセージをお届けしよう。

『生涯、羽田でプレーする』ルーキー時に掲げた決意を全う

ーーラストゲームはどんな思いで臨んでいましたか?

とにかく1本でも多く3Pシュートを決めたいと思ってました。良いところを出したい気持ちはいつもどおりで、最後だから楽しくやろうという気持ちもありました。それとともに最後くらいは本当に良いところを見せたいなと欲張ってしまった分、少し気負ってました。でも、コートに入れば平常心でプレーでき、だからこそ3Pシュートも決められましたが、あの2本だけで終わってしまったのはちょっと悔しいです。今日はとにかく3Pシュートを決めたいという気持ちで臨みました。

ーーケガから復帰した今シーズンだからこそ、これからだと思っていただけに引退発表は驚かされました。引退を決めた理由は?

今シーズンは本当に順調でした。でも、全然動けるのにプレータイムがもらえない。そこを自分自身が納得できれば良かったのですが、それができなかったです。「なんで?」という思いが強く、途中で心が折れてしまいました。
やっぱりヘッドコーチが求めるバスケットの構想の中に自分がいないこと、それによってプレータイムが全く無かったり、練習中も3チームに分かれたときに試合にほとんど出ないメンバーに組まれていたことがずっと続きました。それでも試合に出たときはとにかく自分のプレーをし、パフォーマンスを上げていこうという思いで最初から戦っていました。しかしシーズン途中で、プレータイムのこともあって、自分の理想しているパフォーマンスができないことが続き、このチームで続けていくことはできないと思いました。そのときに移籍か、引退かを考えはじめました。移籍してまた一からがんばれば、また良いパフォーマンスができるかなという思いもありました。でも、途中で心が折れてしまったところもあって、今までできていたことができない自分がずっといたので引退を決断しました。

ーーWリーグは移籍しやすくなったこともあり、新天地で見返すという手段もあったのでは?

それもあったのでしょうが、もう心が折れました。現状に負けず、自分からパフォーマンスができていれば良かったんですけど、1〜3分程度のプレータイムで結果を出せるかと言えば正直難しかったです。今まではどちらかと言えば長く使われていたことで数字も出ていました。この短い時間でも数字に残らなくても、なにかインパクトを残すことができれば良いと思って今シーズンはプレーしていました。でも、途中からそれまで自分ができていたことができなくなってしまっていました。

ーー今日の試合や3Pシュートを見てもまだまだできるし、やはり引退はもったいないと思ってしまいます。

できると思いますよ、実際は。でも、このチームに入った最初から「生涯、羽田でプレーする」ということを自分の中で決めていました。地域密着型プロチームに憧れを持ち、弱いチームを強くするなど、いろんな思いを持ってここにきました。本当にファンの方たちは素晴らしく、どんなに私がケガをして離脱していても、ずっと背中を押し続けてくれました。移籍が悪いというわけではないですが、いろんなことを含めても「このチームで一生懸命プレーしてファンの方たちに恩返しがしたい」という思いが強かったです。自分のことだけを考えれば移籍という選択肢もありますが、それよりもここに残ることを考えたときに厳しいのかなと思って決断しました。

ーーあらためてこのチームの良さとは?

羽田はホームで力を発揮するチームです。アウェーに行った時は本当に静かだなって思っていました。なので、アウェー感を味わったことが逆にないです。ホームゲームは本当に多くの人が入るので、そんな環境で4年間プレーでき、ファンの皆さんと一緒に戦えて幸せでした。

ーー朝のチラシ配りなど自らファンを確保する活動は、他の企業チームとは違う経験ができたのではないでしょうか?

他のチームはバスケットだけをし、会社がお客さんを集めてくれるというイメージがあります。羽田の場合は、本当に選手自らがお客さんを集めています。お客さんに来てもらうためにチラシを配ったり、SNSの発信を多くしようとチームで話し合ったりしました。そういうのを見て来てくれる方も本当に多くて、「瀬崎さんを見に来ました」とか「瀬崎さんが入団したから羽田を応援します」と言ってくれる方もすごく多かったです。他のチームのことは分かりませんが、羽田は選手一人ひとりがファンを離さずに、どう増やしていける試合ができるかということを真剣に考えながら戦っていました。もちろん勝ちにこだわることは大前提ですが、どれだけおもしろい試合ができるかというのも大事だと思っています。それに関しては「4年間貫き通せたかな」と思います。

ーー最後に残るメンバーへメッセージを!

私が入ってから順調に1つずつ順位を上げて、昨シーズンはプレーオフに行くことができました。でも、今シーズンは結果的にまた順位を下げてしまい、簡単に上がれる世界ではないです。私たちも一歩ずつしか上がれなかったので、いきなりベスト4に入れるようになるわけではないことを選手たちも分かっているとは思います。みんなでそれを理解して勝ちにこだわることもそうですが、ファンや見てくださる方に感動を与えられるような試合を羽田ヴィッキーズとして表現してくれたらうれしいです。

ーー今後の予定は決まっているのでしょうか?

何も決まってないですが、バスケットには関わりたいという思いは本当に強いです。

2014年のルーキーシーズン、瀬崎選手とともに落合 里泉選手(現シャンソン化粧品シャンソンVマジック)や、昨シーズン引退した金本 望さんと安江 舞さん(現3×3 湘南サンズ)が羽田に揃って入団した。彼女たちは常に「このチームを強くするために来たので、1年目だからとか関係なくどんどん底上げして行ってチームを変えていこう」と話し、高みを目指して切磋琢磨してきた。今シーズンは瀬崎選手だけになってしまったが、4年間ずっと変わらず、最後までその意志を全うさせた。ラストゲーム後のサイン会は、2時間近くに及ぶほど長蛇の列ができた。瀬崎選手は最後の一人まで丁寧に感謝の気持ちを伝えていた。

最後に二人のキャプテンから今シーズンの総括とともに、瀬崎選手へのメッセージを紹介したい。

『この15人でプレーするのもこれが最後の試合』森本由樹選手

上位チームはミスも少なく、ここぞというときに一本を獲る力があり、そこが私たちはまだ足りない部分です。練習の中から流れの見極めを全員が意識してできるようにし、しっかりと勝ち切れるようなゲームを増やしていきたいです。
瀬崎に限らずこの15人でプレーするのもこれが最後の試合でした。スタートで出させてもらっている責任もあり、できれば最初から点差を離していって全員出場し、楽しく勝利できれば良かったのですが、追いかける展開になってしまい、こういう結果になってしまったことは悔しいです。コート上では笑顔で送ることはできなかったですが、夜の打ち上げでいっぱいお話をしようと思ってます。

『どんなときでも笑顔で背中を押してくれていたことが私の支え』本橋菜子選手

ヘッドコーチやメンバーが変わって臨んだ今シーズンはいろいろと手探りな部分もあったと思います。シーズンを通してチームとしてやりたいバスケットを少しずつみんなが分かってきた部分もあったかと思います。まだまだ完成形ではないですが、これを糧にして次のステップに進めていきたいです。良い意味で個性がいろいろとあるチームです。一人ひとりの良いところを発揮できるようになっていけば、どんどんチーム力もアップしていくと思います。
プレーオフに行くことは厳しい状況でしたが、最後はファンの皆さんとともに笑って終われたら良いなと思って試合に臨んだのですが、まだまだそんな甘いものではないということを突きつけられた試合になってしまいました。瀬崎さんが試合前も、試合中も、どんなときでも笑顔で背中を押してくれていたことが私の支えになっていました。そのためにも勝ちたかったですが悔しい結果に終わってしまったので、この悔しさを来シーズン以降にもしっかりつなげていきたいです。

キャリアスタッツ/プロフィール

78試合出場(先発37試合)、500点(平均6.41点)、172アシスト(平均2.21本)3Pシュート89/274本(32.48%)
ポジション:G
身長:161cm
出身:福岡県
生年月日:1992/3/6
プレイ歴:津屋崎中 ⇒ 中村学園高 ⇒ 拓殖大 ⇒ 東京羽田
血液型:B型

東京羽田ヴィッキーズ

文・写真 泉 誠一